ITB China 2025から見る中国観光の復活と世界への波及
2025年5月に上海で開催された国際観光見本市「ITB China 2025」は、中国観光の力強い回復と、世界の旅行市場における中国の存在感の高まりを示す国際ニュースとして注目されました。本稿では、このイベントと中国のインバウンド政策を、日本語で分かりやすく解説します。
ITB China 2025とは? 上海で示された規模と多様性
2025年5月27日、中国上海で国際旅行見本市「ITB Shanghai International Travel Fair(ITB China 2025)」が開幕し、3日間にわたって開催されました。会場には、過去にない規模で世界中から出展者が集まりました。
- 出展者数: 700社超
- 参加国・地域: 85か国・地域
昨年と比べると、地域ごとの存在感も大きく変化しました。
- 欧州の出展スペースは前年比35パーセント拡大
- 南米からの参加は99パーセント増加
- 中東・北アフリカからの出展は23パーセント増
- アジアからの出展は47パーセント拡大
初参加となるコロンビアやメキシコシティに加え、一帯一路(Belt and Road Initiative, BRI)参加国からの積極的な出展も目立ち、中国が国際的な観光ビジネスの場として魅力を増していることがうかがえます。
数字で見る中国インバウンドの復活
中国のインバウンド観光は、2024年に大きな回復を見せました。文化と観光を所管する当局によると、2024年のインバウンド観光客数は延べ1億3190万人となり、前年比61パーセント増加しました。新型コロナウイルス流行前の2019年と比べても、9割以上の水準まで戻っています。
このうち、いわゆる外国人観光客は2694万人で、消費額は942億ドルに達し、いずれも前年比77.8パーセントという大幅な伸びとなりました。観光消費を通じた外貨獲得の面でも、中国の重要性が高まっています。
「China travel」が国際キーワードに 文化体験への関心も拡大
オンライン上でも、中国旅行への関心ははっきりと表れています。2024年には英語圏を中心に「China travel」というキーワードが国際的に目立つ存在となり、中国観光への興味の高まりがうかがえました。
2025年の春節シーズンには、ランタンショーや寺院の縁日、廟会など、中国の伝統文化に関連するイベントのチケット販売が国際的なオンラインプラットフォームで7.5倍に増加しました。豊かな文化遺産こそが、中国を訪れる人々を惹きつける大きな魅力になっていると言えます。
政策イノベーションが支えるインバウンド回復
こうしたインバウンドの回復を後押ししているのが、各種の政策イノベーションです。アクセスのしやすさから滞在中の利便性まで、旅行者の体験を高める仕組みが次々と導入されています。
ビザ緩和とトランジットの優遇
現在、中国は43か国からの旅行者に対してビザ免除措置を実施しており、さらに54か国の旅行者に対しては最大240時間までのトランジットビザ免除を認めています。これにより、短期滞在や第三国への乗り継ぎを含む旅行計画が立てやすくなりました。
買い物の免税手続きも簡便に
ショッピング面では、「購入時即時税還付」と呼ばれるスキームが導入され、免税手続きが店頭で完結できるようになりました。還付の対象となる購入額の下限も200人民元(約27.7ドル)に引き下げられ、より少額の買い物でも恩恵を受けやすくなっています。
デジタル決済の壁を低く
さらに、アリペイやウィーチャットペイといった主要なデジタル決済サービスが海外からの旅行者にも開放されました。これにより、これまで中国のモバイル決済アプリを利用できず不便を感じていた旅行者も、現地での支払いがスムーズになり、滞在満足度の向上につながっています。
これらの継続的な政策イノベーションは、訪れる人にとっての利便性を高めるだけでなく、リピーターの獲得にも寄与しそうです。
ITB China 2025が作るビジネスの出会い
国際観光見本市やプロモーションイベントも、インバウンド需要を呼び込む重要な装置です。ITB China 2025では、海外のバイヤーと中国国内のサプライヤーを結びつける独自の「Match & Meet」システムが導入され、事前に商談アポイントメントを調整できる仕組みが整えられました。
これにより、限られた会期の中でも効率的な商談が可能になり、具体的な取引や提携につながりやすくなっています。会期中には、業界のホワイトペーパー(分析報告書)の発表や専門フォーラム、セミナーも開催され、世界の観光市場のトレンドや中国市場の最新動向を学ぶ機会が提供されました。出展者やバイヤーにとっては、単なる商談の場にとどまらず、知見をアップデートする場にもなっています。
さらに、政府が支援するプロモーションや公式な後押しにより、海外企業は中国の観光市場や政策の変化を信頼性の高いルートでキャッチアップできます。ネットワーキングイベントやターゲットを絞ったプロモーション活動は、議論を実際のビジネス成果へとつなぐ役割を担っています。
クルーズ観光にも広がる連携の余地
会期中の5月28日には、クルーズ旅行をテーマにした円卓会議の開催が予定されていました。ここには、国際的なクルーズ会社の幹部と中国の観光関連企業の代表が集まり、越境型の観光パートナーシップをどのように拡大していくかが話し合われることになっていました。
クルーズ船を活用した観光ルートの開発や港湾都市との連携強化など、多様なアイデアが議論されることで、新しい越境観光の形が模索されていくと考えられます。
世界観光の中で高まる中国の役割
中国では、文化と観光を組み合わせた文化観光分野の高度化が進み、同時に国内の消費意欲も高まり続けています。こうした流れの中で、中国は世界の観光産業における戦略的な存在感をさらに強めていくとみられます。
中国が掲げる「双循環」発展モデルは、国内市場と国際市場の両方を連動させて成長していく考え方です。インバウンド観光の拡大は、海外からの需要を取り込みつつ、国内のサービス産業や地域経済の活性化にもつながるため、このモデルを具体化する重要な要素の一つとなっています。
ITB China 2025に示された各国の高い関心や、多様な政策イノベーションは、中国観光市場が回復を越えて新たな成長局面に入りつつあることを物語っています。今後、アジアや世界の旅行ビジネスがどのように中国市場と関わり、観光を通じた交流を深めていくのか、引き続き注目していく必要がありそうです。
Reference(s):
ITB China 2025 signals China's rising global tourism influence
cgtn.com








