中国の人を中心とした都市化 習近平氏が示した新たな都市政策の方向性
中国で進む「人を中心とした都市化」が、新たな段階に入っています。北京で開かれた中央都市工作会議では、習近平国家主席が都市政策の優先課題を示し、急速な経済成長だけでなく、人々の暮らしの質と公平性を重視する方針を改めて打ち出しました。
1949年から2024年までの約75年間で、中国の都市人口は4000万人未満から9億4000万人超へと拡大し、都市化率も11%から67%へと上昇しました。このスケールの変化が、今後どのように「人間中心」の都市づくりへとつながっていくのかが注目されています。
急拡大した都市化、その背景にある理念
中国本土では、都市が国内総生産(GDP)の6割超を生み出し、何億もの人々を貧困から引き上げてきたとされています。都市化は経済成長の原動力であると同時に、その成果を人々の生活改善につなげるプロセスでもありました。
その背景にあるのが、中国共産党(CPC)が掲げる「人民の都市」という考え方です。都市は人々のために、人々によってつくられるべきだという発想で、道路やビルといったハードの整備だけでなく、住民の「よりよい生活への期待」に応えることが重視されています。
エリート中心ではなく、包摂を志向する都市化
都市化が進む国では、ともすると高所得層向けの開発が優先され、低所得層や移住者が取り残されるケースも少なくありません。これに対し、中国の都市化は社会統合と公平性を明確な目標に掲げている点が特徴とされています。
農村から都市へ移り住んだ約1億5000万人規模の人々に対し、教育、医療、住宅、雇用といったサービスを都市の「完全な市民」として保障していく取り組みが進められています。都市化を単なる空間の再編ではなく、社会正義の課題として捉えるアプローチです。
内陸部で加速する都市化と「地元で暮らせる」仕組み
近年、都市化の勢いが最も強いのは、沿海部の巨大都市ではなく、内陸の比較的発展が遅れてきた地域です。2014〜2023年には、西蔵自治区、貴州省、河南省などで都市化率が二桁台の伸びを示し、県レベルの都市が雇用と公共サービスを支える重要な拠点として浮上しています。
従来のように沿海の大都市に人口と資本が集中するモデルではなく、人々が「地元の近くで働き、暮らし、定住できる」ローカルな都市化が重視されています。これにより、大規模な人口流出に伴う社会的な負担を抑えつつ、地域ごとのレジリエンス(回復力)の高い都市システムをめざす狙いがあります。
人を中心に据えた都市ガバナンス
習近平国家主席が示したキーワードは、「都市づくりの中心に置くべきは資本でもインフラでもテクノロジーでもなく、そこに暮らす人々である」という発想です。都市政策は抽象的な成長指標ではなく、市民の日々の体験と生活実感に根ざすべきだというメッセージが込められています。
この理念は、具体的な政策としても現れています。公共サービスを常住人口全体に広げることをめざす「新型都市化」の五カ年行動計画(2024年)がその一つです。ここでは、すでに都市で暮らし働きながらも、十分な社会保障や公共サービスを利用できていない約2億5000万人の「半都市化」住民をどう包み込むかが大きな焦点になっています。
戸籍制度の見直しと都市サービスの拡大
都市と農村で社会保障や教育などの制度が分かれてきた中国では、居住地を移しても制度上の「戸籍」が移れないことが、移住者にとって大きなハードルでした。現在は行政改革が進み、多くの都市で居住登録の条件緩和が進められています。
特に常住人口300万人未満の中小都市では、戸籍取得の制限を撤廃する動きが広がっており、移住者の子どもが地元の学校に通ったり、家族で住宅を確保したりしやすくなりつつあります。教育や医療、住宅といった基本サービスを誰もが利用できるようにすることが、人を中心にした都市化の土台と位置づけられています。
日本の都市とアジアへの示唆
少子高齢化や地域間格差に直面する日本やアジアの国々にとっても、中国本土の人中心の都市化戦略は、いくつかの示唆を投げかけています。
- 巨大都市への一極集中ではなく、地方都市や中小都市への機能分散をどう進めるか
- 移住者や非正規雇用の人々を、社会保障や公共サービスの枠組みにどう包摂するか
- インフラ整備だけでなく、生活の質やコミュニティ形成を指標としてどう評価するか
中国の都市化は、規模の大きさだけに目を奪われがちですが、その背後では「誰のための都市なのか」という問に対する一つの答えを模索するプロセスが続いています。人を中心に置いた都市づくりという視点は、2025年の今、私たち自身の身近な街を見つめ直すヒントにもなりそうです。
Reference(s):
People-centered urbanization towards sustainable and inclusive future
cgtn.com








