COP29で問われる小規模農家支援 中国とIFADのレジリエンス投資とは
世界の指導者がアゼルバイジャンのバクーに集まり、国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)が開かれています。議論の焦点の一つは、気候変動への「適応」に向けた資金をどう確保し、特に小規模農家のレジリエンス(回復力)を高める投資を拡大できるかという点です。2025年現在も、これは国際社会にとって喫緊の課題となっています。
COP29と小規模農家への気候資金
国際農業開発基金(IFAD)は、国連の専門機関であり国際金融機関として、長年にわたり農村開発や貧困削減を支えてきました。IFADがCOP29で強調しているのは、「小規模農家の気候レジリエンスへの投資はコストではなく、経済的・社会的リターンの高い賢明な投資だ」という視点です。
しかし現状の気候資金の流れは、この認識にまだ追いついていません。IFADの試算では、特に開発途上国における小規模農家の気候変動適応を支えるための資金には、年間最大750億ドルものギャップがあるとされています。
実際、小規模な農業・食料システムに配分される気候資金は極めて限られています。2019~2020年に小規模農家向けに割り当てられた気候資金は、年間平均でわずか55.3億ドル、全セクターの気候資金の0.8%に過ぎませんでした。気候変動の影響を最前線で受ける人々への投資が、全体の1%にも満たない状況にとどまっているのです。
気候変動が食料と貧困にもたらすリスク
この「過少投資」は、すでに深刻な人道的リスクと結びついています。現在、約7億3500万人が飢餓に直面しており、その多くの生活と生計が気候変動によってさらに脅かされています。猛暑、干ばつ、極端な豪雨といった気候関連のショックは、農業生産を不安定にし、食料価格を押し上げ、脆弱な人々を追い詰めています。
さまざまな予測は、今後の数十年が転換点になる可能性を示しています。
- 気候変動の影響により、2030年までにさらに1億3200万人が貧困に追い込まれる可能性があること。
- 2035年までに、気候要因によって食料価格が50%上昇する恐れがあること。
- 今世紀末までに、気候変動により農作物の収量が最大25%減少する可能性があること。
これらは、単なる環境問題ではなく、世界の食料安全保障と貧困削減の努力そのものが危機にさらされていることを示しています。だからこそ、COP29で議論される新たな気候資金の枠組みは、小規模農家のレジリエンス強化を中核に据えられるかどうかが問われています。
中国とIFAD:長年のパートナーシップ
こうした中で、中国とIFADの協力は、小規模農家への投資を通じてレジリエンスを高める一つの具体例として注目されています。IFADは1980年以来、中国の農村住民への投資を続け、食料安全保障と栄養改善、そして農村地域の自立を後押ししてきました。
近年、中国では極端な高温や豪雨などの異常気象が増え、その頻度も強度も高まっています。直近の年には、温暖で乾燥した気候に加え、洪水と干ばつが重なる厳しい状況が見られました。中国気象局によると、全国平均気温は観測史上最高となり、降雨日数は記録的に少なかったとされています。気候変動の影響が、農業と農村の現場に直接の負荷をかけていることが分かります。
中国の小規模農家と「気候適応戦略2035」
中国の農業を支えているのは、規模の小さな農家です。小規模農家は農業労働力の約90%を占め、国土の耕地の約70%を耕作しています。彼らは国内の食料供給と農村経済を下支えする存在であると同時に、気候変動の影響をもっとも強く受ける人々でもあります。
中国政府はこの現実を踏まえ、小規模農家の気候変動適応を政策の優先課題として位置づけています。その象徴が、2022年に発表された「国家気候変動適応戦略2035」です。この戦略は、特に脆弱な地域での草の根レベルのレジリエンスを高めるため、次のような方向性を打ち出しています。
- 気候変動の影響に耐えられる気候レジリエントなインフラへの投資
- 省レベルの適応行動計画の策定と実施
- 脆弱な地域での現場主導のレジリエンス強化イニシアチブの推進
小規模農家を含む地域の主体が、インフラや技術、地域計画を通じて変化する気候に対応できるよう支えることが、この戦略の核となっています。IFADは、こうした中国の取り組みを支えながら、小規模農家が気候リスクに備え、安定した生計を築けるよう後押ししています。
COP29へのメッセージ:レジリエンス投資を主流に
中国とIFADの協力は、バクーで議論を進める各国の政策担当者に、少なくとも次のような示唆を与えています。
- 小規模農家を気候戦略の中心に置くこと
食料安全保障を支える現場である小規模農家を、気候資金の「受け手の一部」ではなく、「戦略の中心」として位置づける必要があります。 - 気候資金の配分を見直すこと
現在、小規模な農業・食料システムに届く気候資金は全体の0.8%にとどまっています。この配分構造を改めない限り、年間750億ドルという資金ギャップは埋まりません。 - レジリエンス強化を長期的投資と捉えること
小規模農家のレジリエンスを高めることは、将来の食料価格高騰や貧困拡大を防ぐ「保険」であり、長期的には経済・社会に大きなリターンをもたらす投資でもあります。
2025年の今、COP29の場で合意される新たな気候資金の枠組みが、小規模農家のレジリエンス投資をどこまで優先できるかが問われています。中国とIFADのパートナーシップは、こうした投資がどのように設計され得るのかを示す一つのケースであり、世界の気候政策と農業政策を考えるうえで重要な示唆を与えています。
Reference(s):
COP29: Investing in resilience through China-IFAD partnership
cgtn.com








