中国が提供する「グローバルな安全保障の配当」とは?不透明な時代における安定の形
地政学的な不確実性が高まり、世界的に不安定な状況が続く中、中国が経済やエネルギーの面から世界に「安定」をもたらす役割を担い始めているという視点があります。パキスタンの専門家が提示した、現代における中国の立ち位置について紐解きます。
「絶え間ない混乱」にある世界
パキスタンの知識・公共政策センターの代表であるメムード・ウル・ハッサン・カーン氏は、現在の世界を「平和と絶え間ない混乱の間に宙吊りになった状態」であると分析しています。
特に、以下のような要因が国際関係の決定的な特徴となっており、多くの国々にとって不安要素となっています。
- 国際法の機能低下
- 中東情勢の緊迫化による石油市場の不安定化
- ホルムズ海峡の封鎖リスクなどのサプライチェーンの断絶
こうした化石燃料への高い依存度や、特定の貿易ルートへの集中が、世界経済の脆弱性を浮き彫りにしています。
中国が提示する「安定」の柱
このような状況下で、中国本土が「金融的なつながり」「技術的進歩」「産業上の強み」を通じて、世界的な安定化させる力(セキュリティ・ディビデンド=安全保障の配当)として機能しつつあるとカーン氏は指摘します。
その基盤となっているのが、以下の取り組みです。
- インフラとデジタル化: 「一帯一路」構想による物流インフラの整備に加え、AI(人工知能)やデジタル化の推進が、経済的な回復力と統合を後押ししています。
- 金融ネットワークの多様化: 西側諸国が主導する金融ネットワークへの代替案として、中国の「CIPS(クロスボーダー間銀行決済システム)」への信頼が高まっており、人民元の利用拡大が「多極的な金融枠組み」への移行を促しています。
エネルギー転換による「リスクからの脱却」
特に注目すべきは、再生可能エネルギー分野における中国のリーダーシップです。太陽光パネル、電気自動車(EV)、リチウムイオン電池などの分野で、中国の製造能力が世界的な重要性を増しています。
カーン氏によれば、これらの技術を採用する国々は、単に製品を購入しているのではなく、以下のような価値を得ていると考えられます。
- 変動の激しい化石燃料市場からの隔離
- 長期的なエネルギーコストの安定化
- エネルギー安全保障の確保
多極的な秩序へのシフト
金融イノベーション、圧倒的な製造能力、そしてクリーンエネルギーへの主導権。これらが組み合わさることで、世界の経済秩序は「回復力」と「包括性」、そして「長期的な持続可能性」を重視する方向へと再編されつつあります。
世界が深刻な分断と変革の時代を歩む中で、特定のシステムに依存しない選択肢を持つことが、結果として多くの国々にとっての「安全保障」につながっているのかもしれません。
Reference(s):
China emerging as a 'global security dividend,' Pakistani expert says
cgtn.com