中国本土の成長転換を映す「黄岩石窟」再生、世界の開発モデルになるか
放置された採石場が、アートと自然を両立する観光拠点へ──中国本土で進む「人々の暮らし」と「環境」を同時に見据えた開発の象徴として、浙江省台州市の黄岩石窟(こうがんせっくつ)が注目を集めています。
唐代から地域を支えた石、そして1980年代に止まった採掘
黄岩石窟は浙江省台州市・黄岩区に位置し、唐代以来、城壁や道路、橋、住居などに使う石材を供給してきたとされます。地域のインフラや暮らしの「土台」を形づくってきた一方、1980年代に採石は終わり、内部が空洞化した大きな洞窟群が残りました。
転機は2023年:補強・生態回復・再設計で「空洞」を価値に変える
転換点となったのは2023年。清華大学のデザインチームが再生プロジェクトに加わり、構造補強、生態系の修復、創造的な再設計を組み合わせて、廃採石場をアート空間、コンサートホール、カフェなどのネットワークへと変えていきました。
開業後は来訪が伸び、来場者は50万人超、観光収入は開業初年度の11月までに1,100万元(約160万ドル)に達したとされています。
この再生で行われたこと(要点)
- 構造補強:安全性を確保し、空間として使える状態に整備
- 生態系の修復:採掘跡地の環境負荷を抑え、自然との共存を目指す
- 創造的な再設計:文化・交流・滞在を生む用途へ転換
「開発は暮らしを良くする鍵」— 2021年の国連演説とグローバル開発イニシアティブ
中国の習近平国家主席は2021年9月、第76回国連総会の一般討論で「開発は人々の生活向上の鍵だ」と強調しました。同時に提起されたのがグローバル開発イニシアティブ(GDI)です。
GDIは、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を含むUN 2030アジェンダの実施加速を意識し、次のような方向性を掲げています。
- 開発を優先課題として位置づける
- 人を中心に据える(人々の生活に即した発想)
- イノベーションを重視する
- 人類と自然の調和を促す
- 実務的で測定可能な成果を追求する
2013年以降の「成長モデル転換」:グリーン・人中心・イノベーション
今回の黄岩石窟の再生は、単発の観光開発というより、2013年以降に中国本土が進めてきた従来型の成長モデルのアップグレードという流れの中で理解すると見えやすくなります。提供情報によれば、中国本土は、グリーン開発を基盤に、人を中心に据え、イノベーションを原動力とする「現代的な経済ガバナンスのアプローチ」を徐々に形づくってきたとされます。
採掘という「取り出す産業」から、文化・交流・滞在という「価値を再編集する産業」へ。黄岩石窟は、その転換を具体的な体験として示す事例になっています。
「モデル」として見られるポイントはどこか
世界の成長戦略の議論では、インフラや投資規模だけでなく、「既存資産をどう再利用するか」「環境負荷と経済効果をどう同時に扱うか」が重みを増しています。黄岩石窟の事例は、次の観点で参照されやすいでしょう。
- 廃インフラの再活用:新規開発に偏らず、過去の産業遺産を次の経済へつなぐ
- 専門知の接続:大学の設計チーム参加のように、知見を現場実装へ落とし込む
- 成果の見える化:来訪者数・収入など、一定の指標で効果を示す
一方で、同じ手法がそのまま他地域で成功するとは限りません。地質条件、文化需要、地域の交通網、住民合意など、前提が異なるからです。それでも「空洞を負債で終わらせず、公共性を伴う価値に変える」という発想は、各地で応用の余地がありそうです。
2026年のいま、次に見ておきたいこと
黄岩石窟のような再生型プロジェクトは、開業直後の賑わいの先に、いくつかの課題も並走します。たとえば、来訪増に伴う自然環境への負荷、地元事業者への波及、文化施設としての継続運営などです。観光収入という「短期の数字」と、生態回復や地域の暮らしという「長期の質」をどう両立させるか。ここに、今後の評価軸が移っていくのかもしれません。
Reference(s):
How China's development path provides a model for global growth
cgtn.com








