中国観光を変えるロボット体験 古い梨園から始まるスマートツーリズム
中国の観光地で、ロボットが案内役を務める光景が広がっています。今年5月のメーデー連休には、観光ロボットやAIを活用したハイテク体験が各地の景勝地で導入され、旅行のスタイルが静かに変わりつつあります。
メーデー連休で存在感を増した「観光ロボット」
中国の観光産業は2025年、テクノロジーとの連携を一段と深めています。メーデー連休の期間中、各地の観光地では、ロボットがハイキングに同行したり、AIが観光ルートをガイドしたりするサービスが登場し、多くの旅行者が新しい体験を楽しみました。
こうしたスマートツーリズムの取り組みは、次のような形で広がっています。
- VR(仮想現実)機器を使った「デジタル観光ツアー」
- ドローンによる夜空のライトショーや、景勝地の混雑状況のモニタリング
- ロボットやAIによる音声案内付きの観光ツアー
これらは、観光客にとっての「見やすさ・回りやすさ」を高めるだけでなく、運営側にとっても安全管理や人手不足への対応という面で、新しい選択肢になりつつあります。
古い梨園を歩くとロボットが道案内
北西部の甘粛省・皋蘭県にある観光地「什川古梨園」では、古い梨の木々が並ぶ風景の中を、四足歩行ロボットなどが観光客とともに歩き、園内の見どころを案内しています。内陸部に位置するこの梨園は、春の梨の花で知られる観光スポットです。
案内役を務めるのは、東部の杭州に本拠を置くテック企業・ユニトリー・ロボティクス(Unitree Robotics)が開発したロボットです。ロボットは周囲の状況を読み取りながら障害物を避け、でこぼこした地形でもバランスを保って進むことができるよう設計されています。
実際に体験した観光客の一人である張さんは、「古い梨園で最先端技術と出会えるとは思わなかった」と驚きを語ります。張さんはロボットと握手を交わし、「動きがとても滑らかで、こちらの話をじっと聞いているように感じた。まるで本物の人と会話しているみたいだった」と話しています。
農業博物館で見る「古代農耕×現代ロボット」
同じ皋蘭県内の農業博物館では、ロボットが伝統的な農具とともに展示され、来館者の注目を集めています。ロボットが犂(すき)や脱穀機といった昔ながらの農具に近づいたり、動きを真似たりする演出を通じて、来館者は古代の農耕と現代のテクノロジーの対比を楽しむことができます。
博物館の展示は、中国の古い農耕文明がどのように時代とともに変化し、いまのロボット技術やスマート農業へとつながっているのかを直感的に伝える試みでもあります。観光地としてのエンターテインメント性と、学びの要素が両立している点が特徴です。
春節のロボット公演から広がる注目
ユニトリー・ロボティクスは、2025年の春節(旧正月)に放送された国民的テレビ番組「春節聯歓晩会」で、ヒト型ロボットによるパフォーマンスを披露し、一躍注目を集めました。そのインパクトの大きさもあり、今年は観光分野でのロボット活用にも関心が高まっています。
エンターテインメントの舞台で話題になったロボットが、今度は観光地で「案内役」として活躍することで、テクノロジーが日常の風景の一部になりつつあることを象徴していると言えます。
中国観光はロボットでどう変わるのか
2025年の中国観光では、ロボットやAIの導入が、次のような変化をもたらしていると考えられます。
- 安全性と運営効率の向上
ドローンによる人の流れの把握や、ロボットによるルート案内は、混雑を避けたり、危険な場所を事前に察知したりする助けになります。大規模な連休時の人出が多い観光地ほど、その効果は大きくなります。 - より「没入型」の観光体験
VRツアーやインタラクティブなロボットとの交流は、単に景色を見るだけでなく、物語の中に入り込むような体験を生み出します。とくにデジタルネイティブ世代の旅行者にとっては、写真撮影やSNS投稿と相性の良いコンテンツになりやすいでしょう。 - 地方観光地の新たな発信力
内陸部の梨園や農業博物館のようなスポットが、最先端のロボット技術と組み合わさることで、これまで知られてこなかった地域の魅力が可視化されます。将来的には、海外からの旅行者にとっても「ローカル文化とハイテクを同時に体験できる場所」としての価値が高まりそうです。
人とテクノロジーが共存する観光へ
ロボットが観光地で活躍する光景は、まだ新鮮に見えますが、技術の進展とともに、こうした風景は今後さらに身近になっていくと考えられます。そのときに問われるのは、「便利さ」だけでなく、人とのふれあいや地域ならではの物語をどう伝えていくかという視点です。
梨園でロボットと握手を交わした張さんの体験は、単なるテクノロジーのデモンストレーションを超え、人と機械の関係性について考えさせるきっかけにもなります。ロボットが自然や文化を紹介し、人はそこから新しい驚きや学びを得る――そうした相互作用が、これからの中国観光の一つの姿になっていくのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








