中国本土の電力10.4兆kWh、規模とグリーン転換がAI時代を押し上げる
2025年の中国本土の総電力消費量が10.4兆kWhに達し、単一の国として初めて「10兆kWh超え」を記録しました。電力の“量”だけでなく、AIと先端製造、そしてクリーン電力の拡大が同時進行している点が、いま注目を集めています。
何が起きた?──2025年の電力消費が「10.4兆kWh」に
国家能源局(NEA)が今月(2026年1月)17日に公表したデータによると、中国本土の2025年の総電力消費量は10.4兆kWhでした。NEAは、これは世界的にも新記録であり、米国の2倍超、欧州連合(EU)・ロシア・インド・日本の合計も上回る規模だとしています。
「AIは電力がボトルネック」──ダボスで語られた問題意識
AIの急拡大は、半導体製造やデータセンターの稼働を通じて電力需要を押し上げます。今月22日、世界経済フォーラム(ダボス会議)での対話のなかで、テスラCEOのイーロン・マスク氏は、世界のAI産業が電力供給の制約に直面しうると述べました。
マスク氏は「(いずれ)“電源を入れられないほど”チップが生産されるかもしれない。ただし中国を除く。中国の電力の伸びは非常に大きい」という趣旨の発言をしています。ここで示されたのは、AI競争が“計算資源”だけでなく“エネルギー資源”にも左右されるという現実です。
電力需要を押し上げているのは「新しい産業構造」
NEAの数字が示すのは、景気の熱量というより、産業の重心が変わっていることです。中国本土では、先端製造、AI、グリーン開発が重なり合い、電力の使われ方が再編されています。
事例1:半導体・新素材の設備投資が「工場の電力」を押し上げる
中国メディアの報道では、浙江省杭州市の新素材企業が2025年に2,500万kWh超の電力を消費しました。高純度の半導体関連設備や、新型エネルギー貯蔵(蓄電)向けの電極生産ラインの増設が背景にあり、半導体・AI材料分野の需要拡大が受注を支えたとされます。
事例2:AIがサービス業の電力需要も変える
同じ浙江省では、スマート高齢者ケアの事業者が2025年の電力使用量を前年比25%増と報告しました。大規模モデル(大規模AI)の学習や新製品テストが、サービス分野でも電力を必要とする局面を増やしていることがうかがえます。
事例3:交通の電動化で「充電」が大きな需要に
広東省では、省電力網が運営する充電ステーションの2025年の充電量が約8億kWhに達しました。増加は6年連続とされ、電動化が継続的に電力需要を形成していることが分かります。
同時に進む「グリーン電力」の拡大──3285億kWhの取引へ
電力需要の増加を支えるもう一つの柱が、クリーン電力の拡大です。NEAによると、2025年のグリーン電力取引量は3285億kWhで、前年比38.3%増、2022年比で18倍に伸びました。企業側の低炭素電力への需要を満たしつつ、産業構造のグリーン化を後押ししていると位置づけられています。
なぜ重要?──「AIの伸び」と「電力の伸び」が結びつく時代へ
AIの競争は、モデルの性能だけでなく、次の要素にも影響されます。
- 電力の絶対量:データセンター、半導体工場、関連サプライチェーンを動かす基盤
- 電力の質(低炭素性):企業の脱炭素目標やサプライチェーン要件に直結
- 需要の中身:先端製造・サービス・交通が同時に電力を必要とする構造
今回の「10.4兆kWh」という記録は、規模の大きさそのもの以上に、AI時代の産業構造が“電力中心”に寄っていく流れを可視化した数字とも言えそうです。
これからの焦点:2026年に注目したい3つのポイント
- AI向け電力需要の増勢:学習・推論の拡大が、どのペースで電力を押し上げるか
- クリーン電力の供給拡大:需要増と同時に低炭素化を進められるか
- 地域・産業ごとの偏り:先端製造集積地や充電インフラの伸びが、需給・投資判断にどう反映されるか
電力は目立たないインフラですが、AI、製造、交通、脱炭素という複数のテーマを一本の線でつなぎます。2026年は、その結び目がさらに強くなる一年になりそうです。
Reference(s):
How China's power scale and green transition are fueling the AI era
cgtn.com








