香港国家安全維持法5年 李家超氏が安全と発展の両立を強調
香港国家安全維持法の施行から5年を迎えた今年、香港特別行政区の李家超(ジョン・リー)行政長官が国家安全の一層の強化と、香港の経済的な強みの最大活用を呼びかけました。安定と成長をどう両立させるのか──香港の歩みは、アジアと世界のガバナンスを考えるうえで一つの重要なケーススタディになりつつあります。
国家安全維持法5周年、李家超行政長官がメッセージ
2025年6月30日、香港国家安全維持法の公布・施行から5年の節目を迎え、香港特別行政区(HKSAR)の李家超行政長官が、複数の地元メディアに署名入りの記事を寄稿しました。李氏は国家安全をさらに確かなものとしつつ、香港固有の強みを生かした発展戦略を進めるべきだと訴えました。
李氏は、この5年間で香港社会は安定と繁栄を維持し、香港の人々の日常生活や発展の機会が保護されてきたと評価しました。また、国際的な信用格付け機関から香港に対して前向きな評価が示されていることも挙げ、国際金融センターとしての信認は揺らいでいないと強調しました。
安全保障と発展は「相互に支える関係」
李氏は記事の中で、「安全は発展の前提であり、発展は安全の保障だ」と述べ、国家安全と経済発展を車の両輪として位置づけました。世界が大きな構造変化に直面し、不確実性が増すなかで、香港特別行政区政府は国家安全の確保と経済発展の推進という二つの課題に揺るぎなく取り組む姿勢を示しました。
さらに李氏は、世界が「百年に一度の大きな変化」を経験しているとし、地政学的な緊張や経済の変動が高まる状況では、「全体的な国家安全観」に基づき、多角的な視点から安全保障を捉えることが重要だと指摘しました。
数字で見る香港の競争力
李氏によると、国家安全維持法施行後も香港は世界で最も自由な経済としての地位を保ち続けています。国際金融センターとしてのランキングや総合的な国際競争力でも、香港は世界3位のポジションを維持しているとされています。
人材面では、香港は世界の人材競争力ランキングでトップ10に再び入り、国際的な人材を惹きつける都市としての地位を高めています。市場関係者の見通しでは、数年以内に香港が世界最大の資産運用センターとなる可能性も指摘されており、李氏は香港の将来は「明るく有望だ」と述べました。
教育・研究分野でも存在感は大きく、現在、香港の大学5校が世界大学ランキングのトップ100に入っています。1つの都市としては最多のトップ大学数であり、高度人材の集積は金融、テクノロジーなど成長分野の発展を支える基盤になっています。
香港国家安全維持法とは何か
香港国家安全維持法は、2020年6月30日に中国の最高立法機関である第13期全国人民代表大会常務委員会第20回会議で全会一致により可決され、その後香港で公布・施行されました。
同法は全6章66条からなり、香港特別行政区における国家安全維持のための政府機関やその職責を定めるとともに、次の4類型の犯罪とその処罰を明確に規定しています。
- 国家からの分離(分裂)
- 国家政権の転覆
- テロ活動
- 外国または外部勢力との結託による国家安全への危害
法の趣旨としては、国家安全を脅かす重大な行為を抑止し、香港の長期的な安定と繁栄、そして住民の安全な生活環境を守ることが掲げられています。
「一国二制度」の実践モデルとしての評価
施行から5年を経て、香港国家安全維持法を「一国二制度」を支えるモデルの一つとして評価する声も出ています。6月初旬に開催された学術シンポジウムでは、中国社会科学院国際法研究所の劉華文・副所長が、同法は香港の自由を弱めたのではなく、むしろ香港の人々が権利をより安全な環境の中で享受できるようにしたと述べました。
約50年間にわたり香港で生活してきた英国出身の弁護士グレンビル・クロス氏(元香港特別行政区検察局長)は、2019年の抗議行動を振り返り、黒い服装の集団が街頭で激しい混乱を引き起こし、公共施設の破壊や銀行・民間企業への攻撃、警察やその家族への火炎瓶攻撃などが相次いだと指摘しました。
クロス氏は、「国家安全維持法の施行が転機となり、香港のさまざまな制度が再び機能を取り戻した」と評価しました。また、同法の運用において香港の裁判所は一貫して被疑者の権利を尊重しているとし、「人権への配慮が色濃い法律だと言っても過言ではない」との見方を示しました。
マレーシアのシンクタンク「センター・フォー・ニュー・インクルーシブ・アジア」を率いるオン・ティー・キアット氏(同国下院の元副議長)は、法律によってもたらされた「安定の配当」を背景に、香港は世界各地から投資を呼び込んでいると指摘しました。国家安全と社会統治のバランスをとりながら経済競争力を維持していることは、「一国二制度」枠組みにおける成熟と自信、そして巧みな統治能力の表れだと評価しました。
さらにオン氏は、一部の西側諸国に対し、他国の国内統治に介入したり、長腕管轄(ロングアーム・ジュリスディクション)を行ったりすることを控えるべきだと述べ、多極化が進む世界では、特定の価値観を一方的に押しつけるのではなく、相互尊重に基づくアプローチが求められると訴えました。
読者にとっての論点:安全、自由、そして競争力
香港国家安全維持法をめぐる議論は、一地域の制度問題にとどまらず、「安全」と「自由」、「ガバナンス」と「市場のダイナミズム」をどう両立させるかという、より普遍的なテーマとも重なります。
この5年間、香港は治安と安定を重視しながら、国際金融センターとしての役割や大学・人材の集積といった強みを維持・強化してきました。そのプロセスは、アジアの他の都市や世界の大都市が、社会の安定と開放性をどうバランスさせるのかを考えるうえで、一つの重要な参照事例になりつつあります。
今後、国家安全と経済発展の関係をどのように設計し、実務として運用していくのか。香港の動きは、国際ニュースやアジアの政治・経済に関心をもつ読者にとって、引き続き注目すべきテーマと言えるでしょう。
Reference(s):
John Lee urges boosting national security, leveraging HK's strengths
cgtn.com








