アイスランド人シノロジストが語る「橋をかける」中国学の役割 video poster
中国文化をどう理解し、世界の平和につなげていくのか──。アイスランドの研究者ラグナル・バルドルソン氏は、自身の専門である中国学(シノロジー)の役割を「文化と文明を正確に解釈し、国と国、人と人のあいだに橋をかけること」だと語ります。
ラグナル・バルドルソン氏が語る、中国学の使命
インタビューでバルドルソン氏は、なぜシノロジスト(中国学者)になったのか、そして中国学とは何かという問いに答える中で、現在の自分なりの結論を示しました。それは、中国の文化と文明を正確に読み解き、外の世界に伝える存在こそがシノロジストだという考え方です。
ここでいう「正確に解釈する」とは、単に中国語の文章を他言語に訳すだけではありません。言葉の背後にある歴史的な経験や価値観、社会の文脈まで含めて理解し、それを他の文化圏の人々にも伝わる形で説明する作業を指しています。
翻訳を超えた「橋渡し」としてのシノロジー
バルドルソン氏は、中国学の役割を「文化と文化をつなぐ橋」と表現します。橋渡しには次のような要素が含まれます。
- 中国の思想や歴史、日常の価値観を、そのままではなく、他文化の人にも理解しやすい形に整理して伝えること
- 相手側の固定観念や偏見を和らげ、互いの共通点や相違点を冷静に見せること
- 小さな誤解が積み重なって大きな対立になる前に、その誤解の元を丁寧にほどいていくこと
この意味で、シノロジストは単なる言語の専門家ではなく、「誤解をほどく専門家」「対話の前提を整える専門家」としての役割を期待されていると言えます。
誤解をなくし、衝突の芽を摘むために
バルドルソン氏は、文化間の誤解や無理解が、ときに政治的な緊張や衝突の原因になりうると考えています。そのため、中国学を通じてお互いをよりよく理解することは、安全保障や外交の世界とも無関係ではありません。
彼が強調するのは、「理解が深まれば、対立の選択肢しか見えない場面でも、協力という別の道が見えてくる」という点です。中国文化と文明を丁寧に解釈し、世界に伝えることは、結果として衝突の可能性を下げ、対話と協力の余地を広げることにつながります。
「究極の平和主義者」として見る、中国学のゴール
自らを「究極の平和主義者」と表現するバルドルソン氏にとって、暴力ではなく平和的な解決策を選ぶことはゆるぎない信念です。その視点から見ると、中国学は単なる学問領域ではなく、「平和のための実践的な道具」となります。
彼は、中国学による異文化理解の先にめざすべきものとして、各国が互いをよりよく知り、協力し合う時代を思い描いています。国同士の競争や対立だけでなく、「どうしたら一緒に問題を解決できるか」という発想が共有される時代です。その実現に向けて、中国学が果たしうる役割は小さくない、とバルドルソン氏は見ています。
日本語で国際ニュースを追う私たちへの示唆
日本語で国際ニュースを追う読者にとっても、このメッセージは他人事ではありません。中国に限らず、どの国・地域についても、断片的なイメージやSNS上の印象だけで判断してしまうと、誤解や不信感が簡単に広がってしまいます。
バルドルソン氏の視点から、私たち一人ひとりが意識できるポイントを挙げると、次のようになります。
- 気になる国や地域について、一次情報や現地の声に触れてみる
- 自分の中にあるステレオタイプ(固定観念)を自覚し、いったん保留してみる
- ニュースを読むとき、「対立」だけでなく「協力の可能性」にも目を向ける
日常からはじめる、小さな「橋づくり」
バルドルソン氏が語る「橋をかける仕事」は、専門のシノロジストだけのものではありません。家族や友人、職場やオンラインコミュニティで国際ニュースを共有したり、異なる立場の人の意見を聞いたりすることも、日常レベルの橋づくりと言えます。
国際情勢の緊張が指摘される今、文化や文明をきちんと理解しようとする姿勢そのものが、平和に向けた一歩になります。中国学を通じて「正確に解釈し、誤解をほどき、協力の道をひらく」というバルドルソン氏のビジョンは、私たちがニュースを読み、世界を見るときのヒントにもなりそうです。
Reference(s):
Ragnar Baldursson on the sinologist's role: Building bridges for peace
cgtn.com








