中国発ゲーム「Black Myth: Zhong Kui」 神話ユニバースで世界に挑む
中国のゲームスタジオGame Scienceが今年の国際ゲームイベント「gamescom 2025」のOpening Night Liveで、新作アクションゲーム「Black Myth: Zhong Kui」をラストサプライズとして公開しました。世界のゲーム業界の舞台で、中国発のハイクオリティ作品が存在感をさらに高めた出来事です。
gamescom 2025で見せた自信とメッセージ
今回の発表は、中国ゲーム産業にとって象徴的な一歩といえます。大きな成功を収めた前作「Black Myth: Wukong」に続く新作を、Opening Night Liveのクロージングとしてぶつけるという選択は、作品への自信と、グローバル市場への強い意欲を示すものです。
「Black Myth: Zhong Kui」は、単なる続編ではなく、中国の神話や伝説をベースにしたシリーズ全体の世界観を広げるプロジェクトとして位置づけられています。高品質な映像と演出を武器に、中国発のゲームが世界市場で新たなスタンダードを目指そうとしていることがうかがえます。
「Black Myth Universe」という発想
Game Scienceは、前作の段階から「Black Myth」というブランドの下で一つの共有世界、いわばブラックミスティック・ユニバースを構想してきました。さまざまな中国神話・伝説を一つの大きな枠組みの中で描き出す試みです。
Game Scienceの共同創業者兼CEOであるFeng Ji氏は、中国メディアChina Media Groupのインタビューで、次のように語っています。
「Black Myth: Wukongの制作を考え始めたときから、Black Mythという名前でさまざまな中国の神話や伝説を扱えるようにしたいと考えていました。」
そのため、同社は早い段階でXiaoqian、Zhong Kui、Yang Jianといったキャラクター名を登録していたといいます。これらのキャラクターは、孫悟空ほど世界的な知名度は高くないかもしれませんが、それだけにクリエイティブな再解釈や物語づくりの余地が大きい存在です。
孫悟空だけではない多層的な神話世界
「西遊記」と孫悟空は、中国神話・古典の中でも世界的に知られた存在です。一方で、XiaoqianやZhong Kui、Yang Jianのように、地域や世代によって親しまれ方が異なるキャラクターも数多く存在します。
Game Scienceが目指しているのは、こうした多様なキャラクターを一つのシリーズの中で丁寧に掘り下げ、相互につながりを持つ物語世界を構築することです。プレイヤーにとっては、一本のゲームを遊ぶたびに、中国の神話世界の新しい側面に出会える設計になっていく可能性があります。
鐘馗という伝説を世界へ
今回の主役となるZhong Kui(鐘馗)は、中国の民間伝承において邪悪な鬼や悪霊を退治し、不運から人々を守る存在として知られています。しばしば「幽霊を食べる者」とも呼ばれ、強い守護のイメージを持つ神格的なキャラクターです。
鐘馗は、これまで中国の絵画や民間信仰の中では、頼もしい武人として描かれてきました。一方で、モバイルゲーム「Honor of Kings」に登場する鐘馗のように、丸みを帯びた親しみやすいデザインで表現されるケースもあり、その姿はメディアによってさまざまです。
そうした中で、Game ScienceはAAAクラスの大作ゲームとして鐘馗を据え、よりダークでシネマチックな表現で描こうとしています。AAAとは、開発規模や予算が非常に大きく、グラフィックやサウンドなどあらゆる面で高品質を目指す作品を指すゲーム業界の用語です。
知る人ぞ知る中国の伝説的キャラクターを、こうしたスケールの作品の主役に据えることで、中国文化の一側面を世界のプレイヤーに紹介する役割も期待できます。
情報発信そのものも「物語化」するスタジオ
Game Scienceは、作品そのものだけでなく、発表の仕方やマーケティングでも注目されてきました。前作「Black Myth: Wukong」の初期発表では、「new folder」というファイル名を使ったユーモアのある公開方法が話題になりました。
今回の「Black Myth: Zhong Kui」では、そのネタをあえて繰り返すことはせず、世界的な注目が集まるOpening Night Liveのラストサプライズとして発表する戦略を選びました。サプライズ性の高い公開タイミングと、クオリティの高い映像を組み合わせることで、ゲーム内容と同じくらい「どのように見せるか」というストーリーテリングにも力を入れていることがわかります。
なぜ中国神話ベースのゲームが今、重要なのか
国際ニュースとして見たとき、この新作の意味は、中国のゲームスタジオが単発のヒットにとどまらず、長期的なシリーズ・世界観づくりに踏み出している点にあります。ゲームというメディアを通じて、自国の物語資産をどのように再解釈し、世界のプレイヤーと共有していくのかという挑戦です。
近年、多くのゲームが北欧神話やギリシャ神話などを題材にしてきました。その流れの中で、中国神話に焦点を当てた「Black Myth」シリーズは、世界のプレイヤーにとって新しい選択肢となり得ます。異なる文化圏の物語がゲームを通じて交差することで、遊び手の視野を自然に広げていく可能性もあります。
これからの「Black Myth」をどう見るか
「Black Myth: Zhong Kui」は、Game Scienceが描くブラックミスティック・ユニバースの第二幕として位置づけられる作品です。今後、どのような中国神話・伝説がゲームとして立ち上がり、互いにどのように関係していくのかに注目が集まります。
プレイヤーやゲームファンの視点から見れば、次のようなポイントが今後のチェック項目になりそうです。
- 鐘馗というキャラクターが物語の中でどのように再解釈されるのか
- 異なるタイトル同士で、世界観や設定がどのようにつながっていくのか
- 中国発のAAAタイトルとして、世界のゲーム市場でどのような評価を受けるのか
具体的な発売時期や詳細なゲームシステムなど、これから明らかになる情報も多く残されていますが、gamescom 2025でのサプライズ発表によって、「Black Myth」シリーズが単なる一作限りではないことははっきりしました。今後の続報は、中国ゲームと国際ゲーム市場の動向を知るうえでも見逃せないものになりそうです。
Reference(s):
From Wukong to Zhong Kui: Game Science expands its mythic universe
cgtn.com








