サンクトペテルブルク国際経済フォーラム ロシアとグローバルサウスの結節点
ロシアの「窓」はいま、グローバルサウスへ
ロシア第2の都市サンクトペテルブルクで今年6月18〜21日に開催されたサンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)は、かつて「ヨーロッパへの窓」として構想された都市が、いまやグローバルサウスへの窓として機能していることを象徴する場となりました。
過去3年ほど、フォーラムの主なゲストは西側以外の国々の代表が中心となってきました。ロシア側が「集団的な西側」と呼ぶ国々による対ロ制裁の中で、モスクワはアフリカ、アジア、ラテンアメリカとの二国間関係を積極的に深めてきたからです。
サンクトペテルブルク国際経済フォーラムとは
サンクトペテルブルク国際経済フォーラムは、ロシアの政治・経済エリートと各国の政財界人が集まり、世界経済や投資、産業の課題を議論する場です。今年のフォーラムには92カ国からビジネス・政治の代表団が参加し、新たな協力機会を探りました。
議論された主なテーマには、次のようなものがあります。
- 多極化する国際秩序(多極性)
- 世界経済とビジネスの新たなプログラム
- 貿易・投資の多様化
- 産業・金融面での主権の確立
- 「新しい世界」における人と社会のあり方
こうしたテーマ設定からは、制裁や地政学リスクが高まる中で、特定の地域や通貨への依存を減らし、自律性を高めたいという多くの国々の問題意識がにじみます。
グローバルサウスとの結び付き強化
ロシアは、西側諸国との関係が緊張する一方で、グローバルサウスとの経済関係を拡大させています。グローバルサウスとは、おおまかに言えばアフリカ、アジア、ラテンアメリカなど、歴史的に欧米中心の世界経済の「周辺」とされてきた国や地域を指す概念です。
モスクワは、このフォーラムを通じて次のような狙いを持っているとみられます。
- 新興国との貿易・投資関係の拡大
- エネルギーやインフラなどの分野での長期プロジェクトの獲得
- 国際社会において「西側からは孤立しても、世界からは孤立していない」姿を示すこと
とりわけエネルギーは、伝統的にロシアの対外政策を牽引してきた分野です。その延長線上で、エネルギー協力がグローバルサウスとの関係強化の重要な柱となっています。
カザフスタンの原発計画に見るエネルギー戦略
ロシアが「近隣諸国」と位置付ける地域では、その動きがより鮮明です。6月14日、カザフスタン当局は、ロシアの原子力企業ロスアトムが同国初の原子力発電所の建設を主導すると発表しました。
同時に、エネルギー資源が豊富なカザフスタンでは、中国の企業であるChina National Nuclear Corporationが別のコンソーシアムを率いて、もう一つの原子力施設の建設を担うことも決まりました。
この構図から見えてくるポイントは次の通りです。
- ロスアトムの事業を通じ、ロシアはエネルギー分野での影響力を維持・拡大しようとしている
- 中国企業も原子力分野で存在感を強めており、同地域でロシアと中国の協力や競争が進む可能性がある
- エネルギーを軸に、ロシアの地政学的なベクトルは今後も「東」へと向かうことが示されている
カザフスタンの原子力発電計画は、単なる電源多様化の一手ではなく、ロシアと中国、そしてグローバルサウスとの関係が交差する場になりつつあります。
米ロ経済対話の「細い糸」も維持
一方で、ロシアはグローバルサウス重視の路線を取りながらも、西側との経済関係を完全に断ち切る姿勢を示しているわけではありません。
ロシア駐在アメリカ商工会議所のロバート・エイジー会頭が、ロシアと米国のビジネス関係をテーマにしたパネルディスカッションのモデレーターを務める予定だったことは、その象徴的な一例です。
対立が深まる中でも、企業やビジネスコミュニティのレベルでは次のような思惑があります。
- 将来の関係正常化を見据えた対話のチャンネルを残しておきたい
- 制裁の枠内で可能なビジネスの余地を探りたい
- グローバルなサプライチェーン(供給網)を完全には分断させたくない
フォーラムは、こうした「細い糸」をつなぎ止める場としても機能していると考えられます。
多極化する世界で問われるもの
今回のサンクトペテルブルク国際経済フォーラムは、ロシアがグローバルサウスと結び付きを強化し、同時に西側との対話の可能性も探るという二つの動きを映し出しました。
多極化、産業・金融主権、多様化、人の移動や価値観の変化といったテーマは、ロシアやグローバルサウスだけでなく、日本を含む多くの国々に共通する課題でもあります。
読者の皆さんにとっての問いは、例えば次のようなものかもしれません。
- 日本はグローバルサウスとの関係をどのように位置付けるべきか
- エネルギーや原子力分野で、どのような国際協力の形が望ましいのか
- 制裁や地政学リスクが高まる中で、企業や個人はどのようにリスク分散を考えるべきか
サンクトペテルブルク発の議論は、遠い世界の出来事のようでいて、日本のエネルギー安全保障や企業戦略にも静かに影響を及ぼしつつあります。フォーラムで交わされた対話を手がかりに、自分たちの立ち位置をあらためて考えてみるタイミングにきているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








