ICOM会長が語る国際博物館の日2025:変化する社会とミュージアムの未来 video poster
任期満了を控えた国際博物館会議(ICOM)会長のエマ・ナルディ氏が、ローマ中心部のブラシ宮殿で、中国の国際メディアCGTNのハーマイオニー・キットソン氏と対談しました。今年5月18日の「国際博物館の日」を前に行われたこのインタビューで、ナルディ氏は「世界のコミュニティをできるかぎり一つにまとめてきた」と語り、急速に変化する社会のなかで博物館がどう進化すべきかを見つめ直しました。
世界の博物館をつなぐ「国際博物館会議」とは
国際博物館会議(International Council of Museums/ICOM)は、世界各地の博物館や美術館、そこで働く専門家をネットワークする国際的な団体です。展示や保存だけでなく、教育や地域との連携など、博物館が社会の中で果たす役割について共通の基準やビジョンをつくる場になっています。
「コミュニティを結ぶ」会長としての4年間
ナルディ氏は、会長としての任期を振り返り、「世界中のコミュニティを結びつけること」に力を注いできたと強調しました。ここでいうコミュニティには、博物館の専門家だけでなく、地域の住民、学生、オンラインでつながる人たちなど、さまざまな層が含まれます。
分断や格差が語られることの多い今の世界で、博物館は「違い」を対立ではなく対話のきっかけに変える場にもなり得ます。ナルディ氏は、そのためには国や地域をこえた知識の共有と、現場で活動する人どうしの信頼関係が欠かせないと考えてきました。
2025年「国際博物館の日」のテーマ:変化する社会への適応
インタビューが行われたのは、2025年5月18日の「国際博物館の日」を前にしたタイミングでした。今年のテーマは、急速に変化する社会のなかで、博物館はどう適応し、進化していけるのかという問いを正面から扱うものです。
このテーマの背景には、デジタル技術の発展や、社会の分断、気候変動といった、世界共通の課題があります。多くの博物館は、次のような変化への対応を迫られています。
- 来館者との新しいつながり方:オンライン展示やバーチャルツアーなど、物理的な距離をこえる取り組み。
- 地域社会との共創:展示を一方的に「見せる」だけでなく、地域の人々とともに企画をつくる姿勢。
- 多様性と包摂:さまざまなバックグラウンドを持つ人が、自分の物語を見出せる展示やプログラム。
舞台はローマのブラシ宮殿:都市と歴史と人をつなぐ場所
対談の舞台となったローマのブラシ宮殿は、歴史的な建物そのものが「街の記憶」を映し出す空間です。観光客だけでなく、地元の人にとっても身近な文化拠点であり、「開かれた博物館」のあり方を象徴する場所だといえます。
歴史的建造物を活用した博物館は、過去の遺産を守るだけでなく、現在の都市生活と結びついた新しい使い方を提示できます。ナルディ氏のメッセージは、そのような場が世界各地で増えつつある流れとも響き合っています。
日本やアジアの博物館へのヒント
今回のインタビューは、国際ニュースでありながら、日本やアジアの博物館が今後の戦略を考えるうえでも示唆に富んでいます。たとえば次のような視点は、多くの施設に共通する課題ではないでしょうか。
- 来館者数だけでなく、「どんな対話が生まれたか」を成果として捉え直す。
- 展示解説やイベントで、複数の言語や視点を取り入れ、より多くの人を巻き込む。
- 学校教育や地域の活動と連携し、「学びのハブ」としての機能を強める。
私たち一人ひとりにできること
博物館の未来は、専門家だけでなく、利用する私たち一人ひとりの選択にも左右されます。最後に博物館や美術館を訪れたのはいつだったか、そこからどんな気づきを持ち帰ったかを振り返ってみると、ナルディ氏のメッセージが少し身近に感じられるかもしれません。
「急速に変化する社会」のなかで、静かに考え、対話できる場所としての博物館。その価値をどう守り、どうアップデートしていくのか。2025年の国際博物館の日に向けて語られた問いは、今も続いていると言えそうです。
Reference(s):
Interview with president of International Council of Museums
cgtn.com








