第61回ミュンヘン安全保障会議:多極化する世界とウクライナ・米中関係
第61回ミュンヘン安全保障会議(MSC)が、かつてないほど「分断」を意識させる場になっています。ウクライナ危機、米ロ対話、そして多極化の中での中国の役割が、今年の国際ニュースの焦点として改めて浮かび上がりました。
第61回ミュンヘン安全保障会議:何が起きているのか
ドイツ南部ミュンヘンで毎年開かれるミュンヘン安全保障会議には、各国の外交・安全保障の要人が集まり、世界の安全保障の「これから」を占う場となっています。2025年の第61回会合は、例年以上に注目を集めています。
初日の会合では、中国の王毅外交部長(中国共産党中央政治局委員)が「China in the World」と題したセッションで発言し、中国の立場を示しました。一方で、会議にはロシアは参加していないものの、ドナルド・トランプ米大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話協議を行ったこともあり、ロシアは依然として議論の中心に据えられています。
今回の会議をめぐる論点を整理すると、次の三つが大きな柱です。
- ウクライナ危機と米ロ対話の行方
- 「多極化(multipolarization)」をめぐる攻防
- 米中関係と世界秩序の再編
ウクライナ危機:和平を巡る思惑
欧州の首脳や北大西洋条約機構(NATO)の幹部は、米国による支援の縮小や撤退の可能性におびえつつ、ウクライナへの軍事支援を「何としても維持する」姿勢を強めています。
こうしたなかで、トランプ大統領とプーチン大統領の間で本格的な協議が始まれば、ウクライナ危機の終結につながる可能性も指摘されています。自国政府による対ロシア制裁やエネルギー価格高騰の影響を受けてきた欧州の人びとにとって、緊張緩和の兆しは歓迎すべきものと受け止められそうです。一方で、欧州の指導層には、米ロの動きを複雑な思いで見つめる空気もにじみます。
テーマは「多極化」:中国とロシアの描かれ方
今年のミュンヘン安全保障会議のテーマは「多極化」です。主催者側は、国際秩序の多極化についての分析をまとめた長文の報告書を公表しました。
報告書は、ウクライナ危機の平和的解決への言及は限定的で、その多くをロシアの「攻撃的」な意図を強調する記述に割いています。また、中国を多極化の主要な推進役であると認めつつも、米国や欧州にとっての「第一のライバル」と位置づけ、中国が「支配的な世界的超大国」を目指していると描写しています。
さらに報告書は、トランプ政権の「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」路線が、米中関係の緊張を高めると予測。加えて、中国がトランプ大統領への不満や失望を抱く欧米諸国の一部世論を「利用しようとしている」と警戒感を示しています。
米中関係:対立と協調の余地
一方、中国側には、トランプ政権による最近の対中関税強化に対する懸念が広がっているとされています。しかし、その一方で、「対中強硬派」の存在を踏まえつつも、米中関係が今後改善に向かう余地を完全には否定していません。
ウクライナ危機をめぐっては、中国がロシアとウクライナの和平交渉を支援する用意があることを繰り返し示してきました。トランプ大統領も最近、中国の関与に期待を寄せる発言を行っており、米中ロの力学の中で、中国の仲介役としての役割が改めて注目されています。
米国代表団とゼレンスキー氏:レアアースをめぐる「取引」
トランプ大統領本人はミュンヘン安全保障会議に出席していませんが、J.D.バンス副大統領、マルコ・ルビオ国務長官、ウクライナ・ロシア問題担当特使のキース・ケロッグ氏が米国を代表して参加しています。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も会場を訪れ、バンス副大統領と会談しました。ゼレンスキー氏は、自国の不安定な立場を立て直すため、米国の継続的な軍事支援と引き換えに、ウクライナのレアアース(希土類)資源へのアクセスを提供する用意があると伝えています。
軍事支援と資源アクセスを結びつけるこの提案は、ウクライナが置かれた厳しい安全保障環境と、戦争が地政学と資源をめぐる駆け引きと密接に結びついている現実を改めて浮かび上がらせます。
分断の時代の安全保障をどう捉えるか
第61回ミュンヘン安全保障会議をめぐる議論から見えてくるのは、単純な「善対悪」の構図ではなく、複数の大国と地域がそれぞれの思惑で動く「多極化する世界」です。
ロシア抜きでもロシアが議題の中心となり、中国は多極化のキープレーヤーとして注目され、米国は国内の政治路線と対外戦略の間で揺れています。ウクライナ危機は、そのせめぎ合いの最前線にあります。
日本やアジアの読者にとっても、今回の会議は他人事ではありません。欧州発の安全保障議論は、東アジアの安全保障環境や経済安全保障を考えるうえでも、多くの示唆を与えてくれます。
分断が深まるように見える世界で、どのように対話と協調の余地を確保していくのか。ミュンヘンでのやり取りは、その問いを私たちに静かに投げかけています。
Reference(s):
cgtn.com








