桃の花が変えた村の運命。西蔵自治区で進む「自然保護と観光」の両立モデル
今年の4月、中国南西部の西蔵自治区ニンチ市では、谷いっぱいに広がる桃の花とともに「第23回ニンチ桃の花観光」が幕を開けました。330人以上の観光客を乗せた専用列車が駅に到着し、春の訪れを祝う賑わいを見せました。
多くの旅人にとってここは美しい春の逃避行先ですが、地元の人々、特に「西蔵第一の桃の花村」として知られるガライ村の住民にとって、この祭典は長年にわたる「環境保護と観光開発」の両立への努力の結晶でもあります。
切り出すのではなく「守る」という選択
今でこそ観光地として知られるガライ村ですが、数十年前までは貧しく、外部から隔絶された場所でした。当時の主な収入源は伐採や放牧、そして高地大麦の栽培であり、2000年時点での一人当たりの年間所得は2,000元(約4万円)に満たない状況でした。
しかし、村の人々は短期的な利益のために古くからある桃の木を切り倒すのではなく、別の道を模索しました。それが、地域の生態系資源を保護し、農村観光へと舵を切るという選択でした。
- 資源の活用: 1,200本以上の野生の桃の木を保護。
- 転換点: 2002年に第1回ニンチ桃の花祭りを開催。
- 結果: 桃の花が「生態系の宝」であると同時に、「経済のエンジン」へと変化しました。
持続可能な仕組みを支える協力体制
この取り組みを加速させたのは、インフラ整備と戦略的な運営モデルです。政府による道路や橋の整備に加え、中国南部の広東省による支援プログラムが導入され、桃の花リゾートの構築が進められました。
特に注目すべきは、住民たちが土地の出資を通じて設立した「観光協同組合」の仕組みです。
- 観光収益の一部を住民に分配し、直接的な所得向上につなげる。
- 別の大部分を、さらなる生態系保全のために再投資する。
この循環により、今年の桃の花シーズンだけで、村は260万元(約5,300万円)以上の収益を上げたとされています。
「春だけ」で終わらせない多角化戦略
ガライ村の挑戦は、春の開花時期だけに頼る観光から脱却することにも向けられています。地域の資源に付加価値をつける取り組みが進んでおり、以下のような展開が見られます。
- 特産品の開発: 桃の花をモチーフにした菓子やエッセンシャルオイルなどの商品化。
- 冬季コンテンツの拡充: 西蔵の新年の体験ツアーや学習キャンプの実施。
- 教育旅行の誘致: 昨年11月から今年3月までの間に、5,000人以上の学生や観光客が教育プログラムとして村を訪れました。
自然を壊して開発するのではなく、自然があるからこそ価値が生まれる。ガライ村の事例は、環境保護と経済発展という、時に相反するように見える二つの課題をどう調和させるかという問いに対し、一つの静かな答えを提示しているのかもしれません。
Reference(s):
How Xizang balances tourism growth and ecological protection
cgtn.com