リウ・ツーシンが語るヒューマノイドロボットの未来 北京で世界初のハーフマラソン
2025年4月、北京で世界初のヒューマノイドロボットによるハーフマラソンが開催されました。そのレースを前に、SF作家のリウ・ツーシン(Liu Cixin)は、この国際ニュースの中心にあるロボット技術の可能性とリスクについて静かに語りました。
リウ・ツーシンは、ヒューゴー賞を受賞したSF小説『The Three-Body Problem』で知られる作家です。中国メディアのインタビューに応じた彼は、ヒューマノイドロボットがもたらす実利と、社会に与えうる深い変化の両面を指摘しました。本記事では、その発言を手がかりに、ヒューマノイドロボットと私たちの社会の未来を読み解きます。
北京で世界初のヒューマノイドロボット・ハーフマラソン
北京で行われたこのレースは、21キロメートルを超えるコースを二足歩行ロボットが走る、世界初のヒューマノイドロボットによるハーフマラソンとされています。
参加するロボットは、およそ25万回に及ぶ関節の動きを正確に制御しながら完走を目指します。この試みは、物理的な身体を持つ人工知能「エンボディードAI(身体を伴うAI)」とヒューマノイドロボットの開発における重要なマイルストーンだと位置づけられています。
リウ・ツーシンは、このレースを「ロボットの能力を示すショーケース」だと捉えています。ロボットが安定してバランスを取りながら走る様子は、2025年の春節聯歓晩会(Spring Festival Gala)で披露された、ヤンコ踊りをするロボットたちを思い起こさせると語りました。観客にとって、ロボットが今どこまで来ているのかを直感的に理解できる舞台だからです。
介護と家事で活躍? ヒューマノイドロボットの実用性
インタビューの中でリウ・ツーシンは、ヒューマノイドロボットの「実用的な役割」に強い期待を示しました。特に、高齢者や患者のケア、家事のサポートといった分野での活用です。
彼は、次のような用途を挙げています。
- 高齢者の見守りや歩行の補助など、介護現場での支援
- 入院患者の世話や簡単な作業の代行
- 掃除、洗濯、片付けといった日常的な家事の担当
こうしたロボットが実用レベルに達したとき、市場は「非常に大きなものになる」とリウ・ツーシンは見ています。ただし現時点では、そこまでの性能にはまだ達していないとも冷静に指摘しました。それでも、実現したときに私たちの日常生活が大きく変わることは間違いないという見方です。
人間と見分けがつかないロボットがもたらす「想像しがたい」変化
一方で、リウ・ツーシンはヒューマノイドロボットの「究極の姿」について、強い警戒感も示しています。開発の最終的な目標は、人間と外見も知能も区別できないロボットをつくることかもしれないとしたうえで、その技術が実現したときの社会的影響は「破壊的」であり、SF小説でさえ描ききれないほどだと語ったのです。
もし、人間とロボットを見分けられなくなったら、私たちは誰を信頼し、どのように働き、どんな関係性を築くのでしょうか。職場、家庭、法制度、あらゆる領域で前提が揺らぎかねません。リウ・ツーシンは、その「想像しがたい」変化をあえて提示することで、今のうちから議論を始める必要性を示唆しているように見えます。
ロボットと共生する未来をどう設計するか
北京でのヒューマノイドロボット・ハーフマラソンは、技術の進歩を祝うイベントであると同時に、私たちに大きな問いを投げかけています。便利さと効率を追い求めるだけでよいのか、それとも社会のルールや価値観を含めて、ロボットとの共生のあり方を設計していくべきなのかという問いです。
リウ・ツーシンの言葉から浮かび上がるのは、次のような論点です。
- 実用ロボットが普及したとき、人間の仕事や暮らしはどう変わるのか
- 人間とよく似たロボットに対して、どこまで権利や責任を認めるのか
- 技術が「人間と同等」に近づく前に、どのようなルールや倫理を整えるのか
ヒューマノイドロボットは、国や地域を問わず今後の社会を左右するテーマです。国際ニュースとしての動きを追いながら、日本に住む私たち自身の選択の問題としても考えていくことが求められているのではないでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








