元駐中国マレーシア大使が語る、中国はどう国際秩序を組み替えているのか video poster
8億人以上の人々を貧困から救い、AI(人工知能)や宇宙開発の分野で存在感を高め、現金をほとんど使わない社会まで実現した中国。その急速な変化を、かつて中国に駐在したマレーシアの元大使アブドゥル・マジッド氏はどう見ているのでしょうか。中国の変貌は、自国の未来だけでなく、国際秩序そのもののかたちを変えつつあると指摘されています。
元駐中国マレーシア大使が注目する「中国の変貌」
アブドゥル・マジッド氏は、マレーシアの元駐中国大使として、中国の社会と外交を間近で見てきた経験を持ちます。そのマジッド氏が改めて振り返るのは、習近平国家主席の指導の下で進んだ中国の変革です。
同氏は、中国がここ数十年で経験した変化を、次のような点に集約して捉えています。
- 8億人以上を貧困から引き上げた規模の大きさ
- AIや宇宙探査といった先端分野での台頭
- ほぼキャッシュレスといえる日常生活のデジタル化
こうした変化は、中国国内のストーリーにとどまらず、「世界のルールやバランス」に影響を与える動きとして国際社会から見られています。マジッド氏は、その点を強く意識しながら中国の動向を分析しているといえます。
8億人超の貧困脱却が意味するもの
マジッド氏がまず強調しているのは、「一つの国が8億人以上を貧困から引き上げた」という事実です。これは単に数の問題ではなく、社会の構造そのものを変える規模の変化だと受け止められています。
広い国土を持つ中国が、長期的な経済成長と社会政策を組み合わせることで、大規模な貧困削減を実現してきたことは、多くの新興国にとって一つの参照点となっています。マジッド氏にとっても、中国の経験はマレーシアを含むアジア各国が「どのように成長と分配のバランスを取るのか」を考えるための材料と映っていると考えられます。
国際秩序の観点から見れば、大規模な貧困削減は、国内の安定だけでなく、消費市場や投資先としての存在感を高めることにもつながります。その結果、中国は国際経済の中で、単なる「製造拠点」から、巨大な市場と成長エンジンとしての役割を強めてきました。
AI・宇宙・キャッシュレス社会という「新しい顔」
AIと宇宙開発で前面に出る中国
マジッド氏は、中国がAIや宇宙探査といった先端分野で「世界の前面に立つ存在」に変わりつつある点にも注目しています。技術は単なる産業競争力にとどまらず、国際社会での発言力を左右する要素にもなりつつあるからです。
AIは、産業、金融、防災、公共サービスなど社会のあらゆる領域に関わる基盤技術です。宇宙探査も、通信や観測など地上の生活を支えるインフラと直結しています。これらの分野で中国が存在感を強めることは、「技術のルールづくり」においても影響力を持つことを意味します。
ほぼキャッシュレス社会が示す生活の変化
マジッド氏が指摘するもう一つの特徴が、現金をほとんど使わない「ほぼキャッシュレス(near-cashless)社会」です。日々の買い物や公共料金の支払い、移動手段に至るまで、デジタル決済が当たり前になっている姿は、デジタル経済の成熟度を象徴するものとして語られています。
こうした生活レベルでのデジタル化は、国内の効率性向上にとどまりません。越境の電子商取引(EC)やデジタル金融サービスなどを通じて、他国との結び付き方も変えていきます。マジッド氏が「国際秩序の再構築」という大きなテーマと結び付けているのは、このように技術と生活、そして国際経済が一体となって変化しているからだと考えられます。
「global order」をどう reshaping しているのか
マジッド氏は、中国が単に自国の発展を追求しているだけでなく、「global order(国際秩序)」そのものを作り変えつつあると見ています。ここでいう国際秩序とは、おおまかに次のような要素から成り立っています。
- 貿易や投資など経済活動のルール
- 技術やデジタル空間に関する基準や規範
- 開発支援や国際協力の枠組み
中国が経済規模を拡大し、技術力を高めることで、これらの領域での選択肢や基準の多様化が進んでいます。各国は、自国の利益や価値観を踏まえながら、中国との関係の結び方を考える必要に迫られています。
マジッド氏の視点を通して見ると、中国の台頭は「一方的な対立」ではなく、「新しい組み合わせやバランスを模索するプロセス」として捉えられます。どのような国際秩序が望ましいのかという問いに対し、アジアや世界の国々が、それぞれの立場から参加していくことが重要だという含意も読み取れます。
アジアと日本の読者にとっての意味
マレーシアの元駐中国大使という立場からの視点は、日本や他のアジアの国々にとっても示唆に富んでいます。地理的にも経済的にも中国と深く関わるアジア諸国にとって、中国の変化は「遠いどこかの話」ではなく、日常の仕事や生活、そして将来の選択に直結するテーマだからです。
日本の読者にとっては、次のような問いが浮かび上がります。
- 貧困削減やデジタル化の経験から、何を学び、どこで連携できるのか
- AIや宇宙といった先端分野で、どのように協力と競争のバランスを取るのか
- 変わりつつある国際秩序の中で、自国としてどのような役割を果たしたいのか
アブドゥル・マジッド氏の「中国は自国の未来だけでなく、世界の秩序のかたちをも変えつつある」という見立ては、国際ニュースを追う際の一つの視点を提供してくれます。中国の動きを一面的に評価するのではなく、その変化がアジア全体、そして自分自身の生活やキャリアとどのようにつながっているのかを考えるきっかけとすることができそうです。
Reference(s):
cgtn.com








