中国の社会科学データベースNCPSSD、海外利用が34%増 AI活用も議論
中国の哲学・社会科学分野のオープンアクセスプラットフォーム「国立哲学社会科学文献センター(NCPSSD)」の海外利用が、2024年に前年比34.2%増えたことが分かりました。国際ニュースとしても、研究環境の変化としても、日本の研究者や学生にとって見逃せない動きです。
2024年の海外利用が34.2%増 北京シンポジウムで報告
北京で開かれた「学術ジャーナルの質の高い発展」をテーマとするシンポジウムで、NCPSSDの2024年の利用状況が報告されました。海外からのアクセスは前年より34.2%増加し、中国語の人文・社会科学研究への国際的な関心の高まりが数字に表れた形です。
シンポジウムは、中国社会科学院図書館とNCPSSDが主催し、次の2つの報告書が公開されました。
- 「2024年・最も利用された学術誌レポート」
- 「ユーザー利用状況分析レポート」
この2本のレポートは、プラットフォームの国際的な影響力の拡大と、中国の学術誌を海外に広げていくうえでの役割を示しています。
NCPSSDとは? 世界最大級の中国語人文・社会科学プラットフォーム
NCPSSDは、中国社会科学院が主導する哲学・社会科学分野のオープンアクセスプラットフォームです。中国語で書かれた人文・社会科学の研究成果を集中的に提供しており、現在、世界最大規模の中国語データベースの一つとなっています。
公開された数字によると、NCPSSDは現在次のような規模に達しています。
- データ件数:2,700万件超
- サービス対象:国内9万以上の機関、海外1,300の機関
- 登録ユーザー:800万人超
- 利用が広がる国・地域:197
- 累計アクセス数:16億回超
人文・社会科学の文献に特化しつつ、ここまでの規模に成長している点は、世界の学術情報インフラの中でも注目すべき動きといえます。中国研究だけでなく、国際関係、宗教、教育、考古学などを扱う研究者にとっても、一次資料に近い情報源となり得ます。
海外ユーザーに人気の学術誌は?
「最も利用された学術誌レポート」は、NCPSSDを通じて国際的にどの雑誌が読まれているのかを示しています。今回、特に海外ユーザーの間で人気が高かった雑誌として次のタイトルが挙げられました。
- 『求是(Qiushi)』:中国共産党中央委員会の機関誌
- 『宗教学研究(Religious Studies)』
- 『教育発展研究(Research in Education Development)』
- 『考古学(Archaeology)』
- 『江蘇高等教育(Jiangsu Higher Education)』
政治思想から宗教、教育、考古学、高等教育政策まで、関心分野が幅広いことがうかがえます。日本から中国の社会や思想、教育制度を研究する際にも、これらの雑誌は主要な参照先になりそうです。
2018年から続く「人気ジャーナル」レポートの狙い
NCPSSDによる学術誌の人気ランキングは、2018年に初めて公表されて以来、毎年まとめられています。このレポートには、次のような狙いがあります。
- 中国の学術誌の影響力と可視性を高める
- 人文・社会科学分野で、中国発の独自の知識体系を構築する
- 編集部や研究機関が、自誌の読者層や位置づけを把握する材料とする
ランキングという分かりやすい形をとることで、どの分野のどのジャーナルが国内外で存在感を増しているかが一目で分かるようになっています。日本の研究者にとっても、「どこから読み始めればよいか」を判断するための手がかりになりそうです。
初の「利用状況分析レポート」が示したユーザー像
今回初めて発表された「ユーザー利用状況分析レポート」は、アクセスデータを細かく分解し、プラットフォームを誰がどのように使っているのかを明らかにしています。対象となった主なセグメントは次の通りです。
- 国内の大学・研究機関などの組織ユーザー
- 個人アカウントのユーザー
- 海外の大学・研究機関
- SNSや新メディアなどのプラットフォーム経由の利用
レポートでは、ユーザー行動の変化や、よく閲覧されるコンテンツページも分析されています。こうしたデータは、今後どの分野のデジタル化や翻訳を優先すべきか、どの言語で概要情報を提供するか、といった戦略を検討する材料になります。
日本の利用者にとっても、どの分野に海外の関心が集まっているかを知ることで、自身の研究テーマの位置づけや、共同研究の可能性を考えるヒントになるかもしれません。
AIでどう変わる? 学術ジャーナルの「質の高い発展」
今回の2日間の会議では、人工知能(AI)が学術ジャーナルの質の高い発展をどう後押しできるかも大きなテーマとなっています。プログラムでは、80人以上の中国の学術誌編集関係者が参加し、次のような論点を議論することが予定されています。
- 査読や編集プロセスにおけるAI活用の可能性
- 論文の検索性・可読性を高めるためのツールとしてのAI
- 研究の透明性や倫理をどう守るかという課題
会議では、学術ジャーナルにおけるAIの「責任ある活用」に関する提案も出される見通しです。これは、世界各地で進むAIガイドラインの議論とも通じるテーマであり、日本の学術出版や大学図書館にとっても参考になる部分がありそうです。
日本の読者・研究者にとっての意味
NCPSSDの海外利用が34.2%増加したというニュースは、単にアクセス数が伸びたという話にとどまりません。日本の読者や研究者にとって、少なくとも次の3つの意味を持ちます。
- 中国語情報へのアクセス経路の拡大:政治、経済、教育、歴史、宗教など、一次資料に近い文献にオンラインでアクセスしやすくなる。
- 国際的な議論への接続:海外の研究者がどのジャーナルを読み、どのテーマに関心を持っているのかを知ることで、自分の研究を国際的な文脈に位置づけやすくなる。
- AI×学術の実験場としての意味:AIの活用やガイドラインづくりの動きは、日本の学術出版・大学にも影響を与えうるケーススタディとなる。
中国語の壁は依然として高いものの、プラットフォームの整備や国際利用の拡大により、「どこに何があるのか」は以前より見えやすくなっています。翻訳ツールやAIを組み合わせながら、必要な情報をどう選び取っていくかが、これからの日本の研究者・学生に求められるスキルになっていきそうです。
国際ニュースとしての動向を追いつつ、自分の関心分野で一度NCPSSDのようなプラットフォームの存在を確認してみると、新しい情報源が見つかるかもしれません。
Reference(s):
International use of Chinese social sciences platform rises by 34%
cgtn.com








