中国の高齢化社会をどう見るか 北京大学・胡泳教授が語る「老い」の可能性 video poster
急速に高齢化が進む中国で、「身の回りの高齢者を本当に見る」ことを呼びかける声が上がっています。北京大学新聞与伝播学院の胡泳教授は、高齢者を「弱い存在」としてだけではなく、創造性と可能性を持つ人々として捉え直す必要があると訴えています。
「身の回りの高齢者」を本当に見るとは
胡教授は「私たちは身の回りの高齢者を、もっときちんと見つめるべきだ」と語ります。多くの場合、高齢者は通りすがりの風景の一部のように存在していて、その人がどんな人生を歩み、何を考えているのかに目が向きにくいからです。
胡教授は、両親の介護を通じた自身の経験を振り返りながら、日常生活の中で高齢者がどれほど見過ごされているかを指摘します。そのうえで、高齢者に対してこそ、本当の意味での注意と理解、思いやりを向けるべきだと強調します。
平均寿命79歳 数字が示す中国の高齢化
中国国家衛生健康委員会によるデータによれば、中国の平均寿命は2024年末までに79歳に達し、2020年から1.1歳伸びました。寿命が延びるということは、高齢者として過ごす時間が長くなることを意味します。
ただ、その時間を「衰退の期間」とみなすのか、「新しい挑戦と成長の時間」とみなすのかによって、社会の姿は大きく変わります。胡教授は、後者の視点を選ぶべきだと訴えています。
老いは「到達点」になりうる 『Yang Lao Ren Sheng』の視点
胡教授が引用したのは、北京大学中文系の元教授であるQian Liqun氏の著書『Yang Lao Ren Sheng(A Life in Old Age)』です。この本の中で、Qian氏は「人は高齢期にもなお人生の新たな高みへ到達できる。その創造的思考の可能性は、決して過小評価してはならない」と述べています。
このメッセージは、高齢者を一律に「守られるべき人」「支えられる側」とみなす固定観念に疑問を投げかけます。長い経験に基づく洞察や、時間的な余裕を生かした創作活動、地域や家族への新しい関わり方など、高齢期だからこそ開ける可能性に光を当てているからです。
PAGE Xがひらく「本を通じた対話」
胡教授のこうした考えは、国際ニュースチャンネルCGTNの番組PAGE Xで語られました。PAGE Xは、さまざまな分野のゲストが、お気に入りの一冊から一つのフレーズや一節を選び、その読み解きを通じて視聴者と思想や経験を共有する企画です。
オンラインで知的な著作に触れる入り口をつくることで、読書の魅力を再発見してもらうことを目指しており、今回のテーマである高齢化や老いの問題も、その文脈の中で語られました。単なる人口統計としての「高齢化」ではなく、一人ひとりの人生の物語として老いを捉える視点が、番組を通じて提示されています。
私たちにできる「見え方」のアップデート
では、ニュースを読む私たち一人ひとりは、身の回りの高齢者をどう「見直す」ことができるのでしょうか。胡教授のメッセージから導ける、小さな実践の例をいくつか挙げてみます。
- 高齢の家族や近所の人の話を、途中で遮らず最後まで聞いてみる
- 「助けるべき存在」と決めつけず、意見や経験を積極的に尋ねてみる
- 地域活動やオンラインコミュニティで、高齢者が参加しやすい場を意識的につくる
- 仕事や学びの場で、高齢者の知識や技能を生かせる役割をイメージしてみる
こうした小さな変化の積み重ねが、「高齢者=弱い存在」という一方向のイメージを超え、年齢にかかわらず人が尊重され、可能性を発揮できる社会につながっていきます。
老いをめぐる議論を、アジアから考える
中国の高齢化は、日本を含むアジア各国とも共通するテーマです。北京大学の胡泳教授やQian Liqun氏の議論は、中国社会にとどまらず、「老い」をどう受け止めるかを私たち自身に問いかけています。
高齢化を不安や負担としてだけではなく、新しい学びと創造の時間として捉え直すこと。そのために、まずは身の回りの高齢者を「本当に見る」ことから始める。今回の議論は、そんなシンプルだが深い一歩を、静かに促しているように見えます。
Reference(s):
cgtn.com








