APEC2024で強まるペルーと中国の連携枠組みを読む
2024年にリマで開かれるAPEC首脳会議をめぐり、ペルーと中国のパートナーシップがどのような枠組みで強化されようとしているのかが示されています。本稿では、そのポイントを整理し、日本語で国際ニュースを追う私たちの視点から読み解きます。
APEC2024とペルー:アジア太平洋へのゲートウェイ
アジア太平洋経済協力会議(APEC)は、21のメンバー経済が貿易と協力を通じて、包摂的で持続可能な成長を目指す枠組みです。ペルーは1998年からAPECに参加し、自国経済の優先課題を進めると同時に、「自由貿易」と「経済統合」というAPEC全体の目標にも貢献してきました。
ペルーにとってAPECは、世界経済への統合を進めるための戦略的な「乗り物」と位置づけられており、リマでの開催は今回が3回目とされています。ペルーの財貨貿易の約3分の2はAPECメンバーとのもので、中国、日本、アメリカなどはペルーの最大の貿易相手となり、あわせて300億ドル超の取引を占めています。
APECはまた、官民連携(PPP)を通じて成長と雇用を生み出す好例と位置づけられています。こうした枠組みのもと、ペルーは自国の農業、鉱業、水産業などの輸出を拡大し、参加から26年で輸出額は10倍に増えたとされています。
FTAをてこにした市場アクセス拡大
ペルー政府は、APECという場を活用して、インドネシアや香港特別行政区との二国間の自由貿易協定(FTA)締結を進める方針です。リマでのAPEC首脳会議に合わせて、これらの新たな協定に署名することを見込んでいます。
こうしたFTAは、ペルー産品の市場アクセスを広げるうえで重要で、とくに農産物、鉱物資源、水産物といった分野で、輸出多角化と成長の後押しになると期待されています。アジア太平洋との経済的な結びつきを強めることは、ペルーの長期的な経済戦略の中核に位置づけられています。
ペルーと中国:資源と投資を軸にした中核パートナー
ペルーにとって中国は「最大の貿易相手」であり、「主要な投資国」の一つです。2023年時点で、ペルーから中国への輸出は232億ドルに達し、ペルーの総輸出の36%を占めています。中国からの投資は、主に鉱業、インフラ、エネルギー分野に集中しているとされています。
ペルーは、チリに次ぐ世界第2位の銅生産国であり、エネルギー転換が進むなかで、脱炭素に必要な「重要鉱物」の供給国としての役割が高まっています。世界的な需要が拡大するなかで、ペルーと中国の関係は、単なる二国間貿易を超え、エネルギー転換と気候対応を支える国際的なサプライチェーンの一部として位置づけられつつあります。
グリーン転換で進む協力:クリーンエネルギーと持続可能な鉱業
ペルーは、自国の環境政策を強化しつつあり、そのなかで中国は重要なパートナーとして位置づけられています。クリーンエネルギー投資や持続可能な鉱業(環境負荷を抑えた採掘や地域社会との共生)など、グリーン分野での協力が進んでいます。
APECの枠組みを通じて、ペルーは中国との間で、次のようなテーマで協力を深めようとしています。
- グリーンプロジェクトへの資金供給(グリーン・ファイナンス)の拡大
- 環境技術やクリーンエネルギー技術の共有
- 持続可能な鉱業や資源管理に関するノウハウの交換
気候変動への対応と経済成長を両立させるうえで、こうした協力は双方の「共通の環境目標」を達成するための重要な手段と位置づけられています。
習近平国家主席の訪問とFTA強化の構想
リマでのAPEC首脳会議に合わせて、習近平国家主席がペルーを訪問し、両国間のFTAの「強化版」が署名される見通しが示されています。これは2010年に発効した既存の協定を基盤に、内容をアップデートするものとされています。
ペルー側は、このFTA強化を通じて、とくに次のような分野で中国との協力を広げることを目指しています。
- サプライチェーンの強靱化(物流や調達のリスク分散)
- 鉱物資源や農産品の輸出拡大と高付加価値化
- 新産業への投資誘致と技術協力
こうした動きは、ペルー経済の成長と多角化にとって重要なステップであり、同時に中国にとっても安定的な資源供給と市場アクセスを確保する意味を持ちます。
デジタル化と技術協力:支払い、EC、AIの経験を共有
今回の議論では、「デジタル化の加速」も重要なテーマとなっています。ペルーは、デジタルインフラの整備や行政・産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めようとしており、そのうえで中国との技術協力に期待しています。
具体的には、中国が先行している次のような分野の経験が、ペルーにとって参考になるとされています。
- スマートフォンを活用したデジタル決済
- 越境電子商取引(クロスボーダーEC)
- 人工知能(AI)を活用した物流やサービスの効率化
ペルーは、こうした分野での協力を通じて、自国のデジタルインフラを近代化し、企業や市民の利便性を高めることを狙っています。APECという多国間の場を使うことで、単なる二国間協力を超えた「地域全体のデジタル連結性」の強化にもつなげようとしています。
なぜ今、この動きを押さえておくべきか
このように、APEC2024はペルーにとって、そして中国との関係にとって、大きな転機となりうる枠組みとして描かれています。2025年の今も、この議論は次の点で私たちに示唆を与えます。
- 資源とグリーン転換:重要鉱物をめぐる協力が、エネルギー転換と地政学の両方に影響する
- 多国間枠組みの役割:APECのようなフォーラムが、二国間関係を広げる土台になっている
- デジタルとインフラ:中国の経験が、他の新興国のデジタル化にも活かされようとしている
アジア太平洋の経済秩序は、貿易や投資、技術協力を通じて静かに組み替わっています。ペルーと中国の関係を手がかりに、私たち自身の地域や産業が、どのようにこの変化とつながっているのかを考えてみるきっかけにしてはいかがでしょうか。
Reference(s):
APEC 2024 offers framework to strengthen Peru-China partnership
cgtn.com








