AI時代の貴金属が支える未来技術と脱炭素 テンチョン科学者フォーラム2025 video poster
AIや次世代半導体、水素エネルギーなどの最先端分野を支える素材として、貴金属の重要性が一段と高まっています。中国南西部・雲南省で今月5〜7日に開かれた2025 Tengchong Scientists Forumでは、貴金属が未来技術とグリーンイノベーションの中核にあることが改めて浮き彫りになりました。
テンチョン科学者フォーラム2025で語られた貴金属の役割
2025年のTengchong Scientists Forumは、12月5〜7日に中国南西部の雲南省で開催され、Science and AI Changing the World をテーマに、科学技術とAIの未来について議論が交わされました。この3日間のイベントは、科学技術イノベーション分野での国際的な協力と交流をいっそう深めることを目指しています。
Sino-Platinum Metals Co., Ltd. の王建強(Wang Jianqiang)会長は、CGTNのインタビューに対し、AI、次世代半導体、水素エネルギー、核融合といった急速に発展する分野が、高度な貴金属材料への需要を押し上げていると指摘しました。
AI・次世代半導体・水素エネルギーが需要を押し上げる
王氏によれば、AIを活用した研究開発が、貴金属材料の世界にも大きな変化をもたらしています。AIによるシミュレーションやデータ解析により、開発サイクルは短くなり、コストは下がりつつあり、その結果として新しい材料や技術が次々と生まれつつあります。
具体的には、次のような分野で進歩が加速しているといいます。
- より高性能な触媒技術の開発
- 次世代半導体のチップパッケージ材料
- 将来のエネルギーシステムを支える重要部品
AIが研究のスピードと精度を引き上げることで、貴金属材料そのものの設計や最適化も、これまでより短い時間で進められるようになりつつあります。貴金属は国際ニュースでも注目されるAIや半導体分野の裏側で、静かに存在感を高めています。
グリーン・低炭素社会を支える縁の下の力持ち
王氏は、貴金属がグリーンかつ低炭素な社会づくりに果たす役割にも光を当てました。自動車の排ガス浄化装置から、水素の製造、燃料電池まで、貴金属は環境技術のさまざまな場面で使われています。
例えば、自動車の排ガス浄化装置では、貴金属が触媒として働き、有害物質を減らします。また、水素エネルギー分野では、水を分解して水素を取り出す電解装置や、燃料電池の発電反応の効率を高める材料として、貴金属が欠かせません。
使用量自体はごくわずかでも、貴金属はエネルギー効率の向上や排出削減を支える、まさに縁の下の力持ちだといえます。
採掘からリサイクルへ デュアルカーボン目標の鍵
さらに王氏は、貴金属リサイクルの重要性も強調しました。採掘によって新たに資源を取り出す場合と比べると、リサイクルによる再利用は二酸化炭素排出を大幅に抑えられると指摘し、これはデュアルカーボン目標に向けた重要なルートだと述べました。
デュアルカーボン目標とは、温室効果ガスの排出削減とカーボンニュートラルの実現という、二つのカーボン関連目標を同時に追求する考え方です。この観点から見ると、使用済みの触媒や電子機器などに含まれる貴金属を回収し、再び資源として循環させることは、気候変動対策と資源保全の両面で意味を持ちます。
環境負荷の大きい採掘に依存するのではなく、都市鉱山とも呼ばれる既存製品の中から価値ある貴金属を取り出すことが、低炭素社会への近道になり得るという視点です。
日本やアジアの産業にとっての示唆
今回の議論は、日本を含むアジアの産業にとっても他人事ではありません。AI、半導体、水素エネルギーといった分野は、日本企業も注力している成長領域であり、その基盤となる貴金属材料の安定確保と高度利用は、今後の競争力を左右するテーマになりそうです。
王氏の指摘からは、次のような論点が浮かび上がります。
- 素材戦略として、貴金属の供給とリサイクルをどう位置付けるか
- AIを活用した材料研究開発をどこまで加速できるか
- グリーン技術で国際協力を深め、共通のルールや標準づくりにどう関わるか
貴金属は、表舞台に立つ完成品からは見えにくい存在ですが、その設計思想や調達方針をめぐっては、企業や各国の戦略が色濃く反映されます。
AIが変える科学と素材イノベーションの行方
Science and AI Changing the World を掲げた今回のフォーラムは、AIが科学そのものの進め方を変えつつあることを示しました。貴金属材料の開発やリサイクルも、その例外ではありません。
AIによる探索と評価、貴金属による高効率なエネルギー変換、そしてリサイクルによる排出削減。これらをどのように組み合わせ、社会全体の仕組みとして実装していくのか。テンチョンでの議論は、読者一人ひとりに、未来のエネルギーと素材のあり方を静かに問いかけています。
Reference(s):
Precious metals at the heart of future tech, green innovation
cgtn.com








