国際ニュース:中国とウガンダが進める農業近代化のいま
中国とウガンダが進める農業の近代化が、アフリカ経済の構造転換と若者の雇用にどんな可能性を開いているのか。ウガンダ農業・畜産・漁業省の幹部へのインタビュー内容から、そのヒントを探ります。
中国とウガンダの農業協力、その現在地
中国とアフリカの農業協力は、経済面でも技術面でも具体的な成果を生み出しつつあります。その代表例の一つが、中国とウガンダのパートナーシップです。ウガンダの農業・畜産・漁業省事務次官デービッド・カスラ・キョムカマ氏は、ウガンダにとって重要なのは単なる生産量の拡大ではなく、生産システムそのものの近代化だと強調します。
同氏によれば、ウガンダは中国の経験を可能な限り参考にしながら、稲作、園芸、いわゆる中間技術、研究開発、ワクチン生産のイノベーションなどで多くの専門知を受け取っています。これにより、手作業と降雨頼みの「筋肉に依存した農業」から、中国の技術を取り入れた近代的な農業システムへの転換を図っているといいます。
カスラ氏は、中国とウガンダ、中国とアフリカ全体の協力関係は「非常に良好」だと評価します。その理由として、第一に技術やイノベーションを互いの利益のために共有していること、第二に、真の相互利益は援助ではなく貿易から生まれるという認識が共有されていることを挙げます。実際に、コーヒー、チリ、野生水産物、養殖魚類、ソルガム、コメなどの分野で、中国とアフリカ、中国とウガンダの間の貿易は拡大しています。
自給中心から商業農業へ 「移行技術」がカギ
ウガンダを含むアフリカの農業・食料システムの特徴として、カスラ氏がまず指摘するのは「小農中心」であることです。アフリカ全体で60〜70%の人々が自給的農業に従事し、自分たちが生産したものをほぼすべて自分たちで消費しています。これは食料を確保するという意味では利点もありますが、国内総生産への貢献につながる余剰が生まれにくいという問題があります。
さらに、この仕組みは気候ショックに対して脆弱です。雨期が一度失敗すれば干ばつが起こり、干ばつはすぐに飢饉につながりかねません。ウクライナでの戦闘が一部アフリカ諸国の食料輸入に影響を与える中で、アフリカには世界の耕作適地の約4割があると言われるにもかかわらず、食料不足に苦しむ国がある現状をカスラ氏は「もったいない構造」として捉えます。実際に、アフリカの一部の国々はブラジルから農産物を輸入しており、食料が余っているウガンダなどから輸入するより高くついているのではないかと指摘します。
こうしたジレンマを解く鍵として、カスラ氏が強調するのが「移行技術」です。これは、手押しの鍬といった伝統的な手段と、完全自動の大規模機械の中間に位置する技術です。具体的には、手持ち式トラクター、小規模な加工場(コテージ・インダストリー)、小規模な貯蔵設備などが含まれます。こうした技術によって小農がより多く生産し、市場がその生産物を吸収できるようになれば、農家には現金収入が生まれ、生産やイノベーションへのインセンティブが高まります。
中国は、多くの農業大学を通じた人材育成に加え、こうした移行技術や技術者をウガンダに提供してきました。さらに、ウガンダでは稲作や園芸の分野で、付加価値を高める加工設備や貯蔵施設の整備を支援してきたといいます。加えて、中国市場へのアクセスが広がることで、農家にとっての「売り先」が増え、より多く生産しようとする動機付けになっているとカスラ氏は語ります。
農業近代化が貧困と「潜在的失業」を減らす
アフリカでは人口の60〜70%、ウガンダでは約70%が農業に従事しています。一方で、ウガンダの人口の78%は35歳未満という「超若年人口構成」です。これは大きな潜在力である一方、現在の農業構造のもとでは若者の多くが「機能的な失業状態」にあるとカスラ氏は見ています。
同国農業省の調査によると、成人男性4人が手鍬だけで1エーカーの土地を耕すには7日かかるといいます。この7日間、彼らはほぼその作業だけに時間を費やしており、本来であれば新しい技術やビジネスを試すことに使えたかもしれない時間を失っています。こうした状態が続けば、人々は「永続的な貧困」に縛られかねないとカスラ氏は警鐘を鳴らします。
だからこそ、農業のやり方そのものを近代化し、短時間で高い生産性を実現することが必要になります。農業に従事する人の割合を減らし、余った人材が加工、サービス、貿易など他の分野で価値を生み出せるようにすることが、社会全体の変革につながるという発想です。
