北京・天津・河北の経済圏統合が加速――産業と生活を繋ぐ「1時間圏」の挑戦
中国本土の北東部で進む北京・天津・河北の統合策が、単なる行政上の計画を超え、産業と市民生活に具体的な変化をもたらしています。地域間の境界をなくし、互いの強みを引き出すこの試みは、次世代産業の育成と住民の利便性向上という二つの軸で加速しています。
産業の境界を越える「新エネルギー車」のサプライチェーン
かつては個別の都市で完結していた産業構造が、いまや地域全体で連携するひとつの巨大なサプライチェーンへと進化しています。その象徴となっているのが、新エネルギー車(NEV)の生産体制です。
- 河北省: バッテリーやルーフラックなどの基幹部品を製造
- 天津市: 車載ライトやシートなどの内装・外装部品を供給
- 北京市: 高度なインテリジェント走行システムの開発を主導
このように、地域ごとの強みを組み合わせることで、効率的な生産体制が構築されました。実際、2025年にはこの地域で108万4,000台の新エネルギー車が生産され、第14次5カ年計画期間(2021〜2025年)を通じて年平均60%を超える高い成長率を記録しています。
「6つのチェーンと5つのクラスター」が描く未来
当局は現在、「6つのチェーンと5つのクラスター」というイニシアチブを推進し、さらなる連携を強めています。これは、水素エネルギー、バイオ医薬品、サイバーセキュリティ、ロボティクス、そしてインテリジェント新エネルギー車といった最先端分野で、イノベーションと製造のネットワークを統合する計画です。
特に注目されるのが、総面積8,000ムー(約533ヘクタール)に及ぶインテリジェント接続新エネルギー車技術ハブの建設です。北京の順義区を含むこのエリアでは、北京ベンツや理想汽車(Li Auto)、北京現代といった主要メーカーを「1時間の産業圏」で結び、開発から製造までをシームレスに行う体制を整えています。
暮らしに浸透する統合のメリット
経済的な統合は、工場の中だけでなく、市民の日常生活にも浸透しています。特に交通インフラと医療サービスの整備が進んでいます。
移動のストレスを軽減する交通網
北京・唐山間の都市間鉄道や北京・雄安高速道路に加え、新たに「北京・天津・河北鉄道ループ線」が開通したことで、主要都市間を1時間から1.5時間で結ぶ交通圏が確立されました。これにより、通勤やビジネスでの移動が格段にスムーズになっています。
地域を越えた医療連携
医療分野でも、北京の専門病院と天津・河北の医療機関との連携が強化されています。2023年4月からは、6万4,000以上の医療機関をカバーする社会保障の「ワンカードパス」システムが導入され、住民は住んでいる地域に関わらず、より身近な場所で専門的なケアを受けられるようになりました。
中国の習近平国家主席は、この統合策を国家戦略に格上げして以来、一貫して地域間の深い協調を呼びかけてきました。単なる経済成長だけでなく、それが住民の幸福感や安心感、そして「共同富裕」という目標に結びつくことが、この広域経済圏が目指す最終的な到達点といえるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com

