中国のAIプラス指針とは 2035年までの長期AI戦略を読み解く
中国がAIプラス指針を公表し、2027年、2030年、2035年に向けてAIを産業や社会に深く統合する長期ビジョンを示しました。本稿では、その狙いと国際的な意味を整理します。
中国のAIプラス指針とは
2025年現在、中国はArtificial Intelligence(AI)Plus initiative、いわゆるAIプラス構想の実施を一段と深めるための新たな指針を公表しました。AIを社会の隅々まで組み込むことで、新質生産力(技術やイノベーションを原動力とする新しい生産力)を育てることがねらいです。
指針では、AIを次の六つの重点分野に深く統合していく方針が示されています。
- 科学技術
- 産業発展
- 消費の高度化
- 人々の生活の質向上
- 公共ガバナンス(行政・都市運営など)
- グローバル協力
これらの分野でAIをプラスすることで、経済成長だけでなく、人々の生活や公共サービスの質も高めていく構想です。
三つの節目:2027年・2030年・2035年
2027年:知能端末の浸透率70パーセント超へ
まず中期目標として、2027年までにAIを社会に広く浸透させることが掲げられています。新世代のスマート端末やAIシステムの普及率を70パーセント超まで高めるとともに、次のような状態を目指します。
- 知能経済の中核産業の規模が急速に拡大する
- 公共ガバナンスにおけるAIの役割が大きく高まる
- AI分野でのオープンな協力体制が継続的に改善される
2030年:日常生活の9割でAIが活躍
2030年には、AIが中国の質の高い発展を全面的に支える段階に入ると想定されています。指針によると、知能アプリケーションの90パーセント以上が日常生活に組み込まれ、知能経済が経済成長の主要なエンジンとなることが目標です。
同時に、技術へのアクセスを広げ、AIの恩恵を社会全体で共有することも重視されています。格差を広げるのではなく、より多くの人がAIの成果を利用できる環境づくりが強調されています。
2035年:知能経済・社会の新たな段階へ
長期的なビジョンとして2035年には、AIが経済と社会の発展を支える基盤となり、知能化した経済・社会の新たな段階に入るとしています。AIは社会主義現代化の達成を強力に後押しする存在として位置づけられています。
八つの基盤能力をどう強化するか
これらの目標を実現するために、指針はAIを支える八つの基盤能力の強化を打ち出しています。
- 高度な性能を持つ基盤モデルの開発
- データ供給の革新と活用方法の高度化
- 計算資源(コンピューティングパワー)の管理と最適化
- アプリケーション開発環境の整備
- オープンソースのエコシステムを活性化する仕組みづくり
- AI人材チームの育成と確保
- AI活用に対応した制度・ルール(規制枠組み)の整備
- 安全性とセキュリティ対策の強化
技術そのものだけでなく、開発環境、人材、ルール、セキュリティまでをセットで整える総合戦略であることが分かります。
新質生産力と産業構造の転換
国家発展改革委員会のフオ・フーペン氏は、中国メディアの取材に対し、AIと産業の高度化を深く結びつけることで、伝統産業の転換と高度化を加速させられると指摘しています。また、戦略的新興産業や未来産業とされる分野の成長にも新たな道を開き、新質生産力を育てていく狙いがあると述べました。
複数の研究を踏まえた同氏の説明によれば、2030年までにAIは世界経済に100兆元を超える付加価値をもたらし、最も重要な成長ドライバーの一つになると見込まれています。AIの活用が進めば、科学研究や都市ガバナンスなどの分野でも質的な飛躍が期待できるとしています。
国際社会と日本にとっての意味
今回のAIプラス指針は、経済成長だけでなく、人々の生活や公共サービス、国際協力までを視野に入れた長期戦略です。特に、グローバル協力を重点分野の一つに位置づけている点は、AI技術やルールづくりをめぐる国際対話を重視していることを示しています。
世界各国でAI政策や規制の議論が進むなか、中国が2035年までの具体的なタイムラインと数値目標を示したことは、国際的な議論にも影響を与えそうです。他の国や地域にとっても、自国のAI戦略や産業政策を見直す際の重要な参照点となる可能性があります。
日本の読者にとっては、この動きを隣国のニュースとして見るだけでなく、自国のAI活用やデジタル政策をどう位置づけるかを考える材料にもなります。AIをどの分野で優先的に活用し、どのように人材、ルール、安全性を整えていくのか。中国のAIプラス指針は、そうした問いを静かに投げかけています。
Reference(s):
China issues guideline to deepen AI Plus integration across sectors
cgtn.com








