北京で初のワールド・ヒューマノイド・ロボット・ゲームズ AIサッカーのいま
2025年8月14〜17日に中国の首都・北京での開催が予定されていた第1回ワールド・ヒューマノイド・ロボット・ゲームズに向けて、世界各国のロボットチームが集まり、準備を進めていました。国際ニュースとしても注目されたこの大会は、AIとロボット工学の現在地を知る手がかりになります。
世界30チームが集結 北京発の国際ロボット競技
北京で開かれるワールド・ヒューマノイド・ロボット・ゲームズには、米国、ブラジル、ドイツ、ポルトガルなどの国々からロボットチームが参加しました。主催者によると、サッカー競技だけでも合計30チームが登録されたということです。
会場となる中国の首都・北京には、各国の研究者や学生が率いるチームが到着し、人型ロボットの調整や戦術づくりに追われました。短い準備期間の中で、どれだけAIとロボットの性能を引き出せるかが勝負どころになっています。
- 会場:北京
- 日程:2025年8月14〜17日
- 競技:ヒューマノイド(人型)ロボットによるサッカーなど
- 参加:米国、ブラジル、ドイツ、ポルトガルなどから30チーム
完全自律の5対5サッカー AIがすべてを判断
サッカー競技では、人が遠隔操作するのではなく、AIが自律的に判断して動く5対5の試合が行われました。ピッチに立つのは、人型のロボット同士です。
ロボットには高度なビジュアルセンサー(視覚センサー)が搭載され、ボールの位置やフィールド上の状況を認識しながら、自ら走り、方向転換し、パスやシュートを選択します。一度転んでも自分で立ち上がれるように設計されており、人間のサッカー選手に近い動作を目指しています。
AIが担う三つの役割
各チームが調整しているのは、主に次のようなポイントです。
- 認識:ボールや味方・相手ロボット、ゴールの位置を素早く見分ける
- 位置決め:自分がフィールドのどこにいるかを推定し、最適な動線を選ぶ
- 意思決定:ドリブルするか、パスを出すか、シュートを打つかを瞬時に判断する
こうした処理をすべてリアルタイムで行うため、ソフトウェアの設計と調整が各チームの腕の見せどころになっています。
中国・中国農業大学「山海チーム」の挑戦
なかでも注目を集めているのが、中国農業大学の山海チームです。このチームは、2025年6月にブラジルで行われたロボカップ・ヒューマノイド・ロボット・サッカー・ワールドカップに出場し、準優勝という成績を収めました。
山海チームの楊少帥(ヤン・シャオシュアイ)氏によると、今回の大会に参加する多くのチームが、中国企業ブースター・ロボティクスの人型ロボットを共通のハードウェアとして使用しているといいます。
楊氏は、このロボットについて「ドリブルやボールコントロールのアルゴリズムを含め、ハードウェアとして非常に強力なプラットフォームだ」と評価しています。そのため、各チームはハードウェアの基本性能に頼りつつ、ソフトウェア側で認識、位置推定、戦術判断といった部分に開発リソースを集中させることができます。
- 共通のロボット本体:ブースター・ロボティクス製
- 各チームが工夫する部分:カメラ映像の処理、自己位置推定、戦略アルゴリズム
- 狙い:限られた時間で、チームごとの「頭脳」をどこまで磨けるか
ポルトガルの大学チームは「ソフトウェアを一から」
ポルトガルのミニョ大学から参加したアントニオ・リベイロ氏のチームは、結成からわずか2週間という短期間で大会に挑みました。ハードウェアには同じくブースター・ロボティクスのロボットを用いながらも、ソフトウェアはほぼゼロから自前で開発しているのが特徴です。
チームは、ロボットの足の部分をカスタムメイドにするなど、細部まで工夫を重ねています。モーターを細かく制御するPID制御と呼ばれる仕組みは備わっているものの、それ以外の動作や戦術は、基盤から自分たちで設計しているといいます。
限られた準備期間の中で、ハードウェアは共有しつつも、ソフトウェアでどれだけ独自色を出せるか。国や大学によって開発アプローチが異なる点も、この国際ニュースの興味深いところです。
「5〜6歳児レベル」でも進化は急速
とはいえ、人型ロボットのサッカー能力は、まだ人間のトップ選手には遠く及びません。山海チームの楊氏は、現在のロボットのサッカー能力について「5〜6歳の子どもに相当するのではないか」という見方を示しています。
スピードや、フィールド全体を把握する能力など、多くの面でまだ人間には大きな差があります。それでも、AIとロボット技術の進歩は速く、短期間でできることが増えつつあります。
今回のようなヒューマノイドロボットのサッカー競技は、単なるエンターテインメントではなく、現時点での限界と課題を可視化する「テストベッド(実験の場)」として機能しているといえるでしょう。
スポーツを「実験場」に 中国が進めるAIヒューマノイド戦略
中国は今、AIを搭載したヒューマノイドロボットの開発を加速させています。その一環として、マラソン、ボクシング、サッカーといったスポーツ競技を、ロボットにとっての実世界の試験場として活用する動きが進められています。
スポーツ競技は、次のような点でロボット技術の検証に適しています。
- 予測不能な状況:ボールの跳ね方や相手の動きなど、事前に完全には読めない環境での対応力が試される
- 瞬時の判断:攻守の切り替えなど、ミリ秒単位の意思決定が求められる
- 高い身体制御:転倒からの立ち上がり、接触プレーへの対応など、人間に近い身体の使い方が必要になる
北京でのワールド・ヒューマノイド・ロボット・ゲームズは、こうした取り組みの象徴的な舞台の一つです。ロボットやAIの性能だけでなく、開発者同士が技術やアイデアを持ち寄ることで、次の世代のヒューマノイド技術が形づくられていきます。
私たちの生活との距離感 どこまで来ているのか
AI搭載の人型ロボットがサッカーをする光景は、まだどこかSFのようにも見えます。しかし、その裏側で磨かれているのは、実は私たちの生活にも関わる技術です。
- 人の動きを理解し、一緒に作業できるロボット
- 転倒しても自力で立ち上がり、壊れにくい機構
- 複数のロボットが協調して動くためのアルゴリズム
こうした要素は、将来の介護支援ロボットや災害対応ロボットなど、多様な分野への応用も考えられます。北京での大会で見られたのは、その初期段階の一つともいえそうです。
まとめ:AIサッカーが映す「次の10年」
北京で開催が予定されていた第1回ワールド・ヒューマノイド・ロボット・ゲームズには、世界30チームが集まり、中国農業大学の山海チームやポルトガルのミニョ大学など、多様なプレーヤーが参加しました。
- 共通ハードウェアを使いながら、ソフトウェアで競う構図
- 完全自律の5対5サッカーというチャレンジングな競技形式
- スポーツを通じてAIヒューマノイドの限界と可能性を探る姿勢
ロボットのサッカー能力は、まだ人間の子どもレベルかもしれません。それでも、その足元では、認識、判断、協調といったコア技術が着実に磨かれています。北京発のこの国際ニュースは、AIとロボットが日常の一部になるまでの「距離」を考えるきっかけを与えてくれます。
Reference(s):
Teams prepare for inaugural World Humanoid Robot Games in Beijing
cgtn.com








