WAIC 2025を前に注目集めた麻雀ロボと配達ロボ 中国エンボディドAIの現在地
2025年7月26〜28日に上海で開催された世界人工知能大会(WAIC)2025を前に、中国のエンボディドAI分野で有力とされるPsiBotが、麻雀ロボットとフードデリバリーロボットという2つのロボットを軸にした出展計画を示していました。研究室のブレイクスルーを、実際の生活シーンへどう落とし込むのかを映し出す内容として注目されました。
上海WAIC 2025とPsiBotの狙い
プレビュー情報によると、PsiBotはエンボディドインテリジェンス(身体を持つ人工知能)と呼ばれる分野の企業として、会場で総合的な技術群を披露する構想を示していました。麻雀ロボットと配達ロボットという分かりやすい目玉に加え、階層型エンド・ツー・エンドのVLAモデルPsi R1、多自由度の巧みなハンドPsiBot H1、全身ロボットや遠隔操作システムなども展示対象に含まれています。
これらは、小売物流、工業用途、エンターテインメントまで幅広い分野を想定しており、データとアルゴリズムからハードウェア、具体的な利用シナリオまでを一体で開発するフルスタックな体制を示すものとされています。
麻雀ロボットが見せる「考える手」とCoAT
同社創業者でCEOの王綺斌氏は、麻雀ロボットと配達ロボットについて「複数のシナリオにまたがるエンボディドインテリジェンスの凝縮版」だと説明しています。麻雀ロボットは、会場の観客と連続して対局できるよう設計されており、牌をめくる、引く、並べ替えるといった一連の動作をミリメートル単位の精度でこなすとされています。
特徴的なのは、物理的な操作だけでなく、リアルタイムの対局の流れを読みながら意思決定を行う点です。ロボットは局面に応じて意思決定の連鎖を動的に構築し、人間の打ち手と同じように、ポンやカンといった判断を自律的に選びます。
観客はロボットの対局を見学できるだけでなく、実際に卓を囲んで対戦することも想定されています。その場では、視覚情報、言語情報、行動情報を統合し、一連の思考と行動の流れとして出力する仕組みを体感できるとされています。PsiBotはこれをChain of Action and Thought(CoAT)と呼び、エンボディドAIの中核コンセプトとして位置づけています。
ラスト100メートルに挑むフードデリバリーロボット
もう一つの主役が、いわゆる「ラスト100メートル」の課題に焦点を当てたフードデリバリーロボットです。宅配袋や紙袋、宅配便の袋など、形が変わりやすく、持ち方も一定でない荷物を扱うことを前提に設計されています。
プレビューによれば、このロボットは多様な荷物の形状や置かれ方を正確に認識し、人間の手のように柔軟に動く巧みなハンドによって、袋の取っ手の隙間を通して安定してつかむことができます。荷物がへこんだり変形した場合でも、安全かつ安定して持ち上げられるよう工夫されていると説明されています。
ロボットアームは7自由度、ハンドは6自由度を持ち、最大3キログラムの荷物を扱うことが可能とされています。フードデリバリーや身近な物流現場にそのまま適用できる、知能とロボットを一体化したソリューションとして構想されており、「最後のひと手間」を自動化する取り組みの一例と言えます。
裏側を支えるVLAモデルと巧みなハンド
PsiBotは、こうしたロボットの背後にある中核技術として、階層型エンド・ツー・エンドのVLAモデルPsi R1や、多自由度の巧みなハンドPsiBot H1、全身ロボット、遠隔操作システムなども合わせて展示する計画を示していました。
VLAとは、Vision(視覚)、Language(言語)、Action(行動)をまとめて扱う大規模なAIモデルを指すとされます。視覚センサーで環境を認識し、言語的な指示やルールを理解し、それを実際の動作へ落とし込むまでを一貫して処理できる点が特徴です。
PsiBotは、こうしたVLAモデルと巧みなハンド、全身ロボットを組み合わせることで、研究用のデモにとどまらない、現実の店舗や工場、エンタメ空間に導入可能な形でエンボディドAIを実装しようとしているとみられます。
エンボディドAIは生活をどう変えるのか
今回のプレビュー情報から浮かび上がるのは、エンボディドAIが単なる研究テーマから、徐々に日常生活の具体的な場面へ入りつつあるという流れです。麻雀卓での細かな手さばきも、マンションのエントランスでの荷物受け渡しも、センサー、アルゴリズム、ロボットの身体が一体となって初めて実現します。
中国のPsiBotが示した構想は、エンボディドAI企業が実際の利用シーンから逆算し、データやモデル、ロボットハードウェアをフルスタックで統合しようとしていることを象徴しています。WAIC 2025を前に打ち出されたこれらのアイデアが、今後どこまで社会実装されていくのか。2025年以降のエンボディドAIの展開を考えるうえで、一つの象徴的なケースとなりそうです。
Reference(s):
WAIC preview: Mahjong, delivery robots highlight China's embodied AI
cgtn.com








