中国の次期五カ年計画案 高品質成長と平均寿命80歳へ【国際ニュース】 video poster
中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議で、第15次五カ年計画(2026〜2030年)の「勧告」が採択されました。中国経済と社会はこれからどこへ向かうのか、日本語でポイントを整理します。
第20期中央委第4回全体会議で何が決まったのか
北京で開かれた会議とその後の記者会見では、中国共産党中央委員会政策研究室の江金権氏らが、第15次五カ年計画のたたき台となる「勧告」の内容を説明しました。
中国共産党第20期中央委員会は、2035年までに「社会主義現代化を基本的に実現する」ことを長期目標に掲げています。2026〜2030年の第15次五カ年計画期間は、その目標に向けて土台を固め、各分野で前進を図る「重要なステージ」と位置づけられています。
「勧告」は3部構成・15章61項目
江氏によると、今回採択された「勧告」は全体で15章・61項目からなり、大きく3つのパートに分かれています。
- 第1部:第14次五カ年計画期間中の成果と、今後数年間の発展の意義・全体方針
- 第2部:重点分野ごとの戦略的課題と主要な取り組み
- 第3部:中国共産党中央の集中・統一指導を強化しつつ、社会主義民主政治と法治の発展を図る方針
出席者からは、「目標が明確で、実務的な措置が盛り込まれた歴史的な文書」であり、中国式現代化を進めるための「動員令」としての性格を持つとの評価が示されました。
高品質な成長と安定した経済基盤
中央財経委員会弁公室の韓文秀氏は、第15次五カ年計画期間に掲げる主要目標として、次のような方向性を挙げました。
- 高品質な経済発展で顕著な成果を上げる
- 科学技術の自立自強を一段と高める
- 改革のさらなる深化で新たな突破口を開く
- 社会全体で文化・倫理面の進歩を実現する
- 国民生活の質を一層向上させる
- 「美しい中国」構想の推進で新たな前進を遂げる
- 国家安全保障の体制を強化する
韓氏は、中国経済について「安定した基盤、多様な優位性、強いレジリエンス、大きな潜在力を備えており、長期的に健全な成長を支える条件とトレンドは変わっていない」と強調しました。その一方で、戦略的なチャンスとリスク・課題が同時に存在し、不確実性が増しているとの認識も示しています。
こうした状況のもとで、中国は「中国の特色ある社会主義制度の優位性」と「超大規模市場と完備した産業体系の優位性」を十分に生かし、高品質な発展の実効性に結びつけることを重視しています。
国内需要の拡大と統一市場づくり
国家発展改革委員会の鄭栄権氏は、今後5年間で国内経済の土台を強化し、内需を拡大するとともに、統一された全国市場を構築する方針を示しました。
鄭氏は、「主要な経済大国はいずれも内需が成長の原動力となっており、市場は世界で最も希少な資源だ」と述べ、強力な国内市場の構築が2035年までの現代化目標に戦略的な意味を持つと説明しました。
「勧告」では、次のような方向性が示されています。
- 消費を喚起し、サービス消費の拡大を促す
- モノの市場の高度化・高付加価値化を進める
- 政府資金を民生(人々の暮らし)分野の重点領域に振り向け、生活関連分野への投資比率を高める
統一市場づくりに関しては、中国がすでに市場参入に関する「ネガティブリスト(制限分野の一覧)」を整理し、2025年には21業種で制限分野を328から106に減らしたことが紹介されました。第15次五カ年計画期間中には、基盤となる制度やルールを全国で統一し、地方保護主義や市場の分断を是正する方針です。
そのために、地方政府の経済行為のルール化・標準化、市場監督と法執行の強化、そして「過度な競争」への対応などが盛り込まれています。
科学技術と未来産業で成長を牽引
中国は今後10年で、より多くのハイテク産業を育成し、新たな成長エンジンとする方針です。鄭氏は「実体経済の基盤を強化したうえで、次の4点に重点を置く」と説明しました。
- 従来型産業の高度化と競争力の底上げ
- 新興産業・未来産業の育成
- 製品・サービスの品質向上
- インフラの近代化の完了
