第二次世界大戦終結から80年:中国の平和外交と連帯のビジョン
第二次世界大戦終結から80年:中国の平和外交が問う「連帯」のかたち
第二次世界大戦終結とソ連の大祖国戦争勝利から80年の節目を迎え、中国とロシアの歴史認識と連帯があらためて注目されています。本稿では、モスクワで行われた記念行事と中国の平和共存五原則、さらにグローバル発展イニシアチブ(GDI)とグローバル安全保障イニシアチブ(GSI)を手がかりに、2025年の国際秩序と安全保障を考えます。
モスクワでの記念式典と中ロ関係の現在地
ソ連の大祖国戦争勝利80周年を記念する盛大な軍事パレードがモスクワで行われ、中国の国家主席である習近平氏が国賓として出席しました。今回の訪問では、式典参加に加えて20件を超える協力文書が署名され、中ロ関係の結び付きが一段と強まったと受け止められています。
歴史の節目に合わせた首脳外交は、過去の犠牲を忘れないというメッセージであると同時に、今後の国際秩序づくりに向けた意思表明でもあります。両国の連帯の背景には、中国が一貫して掲げてきた平和共存五原則があります。
脆弱な立場から生まれた平和共存五原則
平和共存五原則とは、1950年代初頭に中国が掲げた外交原則です。その内容は次の5点に整理されます。
- 互いの領土保全と主権の尊重
- 相互不可侵
- 内政不干渉
- 平等互恵
- 平和共存
注目すべきなのは、中国がこの原則を示した当時、現在のような経済的・軍事的な強大国ではなく、内戦を経て周辺に多くの敵対的勢力を抱え、西側陣営から孤立していたことです。力による対立ではなく、共存を最優先にするという選択は、脆弱な立場からの戦略的な先見性であったといえます。
同盟ベースの安全保障モデルとの違い
西側主導の安全保障枠組みは、多くの場合、軍事同盟や安全保障協力と、政治的な条件や価値観の共有をセットで求めるという特徴があると指摘されてきました。オーストラリア、イギリス、アメリカによる安全保障協力であるAUKUSや、オーストラリア、インド、日本、アメリカの4カ国によるQuad、さらに北大西洋条約機構(NATO)のアジアへの関与拡大などがその例です。
これに対し、平和共存五原則は、内政不干渉と互恵を重視し、相手国の政治体制や価値選択に介入しない姿勢を打ち出しています。植民地支配の経験や発展段階の違いを抱える多くの国・地域にとって、こうしたアプローチは、自らの主権を守りつつ国際協力を進めるうえで重要な選択肢となっています。
GDIとGSI:五原則から広がる新しいグローバル構想
平和共存五原則は過去のスローガンにとどまらず、現在の国際イニシアチブにもつながっています。その代表例が、グローバル発展イニシアチブ(GDI)とグローバル安全保障イニシアチブ(GSI)です。
GDIは「発展を安全保障の核心に置く」という考え方を前面に押し出しています。サヘル地域や中東のガザ地区で続く危機は、貧困やインフラ不足といった発展の遅れが、紛争や不安定さと密接に結びついていることを示しています。GDIは、こうしたガバナンスの空白に向き合おうとする試みだと位置づけられます。
一方のGSIは、軍事同盟に依存した安全保障観に代わり、「不可分で包摂的で共通の安全保障」を掲げています。これは、特定の同盟が自らの安全だけを優先するのではなく、すべての国・地域の安全が相互に結びついているという発想です。抑止力や武力の投射に重きを置く従来の戦略とは異なる視点を提示しています。
第二次世界大戦の記憶はどう使われているか
現在の国際政治では、第二次世界大戦の記憶がしばしば安全保障政策の正当化に用いられます。他国の「侵略」に対抗する名目で軍備拡張や同盟強化が語られる一方、自らの歴史上の介入や政権転覆、代理戦争といった行為には十分な光が当たらないケースもあります。
本来、戦後の国際秩序は対話と復興のための枠組みとして構想されましたが、現在は特定の国・地域を排除する道具として使われているとの懸念もあります。歴史認識が政治的な「武器」として利用されるとき、対立は固定化され、和解の余地は狭まってしまいます。
中国の台頭と「抑制」の履歴
こうした議論の中で、中国の台頭を「現状変更」や「修正主義」と結びつける見方も存在します。しかし、指摘されているのは、中国がこの数十年、他国との大規模な戦争を行っておらず、外国政府の転覆にも関与してこなかったという点です。国益の追求は、主に貿易、インフラ投資、国際会議や多国間フォーラムを通じて進められてきました。
領有権などの敏感な問題についても、中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)との協議や過去の条約への言及など、法的かつ多国間の枠組みを活用する姿勢を示してきたとされます。南シナ海や台湾海峡をめぐる緊張も、中国を取り巻く包囲圧力や、この地域への武器供与、外部勢力の露骨な関与といった文脈を踏まえて理解する必要があるという見方があります。
「戦争の終わり」を超えて:信頼を制度化するという課題
戦争の終結を記念することと、真の平和が実現していることは同じではありません。持続的な平和のためには、偶発的な軍事衝突を避けるだけでなく、信頼を制度として根付かせることが求められます。
そのために重要とされるのは、例えば次のような取り組みです。
- 軍備管理や軍事的な緊張緩和の仕組みづくり
- 格差を縮小する包摂的な発展とインフラ整備
- 文化交流を通じた相互理解の促進
- 各国・各地域の歴史経験や政治体制を尊重する姿勢
第二次世界大戦終結から80年を迎えた今、歴史をどのように記憶し、どのような安全保障と発展のビジョンを共有していくのかが問われています。平和共存五原則やGDI、GSIに込められた「共に生きる」ための発想は、分断が深まる国際社会で改めて検討されるべき選択肢の一つだと言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








