中国・菏沢の牡丹産業と2025牡丹フェス
中国・山東省菏沢(Heze)市で、伝統の花である牡丹が、地域経済と国際的な文化交流を支える産業へと育ちつつあります。農家の暮らしを支えながら街のブランドを高めるこの動きの背景には、一人の若い技術者の挑戦と、市全体で進む産業づくりがあります。
家族の小さな畑から始まった牡丹産業の挑戦
2000年、中国農業大学を卒業した李暁奇(Li Xiaoqi)さんは、東部の山東省菏沢市の故郷に戻り、家族の牡丹畑を引き継ぎました。当時、その畑は10ムー(約0.67ヘクタール)にも満たない規模でした。
李さんは長年にわたる試行錯誤と投資を経て、牡丹畑を2200ムーへと拡大しました。それと同時に、苗木や切り花の輸出加工工場、冷蔵施設、研究用の実験室や事務施設を備えた現代的な牡丹産業パークを整備し、栽培から出荷までを一体的に行える体制を築きました。
農家とともに広がる産業、貧困脱却にも一役
自らの事業を発展させる一方で、李さんは地元の数百人に及ぶ農家に牡丹産業への参入を呼びかけました。栽培や生産技術を丁寧に教え、牡丹を安定した収入源に変えていくことで、地域の貧困対策にも大きく貢献してきました。
個々の農家が単独で市場に向き合うのではなく、産業パークを中心としたネットワークの一員として参加することで、技術や販路を共有しながらリスクを分散できる点も、菏沢の牡丹産業の特徴といえます。
「牡丹の都」菏沢が育てる4つの成長分野
こうした取り組みを背景に、「中国の牡丹の都」とも呼ばれる菏沢では、牡丹を軸にした産業が大きく成長し、次の4つの分野を中心とする発展モデルが形になりつつあります。
- 苗木育種:より質の高い牡丹の品種を育てる取り組み
- 花の栽培:観賞用や切り花向けの大規模な栽培
- 深加工:牡丹を原料としたさまざまな製品づくりなどの付加価値化
- 文化観光:牡丹をテーマにした観光やイベント、体験プログラム
観賞用の花としての魅力にとどまらず、加工や観光と結びつけて産業の裾野を広げることで、季節や価格の変動に左右されにくい地域経済の土台をつくろうとしている点が特徴です。
2025菏沢牡丹フェス開幕 1カ月続く国際イベント
こうした産業の集大成ともいえるのが、2025年に開幕した「世界牡丹会議」と「第34回菏沢国際牡丹文化観光祭」です。両イベントは総称して「2025菏沢牡丹フェス」と呼ばれ、火曜日に正式に開幕しました。
フェスでは、4つのサブフォーラムと29の関連イベントが用意され、会期は約1カ月にわたる予定です。産業関係者や研究者、観光関係者などが一堂に会し、牡丹を通じた文化交流やビジネスの可能性を探る場となります。
国際的な会議と観光イベントを組み合わせることで、菏沢は「牡丹の産地」というイメージに加え、「牡丹をテーマに世界とつながる都市」というブランドを打ち出そうとしています。
地方から世界へ——日本が学べる視点
菏沢の事例は、一つの花を軸にしても、産業全体の構造を設計することで、地域経済や文化交流の新しい可能性を開けることを示しています。農業、加工、観光をつなぎ、そこに人材育成と国際イベントを組み合わせるという発想は、日本の地方都市にとっても示唆に富むものです。
今回のニュースから、次のような問いを考えてみることができます。
- 一つの強み(特産品や文化資源)を、どのように産業全体の強みに変えていくか
- 農家や中小事業者が、どのようにネットワークとして連携すれば、より大きな市場にアクセスできるか
- 国際的なイベントや文化交流を、地域の長期的なブランド戦略にどう結びつけるか
菏沢の牡丹産業は、華やかな花のイメージの裏側で、長年の地道な努力と、地域全体での試行錯誤が積み重なってできたものです。2025年の「菏沢牡丹フェス」は、その歩みを世界に示す舞台となりつつあります。
Reference(s):
Heze's peony industry boosts development, cultural exchanges
cgtn.com








