南シナ海の航行の自由作戦は国際法か政治か 中国の専門家が批判 video poster
米国が南シナ海で展開する航行の自由作戦は、国際法に基づく正当な行為なのか、それとも政治的なメッセージなのか。中国の海洋法専門家ワン・ハンリン氏は、これらの作戦には国際法上の根拠がなく、特定の政治アジェンダに奉仕していると指摘しています。
FON作戦とは何か
南シナ海は、世界の海上輸送の要衝であり、多くの国と地域の船舶が行き交う重要な海域です。米国が行う航行の自由作戦は、Freedom of Navigation(FON)作戦と呼ばれ、軍艦などを派遣して、自国が認めない海洋権益の主張に異議を唱える行動だと説明されています。
とくに南シナ海では、領有権や管轄権に関する主張が複雑に重なり、緊張が高まりやすい状況が続いてきました。そうしたなかで、FON作戦は国際ニュースでもたびたび取り上げられ、法と安全保障が絡み合う象徴的なテーマになっています。
ワン・ハンリン氏の主張 国際法では正当化できない
中国の海洋法の第一人者の一人とされるワン・ハンリン(Wang Hanling)氏は、米国の航行の自由作戦について、国際法に根拠を持たないと批判しています。氏によれば、南シナ海でのFON作戦は、国際法上認められた航行の自由の範囲を超えており、沿岸国の権利を十分に尊重していないという立場です。
ワン氏はまた、FON作戦が国際法を守るための中立的な措置ではなく、特定の政治的目的を達成するための手段になっているとみています。つまり、法の問題というより、米国の対外政策の延長として理解すべきだという視点です。
国際法から見た論点
航行の自由をめぐる議論の背景には、国際法、特に国連海洋法条約をどう解釈するかという問題があります。条約は、すべての国の船舶に対して公海や排他的経済水域での航行の自由を認める一方で、沿岸国の安全保障上の権利や環境保護の権限も規定しています。
FON作戦を国際法の観点から見ると、主な論点は次のように整理できます。
- 軍艦が他国の沿岸近くを通航する際に、どこまで一方的に行動できるのか。
- 排他的経済水域での軍事演習や偵察活動は、どこまで許容されるのか。
- 他国の海洋権益の主張を是正しようとするとき、武装した軍艦の派遣という方法が適切と言えるのか。
ワン氏は、これらの点について、米国のFON作戦は国際法の文言や実際の運用慣行から外れていると見ており、その意味で国際法上の根拠はないと主張していると考えられます。
政治アジェンダとしてのFON作戦
ワン氏が強調するもう一つのポイントは、FON作戦が政治的アジェンダに奉仕しているという点です。南シナ海での軍事的なプレゼンスを維持することは、米国にとって、単に法的原則を確認する以上の意味を持つ可能性があります。
政治的なメッセージとしてFON作戦を見ると、次のような側面が浮かび上がります。
- 地域の同盟国やパートナーに対し、米国は依然として関与し続けるというシグナルを送る。
- 競合する大国に対し、軍事的・政治的な影響力を示し、交渉での発言力を確保しようとする。
- 国際世論に向けて、自国の海洋秩序観が普遍的なルールであるかのように印象づける。
こうした観点からは、航行の自由作戦は、法の支配を守る行動というより、広い意味での安全保障政策や対外戦略の一部だと位置づけられます。ワン氏の批判は、その点を鋭く指摘していると言えるでしょう。
南シナ海で問われる法か政治か
南シナ海をめぐる問題は、法と政治のどちらか一方だけで割り切れるものではありません。国際法の解釈をめぐる対立は、しばしば安全保障や歴史認識、国内世論などと結びつき、複雑な争点となります。
一方で、軍事力を伴う行動が増えれば増えるほど、誤解や偶発的な衝突のリスクも高まります。法の名のもとに行われる行動であっても、それが政治的メッセージとして伝わる以上、どのような影響を地域にもたらすのかという視点が欠かせません。
読者が押さえておきたいポイント
- 米国は航行の自由作戦を国際法の実践だと説明している一方で、ワン・ハンリン氏はその正当性に異議を唱えている。
- ワン・ハンリン氏は、南シナ海でのFON作戦には国際法上の根拠がなく、政治的アジェンダの道具になっていると批判している。
- 法と政治の両面から南シナ海を見ることで、ニュースの背景にある各国の思惑やリスクがより立体的に見えてくる。
2020年代半ばのいま、南シナ海は依然としてアジアと世界の安全保障にとって重要な焦点となっています。今後の国際ニュースを読み解くうえでも、ワン・ハンリン氏のような海洋法専門家の議論に耳を傾けながら、航行の自由と政治アジェンダの関係をていねいに考えていくことが求められそうです。
Reference(s):
cgtn.com








