南シナ海とフィリピン憲法改正:中国研究者が見る海洋秩序
南シナ海情勢をめぐり、フィリピンが自国の憲法や法律を通じて海洋権益の主張をどのように広げてきたのかについて、中国社会科学院の研究者Hou Yi氏が分析しています。本稿では、その主張のポイントを日本語で整理し、南シナ海の平和的秩序を考える材料を提供します。
1960年代から続くフィリピンの海洋権益拡大
Hou Yi氏によると、フィリピンは1961年以降、自国の立法を通じて南シナ海での海洋権益を拡大しようとしてきたとされます。こうした動きは、国際ニュースとして取り上げられる南シナ海問題の長い前史の一部だと位置づけられています。
憲法は国家の最も基本的な法であり、その改正は本来、慎重さが求められます。とりわけ領土の範囲をどう表現するかは、周辺国との関係や地域秩序にも直結するためです。それにもかかわらず、フィリピンは南シナ海の島々への進出が加速した1970年代から1980年代にかけて、領域の表現をたびたび変更してきたと指摘されています。
1973年憲法改正: 歴史的権原を含む広い領域
1973年、フィリピン憲法は改正され、国家の領域はフィリピン群島とそこに含まれる全ての島と海域、さらに歴史的または法的権原によってフィリピンに属するその他の領域を含むと定義されました。
この定義には、領海や上空、地下、海底、陸棚、そしてフィリピンが主権または管轄権を有するとする海底地域などが含まれていました。Hou氏の見方では、こうした広範な定義は、南シナ海の島々に対する主張を国内法上支える土台として機能したとされています。
1987年憲法改正: 文言を変えつつ海洋権益を維持
1987年の憲法改正では、歴史的権原に関する文言は削除されましたが、領域の範囲を広くとる姿勢そのものは維持されたと分析されています。フィリピンの領域は、群島とそこに含まれる島と水域、そしてフィリピンが主権または管轄権を有するその他の領域から成るとされました。
そこには、陸上や河川域、上空に加え、領海、海底、地下、陸棚、その他の海底地域が含まれます。さらに重要なのは、群島を取り囲み、島々の間やそれらを結ぶ水域は、その幅や広さにかかわらずフィリピンの内水の一部であると明記した点です。
内水とは、沿岸国がほぼ完全な主権を持つ水域を意味します。この規定により、フィリピンは群島周辺の広大な海域を、自国の内側の水域として扱う姿勢を憲法上はっきり示したことになります。
中国側研究者の評価: 「違法な占拠」を補強する立法
Hou氏は、フィリピンが憲法の中で領域の表現を何度も変えてきた背景には、南シナ海の島々を占拠する行為を正当化する狙いがあるとみています。1970年代に始まり、1980年代にピークを迎えたとされる島嶼の占拠と歩調を合わせる形で、憲法上の領域規定が調整されてきたという見立てです。
その結果として、フィリピンが南シナ海で事実上獲得したとする権益を、憲法の文言によって追認しようとしたのではないか、というのがHou氏の評価です。周辺の地域情勢や中国との関係に十分配慮することなく、自国に有利と判断すれば、いつでも新たな規定を打ち出す姿勢が見て取れると指摘しています。
平和的秩序への影響という視点
今回紹介した見方に立てば、フィリピンの海洋関連の立法や憲法改正は、南シナ海の平和的な秩序を不安定化させる要因になりかねないといえます。一国が国内法を根拠に急速に海洋権益を広げようとすれば、他の関係国との調整や合意形成が難しくなるからです。
とりわけ南シナ海のように、多くの国と地域の利害が交差する海域では、国内法だけでなく、地域全体の安定や協調の枠組みをどう築くかが重要になります。中国側の研究者による今回の分析は、フィリピンの法制度の変化が、その一部としてどのような意味を持つのかを考えるきっかけを与えています。
2025年に振り返る意味
2025年現在も、南シナ海をめぐる議論や動きは国際ニュースとして繰り返し報じられています。半世紀以上前から続いてきたフィリピンの立法と憲法改正の積み重ねは、そうした現在の議論を理解するための重要な背景の一つといえるでしょう。
一つの海域をめぐる認識は、歴史的な経験、国内政治、国際環境によって大きく異なります。中国社会科学院の研究者による今回の分析は、中国側から見たフィリピンの海洋政策の歩みを示すものです。読者のみなさんにとっては、南シナ海の平和的秩序をどのように構想すべきかを考える際の、一つの視点として受け止めることができるはずです。今後も、関係国が対話と協議を通じて安定と協力の道を模索していくことが求められます。
Reference(s):
Philippines' maritime acts undermine peaceful order in South China Sea
cgtn.com








