国際ニュース:中国の李強首相がGDI演説 AIとグリーン投資で南北格差に挑む
中国の李強首相が2025年9月23日、ニューヨークで開かれたグローバル・デベロップメント・イニシアチブ(GDI)ハイレベル会合で演説し、AI協力やグリーン投資を通じて国連の持続可能な開発目標(SDGs)を加速させる具体策を示しました。本稿では、この国際ニュースのポイントを日本語で分かりやすく整理します。
9月の国連ハイレベル会合で何が起きたのか
李強首相は、2025年9月23日(現地時間)、ニューヨークで開かれたグローバル・デベロップメント・イニシアチブ(GDI)のハイレベル会合でスピーチを行いました。GDIは、2021年の国連総会で習近平国家主席が提唱した枠組みで、より多くの国や国際機関を巻き込みながら、共通の開発課題に取り組むことを目的としています。
李首相によれば、これまでに130を超える国・国際機関がGDIに参加し、「広く支持されたグローバルな公共財」になっていると位置付けられました。演説の狙いは、この枠組みをテコに、各国の開発政策をもう一段連携させることにあります。
開発最優先というメッセージ:分断より協力を
演説の冒頭で李首相は、「開発は人類社会にとって時代を超えたテーマだ」と強調しました。国連憲章にも、設立当初から「世界の発展を促進する」という役割が組み込まれているとし、この流れを引き継ぐものとしてGDIの意義を位置づけました。
同時に、現在の国際情勢に対する危機感もにじませています。李首相は、近年の一方主義(ユニラテラリズム)や保護主義の高まり、資源や市場をめぐる競争が強まる中で、「ゼロサム思考や分断・対立が広がれば、最終的に誰も得をしない」と警告しました。
そのうえで、「サプライチェーンの切断」や「陣営対立」といった動きを批判し、開かれた世界経済と多国間主義、自由貿易の維持を訴えています。
4つの柱で描くグローバル開発の方向性
李首相は、今後のグローバル開発の方向性として、次の4つの柱を示しました。
1. 安定し開かれた国際環境の構築
開発の前提は平和と安定であり、繁栄を支えるのは開放と協力だと位置づけました。多極化と経済のグローバル化という大きな流れは変えられないとして、国連を中心とする国際システムを守り、多国間主義と自由貿易を維持することが重要だと指摘しました。
「デカップリング(経済切り離し)」や「サプライチェーンの分断」は、世界経済を傷つけ、リスクを増すだけだというメッセージは、国際経済の不確実性が高まる今の状況を反映したものと言えます。
2. 北と南をつなぐ「バランスの取れたパートナーシップ」
次に焦点が当てられたのは、いわゆる南北問題です。ここ数年、北(先進国)と南(開発途上国)の格差が拡大している背景に、「権利・機会・ルールの不平等」があると指摘しました。
李首相は、特に一部の先進国が約束した開発資金を十分に拠出していないことや、国際開発機関への資金支援を削減していることに懸念を示し、「北と南が歩調を合わせること」「先進国が義務を果たすこと」の重要性を強調しました。
3. AIとデジタルが牽引する「未来志向の成長エンジン」
3つ目の柱は、技術革新をテコにした成長です。人工知能(AI)やビッグデータなどの急速な進展が、世界の開発を後押しする強力な原動力になりつつあると述べました。
一方で、技術の自由な流れを阻む「高い壁やバリア」への懸念も示し、科学技術分野での国際協力を強めること、デジタル格差やAI格差を縮めること、技術移転や知識共有を進めることを訴えました。
4. 気候危機に対応するグリーン・低炭素の転換
4つ目は、気候変動や環境悪化、資源の過剰消費など、地球規模の課題への対応です。気候や生態系には国境がなく、「地球というふるさとを共に守る必要がある」と述べ、開発モデル全体のグリーン転換を呼びかけました。
各国のグリーン戦略をそろえ、新エネルギー、省エネ、環境保護、資源の循環利用といった分野で産業協力を強めることで、「人と自然の調和」に支えられた持続可能な開発をめざすとしています。
中国が示した具体的なコミットメント
抽象的な方向性だけでなく、中国としての具体的な行動計画もいくつか提示されました。大きく分けて、「開発資金」「科学技術協力」「グリーン転換」の3つの軸があります。
1. 開発資金と生活に根ざしたプロジェクト
