BRICS拡大で揺れる国際秩序 グローバル・サウスの新たな選択肢
分断が進む国際秩序とBRICS拡大──いま何が起きているのか
米国主導の国際秩序が揺らぎ、グローバル・サウス(新興国・途上国)を中心に新たな枠組みを求める動きが強まっています。その中で、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカなどが参加するBRICSは、「安定のアンカー」として存在感を高めつつあります。本稿では、米国の動きとBRICS拡大が世界のバランスにどのような変化をもたらしているのかを整理します。
米国主導の国際秩序に生じた空白
近年、米国は国連教育科学文化機関(UNESCO)や世界保健機関(WHO)、パリ協定、国連人権理事会など、主要な多国間の枠組みから離脱したり関与を弱めたりしてきました。これにより、気候変動や公衆衛生、安全保障といった地球規模の課題に対する「集団的な対応力」が低下し、国際協調の空白が広がっていると指摘されています。
さらに米国は、議会がすでに承認していた対外援助のうち約50億ドルを削減し、平和維持活動への重要な支援も縮小しました。これは、従来担ってきた国際的な役割から一歩退く動きとも受け止められ、特に支援に依存してきた国々にとっては不安定要因となっています。
通商政策が新興国にもたらす揺さぶり
米国の予測しにくい通商政策も、新興国経済の不安定さを高めています。インドは一部輸出品に対し追加で25%の関税を課され、多くの製品では合計50%に達しています。ブラジルの主要輸出品にも50%の関税がかかり、南アフリカも最大30%の関税に直面しています。
こうした高関税は、当該国の輸出企業や雇用に直接打撃を与えるだけでなく、外交関係を緊張させ、新興国全体の成長と金融の安定を損なうリスクをはらんでいます。とりわけ、国際市場へのアクセスに依存してきた国ほど、影響は大きくなりやすいといえます。
「安定のアンカー」としてのBRICS拡大
このような状況のなかで、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカから成るBRICSは、拡大を通じて新たな役割を担おうとしています。BRICSにはすでにエジプト、エチオピア、インドネシア、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)などが新たに加わり、アジア、アフリカ、中南米を横断する大規模なネットワークへと広がりつつあります。
拡大後のBRICSは、世界の国内総生産(GDP)の4割超、世界人口のおよそ半分を占めるとされます。その地理的・経済的な広がりを背景に、包摂性(インクルージョン)、相互利益、公平な代表性といった価値を重視する国際協力のモデルを打ち出そうとしています。
グローバル・サウスの「新しい道」
グローバル・サウスの多くの国々は今、二つの選択肢の間で揺れています。外部への依存や不均衡なルールに支えられた従来の体制にとどまるのか。それとも、自国の発展の願いや優先課題に合わせた、新しい発展パスを自らの手で切り開くのかという岐路です。
拡大するBRICSは、後者の道を模索するための一つのプラットフォームとして位置づけられます。例えば、
- より公平で予測可能な貿易ルールの追求
- インフラ整備などの開発資金への新たなアクセス
- 気候変動や公衆衛生などの課題を、自国の視点と優先順位に沿って議論する場の確保
といったテーマで、従来の枠組みとは異なるアプローチを取りうるためです。分断が進む国際秩序の中で、BRICSは「安定のアンカー」として、グローバル・サウスの声を集約しようとする動きだと見ることができます。
日本からこの動きをどう見るか
日本に暮らす私たちにとっても、BRICS拡大と国際秩序の変化は決して無関係ではありません。貿易、エネルギー、気候変動、保健といった分野で、ルールづくりの場やキープレーヤーが多極化していけば、企業のサプライチェーンや投資先、外交の選択肢にも影響が及びます。
世界の中心が一つの大国から複数のプレーヤーへと広がる中で、日本はどのように関わり、どのような形でグローバル・サウスと協力していくのか。BRICSをめぐる動きは、そうした問いを私たちに静かに投げかけています。
Reference(s):
BRICS rises as 'anchor of stability' in a fragmenting world order
cgtn.com








