中国・ハルビン工業大学が雪害リスクに挑む 風雨熱雪シミュレーターとは video poster
大雪による屋根の崩落リスクに対し、中国のハルビン工業大学が風・雨・熱・雪を同時に再現できる世界初のシミュレーターを開発し、建物の安全性向上に向けた新たな一歩を示しました。
雪の重みで屋根が壊れる仕組み
屋根の構造は、想定される雪の重さ(雪荷重)に耐えられるよう設計されています。しかし、短時間に大量の雪が積もったり、風で一部に雪が偏って積もったりすると、局所的に想定以上の力がかかり、屋根のたわみや崩落につながるおそれがあります。
特に、スタジアムや展示場、空港ターミナルなどの大スパン(支柱の間隔が広い)屋根では、雪の分布のわずかな違いが構造全体に大きな影響を与えます。そのため、現実に近い形で雪の挙動を再現し、データとして蓄積することが、安全設計のカギとなっています。
世界初の風・雨・熱・雪シミュレーター
ハルビン工業大学が開発したのは、英語名で Simulator of Natural Action of Wind-Rain-Heat-Snow for Space Structure と呼ばれるシステムです。大スパン構造物の屋根に対して、風・雨・熱・雪が複雑に影響し合う環境を人工的に再現できる点が特徴です。
複数の気象要素を同時に再現
このシミュレーターは、単に雪を降らせて積もらせるだけではなく、風、雨、気温(熱)、雪が同時に作用する状況をつくり出します。現実の屋外環境では、強風で雪が吹き寄せられ、途中で雨に変わり、気温の変化で溶けたり再凍結したりと、条件は刻々と変化します。こうした複雑な状況を室内で統合的に再現できる点が、技術的なポイントです。
雪のサイクルを連続的に追跡
システムは、屋根の上で起きる雪の「積もる・吹き寄せられる・溶ける・結晶化する・再び積もる」というサイクルを連続的に再現します。これにより、雪がどのように移動し、どこにどれだけ蓄積しやすいのかを、時間の経過とともに詳細に観察できます。
この連続シミュレーションによって、大スパン屋根にかかる雪荷重の分布を、これまでよりも現実に近い形で計測できるとされています。研究者は、実環境に近いデータを基に、構造設計や補強方法を検討できるようになります。
大スパン屋根の安全設計にどんな効果があるか
ハルビン工業大学のシステムは、特に大規模な屋根構造の安全性向上に役立つと期待されています。具体的には、次のような場面で活用できる可能性があります。
- 新しいスタジアムや展示場などの設計段階で、雪荷重をより精度高く見積もる
- 既存の大スパン屋根について、極端な積雪条件を想定した耐荷力評価を行う
- 地域ごとの風・雨・気温条件を考慮した、より現実的な安全基準づくりに生かす
2025年現在、世界各地で異常気象や極端な降雪への警戒が高まるなか、こうした精密なシミュレーション技術は、国際的にも注目される分野と言えます。
日本を含む雪国への示唆
日本を含め、積雪地域では毎年のように大雪が話題となります。屋根の雪下ろしや除雪作業は、人手やコストがかかるだけでなく、作業中の事故リスクもあります。そもそも建物の設計段階で、雪の挙動をより正確に理解できれば、安全性と効率性の両方を高める余地があります。
中国の大学が開発した今回のシミュレーターは、雪害リスクに対して、データに基づいて向き合おうとする動きの一例です。今後、国や地域を越えた連携や知見の共有が進めば、雪の多い地域の暮らしや経済活動を支えるインフラの安全性向上につながっていくかもしれません。
Reference(s):
China tackles building collapse risks with advanced weather simulator
cgtn.com