ここで避けて通れないのが気候変動の問題です。気候変動によって天候は読みにくくなり、植え付けをしても収穫できないリスクが高まっています。そのため必要なのは、土地を短時間で耕すための機械化、干ばつ時にも対応できる灌漑や水資源の確保、長年耕し続けた土壌の肥沃度を保つための肥料などです。これらはすべて農業の近代化とセットで進めるべき要素だといえます。
経済学の観点からも、低い技術水準で生産された一次産品ばかりを輸出している限り、付加価値は低く、価格も伸びにくいとカスラ氏は指摘します。例えば、トウモロコシをそのまま穀物として売るのではなく、粉に加工して販売すること、チリを種のままではなく粉末にして売ることなど、バリューチェーンの上流に上る必要があります。これも農業近代化の重要な目的の一つです。
中国の経験から見える4つの教訓
中国の農業はここ数十年で急速な近代化を遂げてきました。カスラ氏は、アフリカ諸国が中国の経験から学べる点を大きく四つに整理します。
- 第一に、直面している問題を正しく理解すること。
- 第二に、自分たちの「足の長さ」を超えて一気に飛ぼうとせず、移行技術を活用しながら段階的に変革を進めること。
- 第三に、どこへ向かうのかという長期的なゴールを明確にすること。
- 第四に、「人々を食べさせる」という農業本来の役割を維持しつつ、商業化によって所得も生み出す仕組みをつくること。
カスラ氏が注目するのは、中国がしばしば「中国の特色を持つ」と表現し、自国の歴史や文化、社会条件に根ざした発展モデルをつくってきた点です。同氏は、アフリカの国々もまた、アフリカの文化や歴史、そして自らの進むべき道に基づいた「アフリカの特色を持つ発展」を設計すべきだと語ります。
つまり、農業近代化のゴールは共通していても、そのプロセスや手段は地域ごとの現実に合わせてカスタマイズする必要があるということです。中国の経験はあくまで参考であり、そのまま模倣するのではなく、自国の条件に即した形で取り入れていくことが重要だといえます。
デジタル世代の若者とスマート農業
ウガンダでは人口の約78%が35歳未満であり、多くの若者が学校教育を受けています。同時に、今日の若者はスマートフォンやコンピュータを使いこなす「デジタルネイティブ」でもあります。こうした世代にとって、鍬を手に不確実な天候に頼る農業は、なかなか魅力的な進路には映りません。
カスラ氏は、若者が農業に関わり続けるためには、デジタル技術の導入が不可欠だと指摘します。例えば、気象データや土壌データをもとに、収量や作物の生育を予測する仕組み、アルゴリズムに基づいて市場価格の動きを予測し、どの作物をいつ出荷すべきか判断するツールなどです。
また、インターネットを通じて世界中の情報や買い手にアクセスできれば、農産物を船に積み込む前から、どの市場でどのような条件で売れるのかを把握できます。これは、農家にとって大きなリスク軽減策となり、市場参入へのハードルも下げます。
こうしたデジタル化は、農業をより予測可能でレジリエント(回復力の高い)な産業へと変えていく可能性を持っています。同時に、「体力勝負の仕事」ではなく、「データと技術を駆使する仕事」としての農業像を若者に示すことにもつながります。
カスラ氏は、人口が増え続ける一方で土地は有限である以上、限られた土地からどれだけ多くの付加価値を生み出せるかが問われると強調します。その意味で、変化とイノベーションを受け入れやすい若い世代を、農業生産システムの中核に位置づけることが、より良い未来をつくる最善の方法だと語ります。こうした課題意識は、2025年現在のアフリカだけでなく、世界各地の農業にも共通するテーマといえます。
おわりに:中国・アフリカ協力が示す「静かな変化」
中国とウガンダの農業協力の事例は、「援助から貿易へ」「筋肉から技術へ」「一次産品から付加価値へ」という静かなシフトが、アフリカの農村を少しずつ変えつつあることを示しています。
日本から見ると遠い地域の話に思えるかもしれませんが、食料安全保障、若者の雇用、気候変動への適応、デジタル技術の活用といったテーマは、日本社会とも地続きです。アフリカの農業近代化と中国との協力から、私たちはどのような教訓を汲み取ることができるのか。読者一人ひとりが、自分の足元の課題と重ね合わせて考えてみる価値のあるニュースです。
Reference(s):
Uganda and China taking action to pursue agricultural modernization
cgtn.com