- 過去4年間で、GDIを通じて230億ドル超を動員し、グローバル・サウス(開発途上国を中心とする南の国々)で1800以上の協力プロジェクトを実施。
- 今後5年間で、開発途上国において2000件の「小さくても生活に密着した」プロジェクトを新たに実施。
- 世界保健機関(WHO)や関係国と連携し、保健・医療プロジェクトをさらに展開。
- 世界貿易機関(WTO)の「チャイナ・プログラム」に資金拠出を継続し、後発開発途上国の世界貿易システムへの統合を支援。
また、中国は「責任ある大きな開発途上国」として、現在および今後のWTO交渉で新たな特別かつ異なる待遇を求めないと明言しました。これは、自らを開発途上国と位置づけつつも、より多くの負担を引き受ける姿勢を打ち出した形です。
2. AIとデジタル分野の協力強化
- これまで、AI能力向上に向けた「AI能力構築アクションプラン」を進め、グローバル・サウスのデジタル・インテリジェンス能力向上を支援してきたと説明。
- 2025年7月には「世界人工知能協力機構」の設立を提案。
- 今回新たに「AIプラス国際協力イニシアチブ」を提案し、各国の参加を歓迎すると表明。
- 今後5年間で、グローバル開発キャピタル・プールの枠内にデジタル能力構築専用の資金を設け、GDIの下で進められている「デジタル・サウス」構想を支援。
- 「持続可能な開発衛星国際連合」を立ち上げ、衛星観測データを通じてグローバルな開発プロジェクトを後押しする構想も打ち出しました。
AIや衛星データを含むデジタル技術を、単なる産業競争ではなく「共有される開発のツール」として位置づけようとする意図が読み取れます。
3. グリーンエネルギーと気候対応での役割
- 中国は世界最大規模で、かつ産業チェーンが最も整った新エネルギー産業を構築しており、この10年間で風力と太陽光の発電コストをそれぞれ6割以上、8割以上低下させることに貢献してきたと説明。
- これまでに100を超える国・地域とグリーンエネルギー分野で協力プロジェクトを実施。
- 今後も高品質な新エネルギー製品を安定的に供給することで、「世界のグリーンギャップ(環境整備の遅れ)」を埋えるのに貢献すると表明。
- 今後5年間で、小島しょ国などの持続可能な発展能力を高めるため、200件の海洋開発協力プロジェクトを展開。
- さらに、開発途上国でクリーンな調理器具などの普及をめざす「クリーンかまどプロジェクト」を実施し、クリーンで美しい世界づくりに貢献するとしました。
気候変動や海洋、エネルギー利用といったテーマをつなぎ合わせ、「グリーン開発」を包括的なパッケージとして提示しているのが特徴です。
GDIと国連2030アジェンダ:残り5年という時間軸
演説の締めくくりで李首相は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を掲げた2030アジェンダの実現まで、残り5年となったことを強調しました。実行の最終コーナーに差し掛かった今こそ、協力を深める必要があるというメッセージです。
GDIを共通のプラットフォームとして、各国との開発協力を「質・量ともに」深めることで、「より良く、より豊かな世界」を共に築くと呼びかけました。
このニュースから考えたい3つの視点
今回のGDIハイレベル会合での演説は、次のような点で注目できます。
- 開発最優先の再確認:地政学的な緊張が高まる中でも、「対立より協力」「分断より開放」を掲げ、開発を国際議論の中心に据え直そうとしていること。
- AI・デジタル・衛星など新技術の活用:新しい技術を利用して、デジタル格差やAI格差を縮めるという問題意識が前面に出ていること。
- グリーン開発と海洋・小島しょ国への配慮:気候変動の影響を受けやすい国々への支援や、グリーン産業を通じたコスト低下への貢献が強調されていること。
2030年までの残り5年、中国を含む各国がこうした約束やイニシアチブをどこまで実行に移し、人々の日常生活の改善につなげていけるかが大きな焦点になります。国際ニュースを追ううえで、GDIやSDGsをめぐる動きは、今後も注視していきたいテーマと言えます。
Reference(s):
Full text: Li Qiang addresses meeting on Global Development Initiative
cgtn.com