「勧告」では、新エネルギー、新素材、航空・宇宙、低空経済といった分野で、戦略的新興産業と産業クラスター(産業集積)を形成する構想が示されています。これらは数兆元規模の巨大市場に成長することが見込まれています。
また、量子技術、バイオマニュファクチャリング、水素エネルギーや核融合エネルギー、ブレイン・コンピュータ・インターフェース、身体性を備えた知能ロボットなどを指す「エンボディード・インテリジェンス」、6G移動通信といった、離陸寸前の未来産業にも重点が置かれます。
科学技術部の尹賀軍氏は、国家レベルの科学技術計画を一連のプロジェクトとして実施し、集積回路(半導体)、工作機械の基幹装置、高性能計測機器などの「カギとなる中核技術」で決定的な突破を図ると述べました。
そのために、基礎研究の戦略的・長期的な計画を強化し、安定した資金支援のもとで、独創的な研究成果を生み出すことが重視されます。
開放拡大とハイスタンダードな経済連携
商務部の王文涛氏は、今後5年間、中国が積極的に対外開放を拡大していく考えを示しました。国際的な高水準の経済・貿易ルールへの整合を図り、とくにサービス分野で市場アクセスと開放範囲を広げる方針です。
同時に、地域・二国間の貿易投資協定を加速し、高水準の自由貿易区ネットワークを拡充することも打ち出されました。貨物貿易では市場の多角化を進め、越境サービス貿易ではネガティブリスト方式の管理を改善し、デジタル貿易の開放も段階的に進めるとしています。
投資面では、外国からの投資に関する管理の実効性を高めるとともに、海外で活動する企業に対するサービス体制を整え、生産・供給網の国境をまたぐ配置を「合理的かつ秩序立てて」進める方針が示されました。
「一帯一路」協力については、参加国の戦略と自国の計画をさらに連携させ、象徴的な大型プロジェクトと、地域の暮らしに密着した「小さくて質の高い」民生プロジェクトの双方を推進する構想が語られました。貿易・投資・産業・文化の実務協力を深め、グリーン開発、デジタル技術、人工知能などの分野でも協力を拡大するとしています。
平均寿命80歳へ 人口・社会政策の重点
国家衛生健康委員会の雷海潮氏は、2026〜2030年の5年間で、中国の平均寿命をおおむね80歳まで引き上げる目標を明らかにしました。
人口の「高品質な発展」に向けて、重点は次の3点に置かれます。
- 子どもを産み育てやすい社会環境の整備
- 高齢者ケアの充実
- 高齢期を前向きに生きる「アクティブ・エイジング」の促進
具体的には、結婚や出産に対する前向きな価値観を広げつつ、政府による支援・優遇策を充実させ、保育補助金や個人所得税控除など複数の手段を組み合わせて負担を軽減する考えです。
また、高齢者ケア産業の一体的な発展を促す政策メカニズムを整え、基礎的な介護サービスの供給を最適化するとともに、医療と介護を一体的に提供する仕組みを育成していきます。
定年年齢の段階的な引き上げを「安定的かつ秩序だった形」で進め、雇用や社会保障の分野での年齢制限を見直しつつ、「シルバー経済」(高齢者関連市場)の発展を図ることも盛り込まれました。
公衆衛生や人口サービスについては、高齢者、女性、子どもを優先しながら、予防、健康増進、治療、リハビリを通じて、全世代を対象とした切れ目のないサービス体制を整備する方針です。こうした取り組みを通じて、「中国式現代化」を支える健康面・人口面の土台を強化するとしています。
2026年からの5年間をどう捉えるか
2025年末の今、中国は第15次五カ年計画の本格スタートを目前に控えています。今回の「勧告」は、高品質成長、技術自立、国内市場の統合、対外開放の拡大、人口・健康政策の強化といった幅広いテーマを一つの枠組みに収めたものといえます。
中国の経済運営や制度改革の方向性は、アジアや世界のサプライチェーン、貿易・投資の流れにも影響を与えます。日本を含む周辺国・地域にとっても、今後の具体的な政策や制度変更の動向を丁寧にフォローし、自らの戦略やビジネスにどう取り込むかを考えることが重要になりそうです。
Reference(s):
Officials: CPC blueprint charts course for China's next five years
cgtn.com








