チベット・ラサ発 イェシェのカフェがつなぐ伝統とモダンな味 video poster
チベット文化の息づくラサで、伝統と世界の味をかけ合わせた一風変わったカフェが注目を集めています。人類学者から起業家へと転身したイェシェ・チョドロンさんが手がける「イェシェズ・カフェ」です。
ショトン・フェスティバル・コーヒーやツァンパクッキーといったオリジナルメニューを通じて、イェシェさんはチベットの暮らしや祭りの記憶を、現代的なカフェ文化の中にさりげなく溶け込ませています。
母の25年の店から生まれた、新しいカフェ
イェシェさんがラサに戻ってカフェを始めた背景には、約25年続く母親の商売の存在があります。長年地域に根ざしてきた店を土台にしながら、その魅力を次の世代にも伝えたいという思いが、カフェづくりの出発点になりました。
大学で人類学を学び、北京大学で博士号を取得したイェシェさんは、一度は学問の世界に進みながらも、最終的には故郷に戻る道を選びました。研究で培った観察力と聞く力を生かし、地元の人と外から訪れる人の両方がくつろげる場所づくりを目指しています。
人類学者の目線でデザインされた空間
イェシェズ・カフェは、単に「おしゃれ」なだけの店ではありません。店内には宮崎作品の世界を思わせる絵が飾られ、ヒマラヤのもてなしの感覚と、どこか懐かしいアニメのイメージが同居しています。
それは、フィールドワークで人々の暮らしを見つめてきた人類学者ならではの感覚の結晶とも言えます。地元の常連客にとっては自分たちの文化を新しい角度から見直す場に、海外からの旅行者にとってはチベット文化への入り口になるような空間が意識的にデザインされています。
ショトン・フェスティバル・コーヒーとツァンパクッキー
このカフェを象徴するのが、ショトン・フェスティバル・コーヒーとツァンパクッキーです。ショトン祭にちなんだ特製コーヒーは、祭りの雰囲気や記憶を一杯の飲み物に閉じ込めたようなメニュー。日常の中でふと祭りを思い出せる、小さな仕掛けになっています。
一方、ツァンパクッキーは、チベットで親しまれてきたツァンパを現代風の焼き菓子に仕立てたものです。子どものころから慣れ親しんだ味を、お茶やコーヒーと一緒に気軽に楽しめるようアレンジすることで、伝統食を次の世代につなぐ役割も担っています。
変わりゆくラサで、伝統と現代をつなぐ
観光や都市開発が進むなかで、ラサの街並みや人々のライフスタイルは少しずつ変化しています。その変化の中で、イェシェズ・カフェのような場所は、急ぎ足で過ぎていく日常と、土地に根付いた文化とを結び直す「橋」のような存在になりつつあります。
メニューの味わいだけでなく、店の物語そのものが、今のラサを象徴しているとも言えます。海外で高度な教育を受けた若い世代が故郷に戻り、家族の営みを引き継ぎながら、新しい価値を加えていく。その姿は、多くの地域で共有されている課題と希望を映し出しています。
一杯のコーヒーから見える、世界とつながるチベット
イェシェズ・カフェで出されるのは、単なる「融合メニュー」ではなく、チベット文化と世界の味、人類学とビジネス、家族の歴史と個人の挑戦が交差する一杯です。
ラサを訪れる人にとっては、観光名所を巡るだけでは見えてこない、今のチベットの空気にふれるきっかけになるかもしれません。そして画面越しにこのストーリーを読む私たちにとっても、「自分のルーツや地域の文化を、どう現代に生かすか」という問いを静かに投げかけてくれます。
Reference(s):
cgtn.com








