中国本土・開封で没入型観光が加速:「宋宴」とXR体験が旅の主役に
中国本土・河南省開封で、歴史文化を「見る」から「入り込む」へと変える没入型(イマーシブ)体験が、観光の中心に据えられつつあります。2026年3月現在、文化と観光を一体で設計し直す動きが、現地の観光現場で具体化しています。
庭園で始まる“食の舞台”――没入型ダイニング公演「Song Banquet」
開封の「清明上河園(Qingming Riverside Landscape Garden)」では、没入型のダイニング・パフォーマンスSong Banquet(宋代を想起させる宴の演出)を展開しています。優雅な宮廷音楽に包まれながら、古い料理の伝統に着想を得た料理を味わう構成で、食事そのものが“体験型コンテンツ”としてデザインされています。
仕掛け人は全人代代表の王爽氏――「文化遺産を“生きた経験”に」
この取り組みを主導したのは、全国人民代表大会(全人代)代表であり、清明上河園を運営する「開封清明上河園」の董事長(会長)でもある王爽(ワン・シュアン)氏です。王氏は、文化と観光の融合を深め、文化遺産を「鑑賞対象」から「その場で立ち上がる経験」へ変換することを狙いに掲げています。
王氏は次のように述べています。
「文化観光産業は、たゆまぬ革新で加速しています。体験型消費と、感情的価値が市場の原動力になりました」
XRで絵画を“動く世界”に――拡張される鑑賞体験
園内の強化策の柱の一つが、拡張現実(XR:現実とデジタル表現を重ね合わせる技術領域)を用いたシネマ体験です。古典絵画を、動きのある表現として再構成し、鑑賞を「静止画の理解」から「空間の体感」へと広げる設計だといいます。
“参加する観光”を支える仕掛け
王氏が率いる園の取り組みでは、技術だけでなく、現地での参加型演出も重視されています。提供されている要素として、次のような体験が挙げられます。
- インタラクティブ(双方向)なパフォーマンス
- 登場人物になりきるロールプレイ
- テーマ性のあるパレード
- 上空を使った演出(エアリアルショー)
こうした複数の体験を束ねることで、観光地は「名所」から、滞在の物語を持つ「舞台」へと性格を変えていきます。
なぜ今、没入型が効くのか――「体験」と「感情価値」という言葉
王氏の発言にある「体験型消費」「感情的価値」という表現は、観光の競争軸が“情報”から“記憶”へ移っていることを示唆します。料理、音楽、演者、テクノロジー、観客の参加が重なると、同じ場所でも受け取る印象が変わり、旅の価値が「その人の時間」に結びつきやすくなります。
清明上河園の事例は、文化資源を保存するだけでなく、現代の消費行動に合わせて編集し直す試みとしても読めます。観光の現場で、どこまで“体験”を深め、どこまで“文化”を守るのか――その設計力が、今後の鍵になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








