中国本土の平均寿命79年へ:高齢化は「グレー津波」ではなく社会の成熟? video poster
中国本土の平均寿命が79年に達し、世界でも高い水準になったとされます。2026年2月現在、高齢化を「負担の増大」とだけ捉えるのではなく、社会の前進としてどう設計し直すかが、改めて注目されています。
平均寿命79年が映す「長く生きる社会」の現在地
CGTNの番組「Health Talk」のインタビューで、東南大学(中国本土)の健康と社会研究所所長・王洪曼(Wang Hongman)教授は、人口の高齢化を「グレー津波」として恐れるよりも、社会進歩のサインとして見る視点を提示しました。
長寿化は、単に高齢者が増えるという現象だけではなく、医療・公衆衛生・生活環境が積み上がった結果として現れます。言い換えれば「長く生きられること」自体が、社会の到達点を示す指標の一つになり得ます。
王教授が強調する「進歩としての高齢化」
王教授の主張の軸は、高齢化を危機のメタファーで語ることが、政策や社会の想像力を狭めかねない、という問題意識にあります。
- 高齢化=不可避の重荷、と決めつけない
- 長寿化で得られた時間を、社会参加や健康づくりにどう活かすか
- 「支えられる側/支える側」の二分法を和らげる
ここで鍵になるのが、近年よく使われる「アクティブエイジング(年を重ねても、健康と社会参加を保ち続ける考え方)」です。
なぜ寿命が延びたのか:経済、医療、そして健康意識
インタビューでは、長寿化を支えた要因として、経済成長、より良い医療、そして公衆衛生への意識の高まりが挙げられました。これらが重なり、寿命だけでなく「より健康に長く生きる」方向へ社会が動いてきた、という整理です。
ただし平均寿命が伸びるほど、「健康寿命(自立して生活できる期間)」の確保がより重要になります。長く生きられるからこそ、どの年齢層でも予防や生活習慣の改善が社会全体のテーマになっていきます。
アクティブエイジングは「高齢者向け政策」だけではない
アクティブエイジングは、医療や介護の話に閉じません。むしろ、働き方・学び直し・地域コミュニティ・都市設計など、暮らしの仕組み全体に関わります。
- 健康づくり:定期健診、慢性疾患の予防、運動・栄養・睡眠の土台づくり
- 社会参加:ボランティア、地域活動、家族内のケアの分かち合い
- 就労と学び:経験の活用、柔軟な雇用、リスキリング(学び直し)
「高齢者が増える」ことへの備えは、実は若い世代の生活安定や、働き手の健康管理ともつながっています。
これからの論点:寿命の“伸び”を社会の安心につなげるには
長寿化が進む社会では、前向きな評価と同時に、現実的な調整も避けられません。焦点になりやすいのは次のような領域です。
- 医療・介護の需要:量だけでなく、地域で支える仕組みや人材確保
- 費用負担の設計:家計・企業・公的制度のバランス
- 健康格差:地域や所得による「健康寿命の差」をどう縮めるか
「長寿=幸福」と自動的にはならないからこそ、制度と生活の接点(予防、居場所、移動、雇用)を丁寧に整えることが、次の競争力や安心感にも直結します。
“グレー津波”という言葉が残すもの、残さないもの
高齢化を危機として表す言葉は、問題の可視化には役立つ一方で、世代間の分断や、必要以上の不安を生みやすい面もあります。王教授の視点は、そうした言葉の力学から一歩離れ、「長寿化をどうデザインするか」という問いへ議論を戻す提案とも言えます。
平均寿命79年という数字は、到達点であると同時に、新しい社会運営のスタートラインでもあります。今後は、健康寿命の延伸や地域医療の整備など、具体策がどこまで暮らしの実感に届くかが注目されます。
Reference(s):
cgtn.com







