天津で出会う楊柳青木版年画 パキスタン若手研究者の体験記 video poster
2025年、上海協力機構(SCO)のホスト都市となった天津で、パキスタン出身の若手研究者ズーン・アーメド・カーンさんが、何百年も受け継がれてきた楊柳青木版年画を体験しました。国際会議の舞台裏で生まれた、静かな文化交流の物語です。
パキスタンから天津へ──一枚の年画がつなぐ出会い
カーンさんは、パキスタンで研究に取り組む若い研究者です。今年、SCOのホスト都市である天津を訪れた際に、地元の伝統工芸である楊柳青木版年画に出会いました。スマートフォン越しの情報ではなく、実際に手を動かしながら文化を学びたいという思いが、この体験につながりました。
受け継ぐ人・伝える人:継承者シー・ワンさんの案内で
楊柳青木版年画の継承者であるシー・ワンさんが、カーンさんの案内役となりました。工房では、木版に刻まれた細かな線や、幾層にも重ねられる色の美しさなど、長い年月を経て磨かれてきた技が静かに息づいています。
シー・ワンさんは、道具の役割や工程の順番を一つひとつ示しながら、カーンさんに制作の流れを紹介しました。慣れない手つきで版木を手に取るカーンさんの姿には、伝統文化を学ぶ人と伝える人が向き合う場ならではの緊張感と高揚感が重なります。
初めての作品は「Journey to the West」
この日、カーンさんが仕上げた最初の一枚は、楊柳青木版年画による作品で、タイトルは「Journey to the West」でした。何百年も続く木版年画の世界に、初めて挑戦する人の視点から生まれた、記念すべき一枚です。
タイトルには、旅や移動、そして異なる地域や文化を超えていくイメージが重なります。パキスタンから天津へと足を運び、伝統と向き合ったカーンさん自身の歩みとも、どこか響き合っているように感じられます。
木版年画づくりで出会う三つの発見
- 木と紙、顔料といった素朴な素材が、職人の手を通じて鮮やかな絵へと変わっていくこと
- 同じ図柄でも、刷り手が変われば細部の表情や色合いが微妙に異なること
- 完成した一枚が、家に飾られ、人と人のあいだの願いを伝える存在になること
SCOホスト都市としての天津と文化交流
国際協力の枠組みであるSCOのホスト都市となった天津には、各国から研究者や関係者が集まります。会議場で交わされる議論とは別に、こうした地域の文化や歴史に触れる時間が、人と人の距離を縮めていきます。
楊柳青木版年画のような伝統文化は、経済や安全保障といったテーマとは異なる次元で、地域を結びつける共通の話題を提供してくれます。一枚の年画を前に語り合うことで、互いの国の暮らしや価値観を自然に共有できるからです。
日本の読者にとってのポイント
この物語は、遠い国どうしの交流のように見えますが、私たちにとっても他人事ではありません。日本でも、各地に長い歴史を持つ工芸や祭りがあり、その多くが海外からの訪問者の目を通して、新しい意味を帯びつつあります。
スマートフォン一つで世界のニュースを追える時代だからこそ、実際に現地を訪れ、手触りのある文化に触れることの価値はむしろ高まっています。天津で木版を刷ったカーンさんのように、旅先でローカルな体験に一歩踏み込むことが、国際ニュースを自分ごととして考えるきっかけになるかもしれません。
あなたなら、どんな一枚を刷ってみたいか
この記事のもとになったエピソードは、自分でも版画を作ってみたいと思わせるような素朴な問いを投げかけています。もしあなたが楊柳青木版年画の工房を訪ねるとしたら、どんな題材を選ぶでしょうか。
家族の幸せ、仕事の成功、旅の思い出など、そこに込める願いや物語は人それぞれです。一枚の紙にインクを重ねる行為は、自分のルーツやこれからの旅路を静かに見つめ直す時間にもなります。
国際会議のニュースを見るとき、天津でのこうした小さな出会いにも思いを馳せてみると、世界の動きが少し違って見えてくるかもしれません。
Reference(s):
Experiencing Tianjin's woodblock tradition with a friend from Pakistan
cgtn.com








