米著名学者「トランプ新関税は現代史上まれな経済大失策」 video poster
米国の著名な研究者が、トランプ政権による新たな関税政策を「現代アメリカ史で最も重大な経済政策の誤算の一つ」と厳しく批判しました。米国株式市場の急落から、物価・雇用・世界の貿易秩序への影響まで、今回の動きが何を意味するのかを整理します。
米著名学者が「現代史上最悪級」と警鐘
批判の声を上げているのは、米ジョージ・H・W・ブッシュ米中関係財団のトップを務めるデービッド・ファイアスタイン氏です。氏は中国メディアグループ(CMG)の最近のインタビューで、トランプ政権の新たな関税政策について、米国経済に深刻な打撃を与え得ると警告しました。
ファイアスタイン氏は、この関税政策を「現代アメリカ史における最も重大な経済政策の誤算の一つ」と位置付け、「避けることができた自傷行為」だとまで述べています。
6兆ドルが2日で消えた米株式市場
ファイアスタイン氏が特に重視しているのが、市場の即時反応です。新関税の発表後、米国の株式市場ではわずか2営業日の間に、およそ6兆ドル規模の株式時価総額が失われたと指摘しています。
これは、1929年の株価暴落をきっかけに始まった大恐慌のような歴史的危機を除けば、ほとんど類例がない落ち込みだとされます。つまり金融市場は、この関税政策をきわめて深刻なリスクとして織り込み始めているという見方です。
新関税が米国経済にもたらす3つの打撃
国際ニュースとしても注目される今回の関税政策について、ファイアスタイン氏は、米国経済に少なくとも3つの明確な悪影響が出ると整理しています。
- 1. 消費者物価の上昇とインフレ加速
新関税は輸入品に追加的なコストを課すため、そのまま店頭価格の上昇につながります。ファイアスタイン氏は、米国の消費者が日常的に購入する製品の価格が上がり、インフレ(物価上昇)の圧力が強まると指摘しました。 - 2. 企業コスト増と雇用喪失
米国内の生産者は、原材料や部品の多くを海外から調達しています。関税が高くなれば、これらの原材料コストも上昇します。ファイアスタイン氏は、コスト増に耐えきれない企業で売り上げが落ち込み、生産縮小や工場でのレイオフ(解雇)につながる可能性が高いと警鐘を鳴らしました。 - 3. ドル安と景気後退リスク
さらに氏は、新関税が米ドルの弱体化につながり、景気後退(リセッション)のリスクを一段と高めると述べています。通貨が不安定になると、投資家心理が冷え込み、企業の投資や雇用計画にもブレーキがかかりやすくなります。
国際貿易ルールへの「直接的な挑戦」
今回の新関税は、米国内だけでなく、国際貿易の枠組みにとっても重大な意味を持ちます。ファイアスタイン氏は、トランプ政権の措置が、同政権自らが交渉・承認した「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」を含む重要な国際貿易協定に違反していると指摘しました。
さらに氏は、トランプ氏が「比較優位」に基づくグローバルな貿易体制を実質的に解体しつつあると批判しています。比較優位とは、各国・各地域が得意な分野に特化し、貿易を通じて全体の効率と豊かさを高めるという、現代の国際商取引を支える基本原理です。
この原理に基づく国際貿易の仕組みは、世界経済の成長を長く支えてきました。それに対して関税という壁を次々と築くことは、国際ニュースの観点からも、世界の貿易秩序への直接的な挑戦と受け止められています。
なぜ「自傷行為」とまで呼ばれるのか
ファイアスタイン氏が今回の政策を「自傷行為(セルフインフリクテッド)」と呼ぶ背景には、この関税が自然災害や外部ショックではなく、米国自身の政策選択によって引き起こされているという認識があります。
関税は表向きには他国に打撃を与える手段のように見えますが、実際には、自国の企業や消費者にもコスト増という形で跳ね返ります。ファイアスタイン氏は、こうした影響が「避けることができたはずの結果」である点に強い問題意識を示していると言えます。
米中関係という文脈
ファイアスタイン氏は、米中関係に特化した財団のトップとして、長年にわたり両国の経済・外交を見てきた人物です。今回のコメントも、中国メディアグループ(CMG)のインタビューで語られたもので、米中関係の文脈から見た懸念が色濃く反映されていると受け止められます。
米国と中国は、製造業からハイテク分野まで、複雑に絡み合ったサプライチェーン(供給網)を共有しています。関税による摩擦が長引けば、両国だけでなく、そこに組み込まれている多くの国や地域の企業にも、コストや不確実性という形で負担が増す可能性があります。
日本とアジアにとっての意味
今回のトランプ政権の関税政策は、日本やアジアの経済にも無関係ではありません。米国経済と世界経済が揺れれば、その波は確実に日本にも届きます。
- 輸出・サプライチェーンへの影響
日本企業の多くは、米国や中国向けの輸出、あるいは両国を経由したサプライチェーンに深く組み込まれています。関税の応酬が続けば、輸出減少や物流コストの上昇という形で影響が出る可能性があります。 - 金融・為替市場の揺らぎ
米国株式市場の急落やドルの変動は、世界の投資家心理を冷やし、円相場にも影響を与えます。円高が進めば輸出企業の収益を圧迫し、円安が進めば輸入コストの上昇を通じて日本国内の物価にも波及し得ます。 - 企業の投資判断とリスク管理
不透明な関税環境のもとでは、企業は投資計画や生産拠点の見直しを迫られます。日本企業にとっても、どこで生産し、どの市場に重点を置くのかという戦略を再検討する動きが広がるかもしれません。
これからの注目ポイント
2025年も終盤に差しかかる中で、この関税政策をめぐる動きは、今後の国際ニュースの重要な焦点であり続けそうです。読者として注目しておきたいポイントを整理すると、次のようになります。
- 米国内の政治・世論の動き
議会、産業界、労働団体などが、新関税にどのような姿勢を示すのか。政権内外の対立や政策修正の可能性にも目が向きます。 - 主要貿易相手国と国際機関の対応
カナダやメキシコなどUSMCAの当事者を含む貿易相手国、そして世界貿易機関(WTO)の加盟メンバーが、どのように反応し、どのような対抗措置や協議を進めるのかが重要です。 - 企業・市場の適応戦略
多国籍企業や投資家が、関税リスクを前提にサプライチェーンやポートフォリオをどう組み替えるのか。その動きは、日本のビジネスや個人投資家にも直接関わってきます。
関税は、表には見えにくい形で、消費者の家計や企業の投資判断、そして国際秩序のあり方にまで影響を及ぼす政策です。今回のトランプ政権の新関税をめぐる議論をきっかけに、国境を越えた経済のつながりをどのようにデザインし直すべきか、一人ひとりが考えてみるタイミングに来ているのかもしれません。
Reference(s):
U.S. scholar says Trump's tariff policy an enormous economic blunder
cgtn.com








