チューリング賞ロバート・タージャン氏、AIと基礎科学の未来を語る video poster
今年北京で開催された2025 International Congress of Basic Scienceで、チューリング賞受賞者ロバート・タージャン氏がBasic Science Lifetime Awardを受賞しました。その会場で収録された番組「Leaders Talk」の独占インタビューでは、AIと基礎科学の未来について、静かだが示唆に富む言葉が次々と語られました。
北京の国際会議で交わされた対話
インタビューは、中国メディアCMGのジャーナリスト、ゾウ・ユン氏が聞き手を務めました。現代のコンピューティングに大きな影響を与えてきたタージャン氏は、計算機科学の世界で「ビジョナリー」と称されてきた人物です。会場となった北京の国際会議は、世界の基礎科学がどこへ向かうのかを議論する場として位置づけられており、その中心でタージャン氏は自身の歩みとこれからの課題を語りました。
天文学と数学パズルから始まったキャリア
タージャン氏の原点は、子どもの頃に夢中になった天文学と数学パズルにあるといいます。夜空の星や、紙の上のパズルを前に「これはどうなっているのか」と考え続けた経験が、後にアルゴリズムやデータ構造の研究へとつながりました。
インタビューでは、若い頃から常に「仕組みを理解したい」という好奇心が、自身の研究を前に進めるエネルギーだったと振り返りました。複雑な問題を小さな要素に分解し、そこに隠れた構造を見つけ出すこと。その積み重ねが、今日のデジタル世界に長く残る成果につながったといいます。
AIの約束と課題をどう見るか
現在、AIは社会や産業のさまざまな場面に広がり、その可能性とリスクが世界的な議題になっています。タージャン氏は、AIについて「約束」と「課題」の両方があると整理しました。
一方で、AIは膨大なデータからパターンを見つけ出し、人間だけでは難しい問題解決を支える強力な道具になりつつあります。他方で、その振る舞いを完全に説明できないブラックボックス性や、偏ったデータに基づく判断への懸念も残ります。
タージャン氏は、こうした課題に向き合うためには、アルゴリズムやデータ構造といった基礎的な理解を深めることが欠かせないと強調しました。表面的な応用だけでなく、AIの内部で何が起きているのかを理論的に説明できることが、持続可能な発展の条件だという視点です。
基礎研究は技術だけでなく世界の理解を広げる
インタビューの大きなテーマの一つが、基礎科学の役割でした。タージャン氏は、基礎研究は新しい技術を生み出すだけでなく、世界そのものへの理解を深める営みだと語りました。
アルゴリズムやデータ構造の研究は、最初から具体的な製品やサービスを目指して始まったわけではありません。しかし、その理論的な成果が後にインターネットやスマートフォンなど、日常生活に欠かせない技術の基盤となりました。タージャン氏は、このような「予測できない利益」こそが、基礎研究の大きな価値だと指摘します。
また、短期的な成果を求めるプレッシャーが強まるなかでも、長い時間軸でじっくりと問いに向き合う基礎科学への投資を続けることの重要性を改めて訴えました。
私たちへのメッセージーー好奇心を手放さない
タージャン氏が繰り返し強調したのは、科学者だけでなく、誰にとっても好奇心が大切だという点です。たとえ専門家でなくても、「なぜそうなるのか」「本当はどうなっているのか」と問い続ける姿勢が、新しい発見や変化のきっかけになるという考え方です。
AIが急速に進化する2025年現在、技術の行方を専門家に任せきりにするのではなく、一人ひとりが基本的な仕組みや背景に目を向けることが求められています。タージャン氏の人生と研究は、そのためのヒントを与えてくれます。
北京での独占インタビューは、AIと基礎科学の未来をめぐる議論が、技術の話だけでなく、人間の好奇心や学ぶ姿勢に深く関わっていることを静かに示していました。SNSや日常の会話の中で、この視点をどう共有していくかが、これからの私たちの課題と言えそうです。
考えてみたいポイント
- AIの「約束」と「課題」を、自分の仕事や生活にどう引き寄せて考えられるか。
- 短期的な成果に直結しない基礎研究を、社会としてどう支えていくか。
- 日常の中で、自分の好奇心を育て続けるためにどんな工夫ができるか。
Reference(s):
cgtn.com








