中国第15次五カ年計画と草原保護 「山・水・森林・農地・草原・砂漠」を一体で守る
中国で2026〜2030年を対象とする第15次五カ年計画の勧告が公表され、草原の保護・修復が「生態文明」と「高品質な発展」の要として位置づけられつつあります。本記事では、その中核にある草原保護政策を、日本語で分かりやすく整理します。
第15次五カ年計画と生態文明の「新段階」
今回の第15次五カ年計画(2026〜2030年)の勧告では、中国の生態文明づくりが「体系的な高度化」と「質の高い発展」の新しい段階に入るとされています。これは、中国の高品質な経済・社会発展の内在的な要請であると同時に、地球規模の生態文明づくりに積極的に参加し、貢献していくという姿勢の表れでもあります。
なかでも草原は、森林や湿地ほど目立たない存在でありながら、国土の広い面積を占める重要な生態系です。第15次五カ年計画の議論では、今後5年間で草原の生態保護と修復を進め、レジリエンスが高く、生物多様性に富んだ生態系を構築していく道筋が重視されています。
キーワードは「山・水・森林・農地・草原・砂漠」の一体保全
第15次五カ年計画の勧告で最初に強調されているのが、「山、水、森林、農地、草原、砂漠の一体的保全と体系的な修復」という原則です。草原だけを切り出して議論するのではなく、国土全体の空間構造の中で位置づけ直そうという発想です。
それぞれの要素は、互いに密接に結びついています。
- 山:水源と土砂の供給源であり、草原の水分や土壌環境を左右する。
- 水:河川や湖沼の水量・水質は、草原植生や家畜放牧に直結する。
- 森林:森林帯と草原帯の境界管理は、生物多様性の確保や火災リスクの低減につながる。
- 農地:農耕地とのバランス次第で、過放牧や土地の過度な転換を防ぐことができる。
- 草原:土壌を守り、炭素を蓄え、多様な生物を支える基盤的な生態系である。
- 砂漠:砂漠化の進行を食い止める緩衝帯として、草原の健全性が鍵となる。
こうした要素をまとめて見ていくことで、「どこを守り、どこを修復し、どこで人間の活動をどの程度認めるのか」という国土全体の空間設計がしやすくなります。勧告が掲げる「一体的保全と体系的な修復」は、個々の事業ではなく、国土スケールでの生態系マネジメントを指向する考え方だと言えます。
草原政策は「点」から「面」、そして「空間」へ
勧告によると、草原については「草原だけを見る」従来の発想から脱却し、より広い国土空間の枠組みの中で未来像を描いていくことが求められています。これは、限定された草地の保護にとどまらず、流域や地域全体の土地利用と連動させるアプローチです。
勧告の原則を草原に当てはめると、例えば次のような方向性が考えられます。
- 流域単位で、山地・河川・草原・農地をまとめて管理する。
- 草原と砂漠の「境界ゾーン」を重点的に修復し、砂漠化の拡大を抑える。
- 家畜放牧、農業、生態保全のあいだで土地利用の配分を見直す。
- インフラ整備や都市化が草原生態系に与える影響を、国土レベルで評価する。
こうした方向性はいずれも、第15次五カ年計画の勧告が示す「体系的な修復」というキーワードと合致しています。草原政策は、個々のプロジェクトという「点」から、地域全体の「面」、さらに国土空間という「立体」へと視野を広げていくことが期待されています。
レジリエンスと生物多様性を高める草原づくり
草原保護・修復の最終的な目標として、第15次五カ年計画では「レジリエンスが高く、生物多様性に富んだ生態系」を築く道筋が重視されています。レジリエンスとは、干ばつや寒波といったショックを受けても、システム全体として回復し続けられる力を指します。
そのイメージをもう少し具体的にすると、次のような姿が浮かび上がります。
- 干ばつや極端な気象が起きても、植生が時間をかけて回復できる。
- 単一の草種だけでなく、多様な植物・昆虫・土壌生物が共存している。
- 牧畜や観光など人間活動とのバランスが取れ、長期的に利用可能である。
草原は温室効果ガスの吸収源であると同時に、砂漠化や土壌流出を防ぐ役割も果たしています。その保護と修復が進めば、中国国内にとどまらず、地球全体の気候や生態系にもプラスの影響が期待されます。
グローバルな「生態文明」づくりへの貢献
第15次五カ年計画の生態文明戦略は、中国の高品質な発展の内在的な要請であると同時に、「地球規模の生態文明づくりにおける重要な参加者・貢献者であり続ける」という意思の表れでもあるとされています。草原保護は、その象徴的な分野の一つです。
日本を含む国際社会にとっても、草原や森林などの生態系をどう守りながら発展を図るかは共通の課題です。中国が第15次五カ年計画のもとで草原の生態保護と修復をどのように進めていくのかは、アジアや世界の環境ガバナンスを考えるうえで、重要な参照点になりえます。
2026〜2030年に向けて、何に注目すべきか
現在、公表された勧告を受けて、具体的な政策設計や実施計画づくりが各分野で進められています。2026年から始まる計画期間に向け、今後は次のような点が注目されます。
- 草原保護・修復に関する具体的な数値目標や評価指標がどのように設定されるか。
- 山、水、森林、農地、草原、砂漠を一体的に扱う試行プロジェクトが、どの地域でどのような形で展開されるか。
- 科学技術やモニタリング手法が、草原の状態把握と政策決定にどう活用されるか。
草原という、一見地味に見える生態系を軸に国土全体を捉え直そうとする動きは、中国の第15次五カ年計画を理解するうえで欠かせない視点です。今後も、草原保護をめぐる政策の進展と、その国際的な意味合いを丁寧に追っていくことが求められています。
Reference(s):
Grassland protection and restoration in the 15th Five-Year Plan
cgtn.com








