北京がCIFTISで示したAI+インフラ戦略 デジタル経済を支える次の一手
2025年に北京で開かれた中国国際サービス貿易交易会(CIFTIS)で、北京市はデジタルインフラとAI(人工知能)への大規模な投資計画を打ち出しました。5Gや次世代ネットワーク、「AI+」アクションプランを柱に、世界的なテクノロジー拠点としての地位を一段と固める狙いです。
発表を行ったのは、北京市通信管理局の高官であるSun Lixin氏です。Sun氏は、ネットワーク基盤の拡充、新産業の育成、「AI+」による産業への実装という三つの方針を示し、北京をデジタル経済の中核都市へと押し上げるロードマップを説明しました。
北京、AI時代のインフラ投資を加速
中国の首都である北京は、これまでもインターネット企業やスタートアップ、大学・研究機関が集まるテック都市として存在感を高めてきました。今回のCIFTISで示された構想は、その流れをさらに加速させるものです。
ポイントは、AIに最適化した通信ネットワークとコンピューティング(計算)資源を一体的に整備し、その上に産業やサービスを乗せていくという発想です。単なるインフラ整備ではなく、「AIを前提にした都市づくり」に踏み込んでいるところが特徴といえます。
三つの柱で進む「AI+」都市戦略
1. 5G・ギガビット回線・10ギガネットワークの拡充
まず基盤となるのが通信インフラの高度化です。北京市は、5Gやギガビット光回線の普及を引き続き進めるとともに、新たに10ギガビットクラスの超高速ネットワークの試験導入を進める方針です。
同時に、AI向けのコンピューティングセンターを戦略的に配置し、AI計算専用の処理能力を増強します。生成AIや大規模言語モデルなど、膨大なデータと計算を必要とする分野では、通信と計算能力の両方を一体で整えることが競争力の源泉になります。
2. 産業ガバナンスの「モダナイズ」
二つ目の柱は、産業のルールづくりや行政の仕組みをアップデートし、AIなどの新興産業を育成することです。北京市当局は、AI産業をはじめとする新しい分野を重点的に支援し、情報技術(IT)分野での優位性を一層高める考えを示しました。
具体的には、デジタル産業向けの制度整備や、スタートアップを含む企業支援、人材育成などが想定されます。急速に進化するテクノロジーに合わせてガバナンスを現代化できるかどうかは、都市の競争力を左右する重要なポイントになります。
3. 「AI+」アクションプランで産業に浸透
三つ目の柱が、「AI+」アクションプランです。これは、製造業をはじめとするさまざまな産業分野にAIを深く組み込み、業務プロセスそのものを変えていく試みです。
製造現場では、設備の故障予知や品質管理の自動化、需要予測に基づく生産計画の最適化など、AIの活用範囲が広がると考えられます。Sun氏は、産業用インターネット技術と、大規模AIモデルのような最先端技術を組み合わせることで、企業のコスト削減と効率向上を後押しする方針を示しました。
国家プロジェクト「東数西算」との連動
今回の発表は、中国全体で進む「東数西算」プロジェクトとも密接に関わっています。「東数西算」は2022年に始まった国家的な取り組みで、人口や産業が集中し電力需要も高い東部地域から、エネルギー資源が豊富な西部地域へとデータ処理をシフトさせる計画です。
政府はこれまでに、八つの国家級コンピューティング拠点と十のデータセンター集群を設置し、エネルギー効率の高い全国的なコンピューティングネットワークづくりを進めているとされています。東部と西部の「デジタル格差」を縮小しつつ、再生可能エネルギーを活用した持続可能なデジタル経済をめざす構図です。
その中で北京は、高度な通信インフラとAI応用産業を集積するフロントエンドの役割を担い、西部に整備されたコンピューティング拠点を活用しながらサービスや産業を展開していくことが想定されます。
日本と世界への意味合い
こうした北京の動きは、AIとデジタルインフラをめぐる国際的な競争が、ソフトウェアやアルゴリズムの開発だけでなく、都市インフラやエネルギー政策まで含めた総合戦略の段階に入っていることを示しています。
日本を含む各国・地域にとっても、次のような観点で注目すべき動きと言えます。
- AI向けコンピューティングセンターと通信網をどのように組み合わせ、国内外の企業利用に開いていくのか
- 製造業やサービス産業で、「AI+」型の業務変革がどの程度進み、どのような成果を上げるのか
- データセンターの立地や電力利用を、再生可能エネルギーや地域格差是正とどう結びつけるのか
今後、日本企業や研究機関が北京や中国のデジタル経済とどのように連携していくかを考えるうえでも、今回のCIFTISで示された方向性は、一つの重要な参考材料となりそうです。
これからの注目ポイント
2025年末にかけて、北京市のデジタルインフラとAI政策は具体的な実装段階に入っていくとみられます。今後、次のような点に注目すると、動きの全体像を追いやすくなります。
- 10ギガビットネットワークの試験導入が、どのエリアや産業で先行的に展開されるか
- 「AI+」アクションプランの対象となる産業分野と、その成果指標がどのように設定されるか
- 中小企業を含む幅広い事業者が、AIや産業用インターネットを実際に活用しやすくなる仕組みが整うか
- 「東数西算」との連携が進むことで、エネルギー効率や運用コストにどの程度の効果が現れるか
AIとデジタルインフラの整備は、一度決めると簡単には変えられない長期の投資です。北京がCIFTISで示した構想は、都市レベルでAI時代の「土台」をどう設計するのかという問いに対する、一つの具体的な答えと言えるでしょう。
Reference(s):
CIFTIS: Beijing to advance digital infrastructure to power AI growth
cgtn.com








