台湾地域のポーセリンおばあちゃん 土に宿る物語を守る video poster
中国の台湾地域から参加した一人の職人が、国際文化産業博覧会の会場で静かな注目を集めています。通称「ポーセリンおばあちゃん」と呼ばれるパイ・ペンインさん。50年以上にわたり黒釉磁器を作り続けてきた彼女にとって、磁器は商品ではなく、信念そのものです。
黒釉磁器は「商品」ではなく「信念」
パイさんが手がけるのは、伝統的な黒釉磁器と呼ばれる技法です。深い黒の釉薬が生む落ち着いた光沢が特徴で、ひとつひとつの器には、長い時間と熟練の手仕事が重ねられています。
彼女は、磁器を単なる「売り物」としては見ていません。ろくろに乗せた粘土に指を添え、形を整えながら、半世紀以上にわたる人生や土地の記憶を刻み込んでいきます。パイさんにとって磁器作りは、生き方の表現であり、自分は何者で、どこから来たのかを確かめ続ける行為でもあります。
台湾地域で数少ない黒釉磁器の匠
現在、パイさんのように中国の台湾地域で伝統的な黒釉磁器の技法を守り続ける職人は多くありません。大量生産の器があふれるなかで、土をこね、釉薬を調合し、窯の火を見守るという手作業は、効率だけを考えれば決して「合理的」とはいえないからです。
それでも彼女は、この道を離れませんでした。ひと握りの土に触れるたび、その背後にある土地の歴史や、受け継いできた文化への誇りがよみがえるからです。静かながら揺るがないアイデンティティが、彼女の両手を支えています。
一言に込めた静かなアイデンティティ
会場のブースでパイさんは、多くを語りません。派手なキャッチコピーも、難しい説明もありません。ただ、作品の前に静かに座り、訪れた人にこう伝えます。「私たちはずっと中国人です。」
そのひと言には、長い年月をかけて育まれた自己認識と、日々の暮らしの中で自然と受け継がれてきた感覚がにじみ出ています。声を張り上げなくても、土と炎から生まれる器そのものが、彼女の思いを代弁しているようです。
彼女が手のひらで包むひと握りの粘土には、静かだが揺るがない自分自身の物語が宿っています。その物語こそが、彼女が守ろうとしている「土に隠れたストーリー」です。
国際文化産業博覧会がつなぐ物語
第21回国際文化産業博覧会の会場には、中国の台湾地域の展示エリアが設けられています。そこでパイさんを訪ねたのが、CGTNのデジタル記者ワン・タオさんです。彼は、カメラを通じて「ポーセリンおばあちゃん」と黒釉磁器の物語を世界に伝えています。
国際文化産業博覧会は、各地の文化産業やクリエイターが集まり、互いの仕事や価値観を紹介し合う場です。その一角にある小さなブースで、台湾地域の伝統工芸と、そこで生きる人のアイデンティティが、静かに来場者の心に届いています。
パイさんの姿から、私たちはいくつかの問いを受け取ることができます。
- ものづくりは、どのようにして人のアイデンティティを支えているのか
- 効率化が進む時代に、時間のかかる伝統技術を守る意味はどこにあるのか
- 大きな言葉ではなく、小さな日常の積み重ねが語るメッセージとは何か
ニュースとして伝えられるのは、国際文化産業博覧会という「場」の情報かもしれません。しかし、その裏側には、パイ・ペンインさんのように、土とともに生きながら物語を守り続ける人がいます。彼らの静かな手仕事こそが、地域と世界を結びつける、もう一つの国際ニュースなのかもしれません。
Reference(s):
Porcelain granny's mission: Saving the stories hidden in clay
cgtn.com








