新結晶ABFで158.9nmの真空紫外レーザー生成に成功、中国科学院が発表
真空紫外(VUV)レーザーを「小さく・効率よく」作るための材料開発が、大きく前進しました。中国科学院の中国科学院新疆理化技術研究所は2026年1月29日、アンモニウム・フルオロオキソボレート(ABF)結晶を開発し、波長158.9nmの真空紫外レーザーを直接得ることに初めて成功したと発表しました。成果は学術誌「Nature」に掲載されています。
何が新しい?──ABF結晶と「158.9nm」
今回の主役は、真空紫外域の光を作るための「非線形光学結晶」です。非線形光学結晶は、レーザーの波長を変換する“中核部品”で、性質次第で出力できる波長や変換効率が決まります。
研究チームはABF結晶を用い、周波数倍増(入射光の周波数を2倍にして波長を半分にする変換)によって、波長158.9nmの真空紫外レーザーを生成したとしています。
技術の要点:「複屈折位相整合」と大型結晶の成長
真空紫外の波長を狙って効率よく変換するには、材料の性質だけでなく、光が結晶内でうまく“かみ合う”条件作りが必要です。研究チームは、複屈折位相整合(結晶の屈折率の差を利用して変換条件を満たす手法)を活用したと説明しています。
加えて、実用化を見据える上で壁になりやすい
- 大きなサイズの結晶を育てる
- 結晶からデバイスとして加工する
といった要素技術の課題も乗り越え、センチメートルサイズの高品質単結晶を得たとしています。
背景:200nm未満をめぐる材料探索
真空紫外の200nm未満を「直接の周波数倍増」で出す材料は限られてきました。記事によれば、1990年代に陳創天氏ら中国の研究者が切り開いたフッ化ホウ酸系のKBBF結晶は、この分野で長く重要な位置を占め、200nm未満のレーザー出力を実用的に実現できる結晶として知られてきたといいます。
一方で応用が広がるほど、
- 真空紫外域での高い透過性
- 強い非線形応答(波長変換のしやすさ)
- 十分な複屈折
- 育成しやすさ(結晶成長の良さ)
を同時に満たす新材料の探索は、継続的な課題でした。研究チームはこの課題に対し、フッ素化を軸にした設計と性能を調整するメカニズムを提案し、ABFを代表例とする一連の結晶開発につなげたとしています。
なぜ注目される?──「全固体」真空紫外光源への道
研究チームは、今回の成果が小型で高効率な全固体(all-solid-state)の真空紫外レーザーにつながる重要な材料系になると位置づけています。真空紫外光源は、精密製造や先端的な科学研究の装置・計測などで、戦略的な役割が期待される領域です。
今後の焦点:安定成長、加工の洗練、応用探索
今後は、ABF結晶の成長をより安定させること、デバイス加工の精度向上、レーザー光源としての応用可能性の検討を進める方針だとしています。より短波長・高出力の全固体真空紫外光源の実現を目標に、精密製造や科学研究向け機器を支える技術基盤を強化していく考えです。
Reference(s):
cgtn.com








