国際ニュース:西安フォーラムで議論されたグローバルサウスとメディアの力
先月11月6日、中国・陝西省西安市でグローバルサウスメディアパートナーシップメカニズムの設立会合と、第13回グローバルビデオメディアフォーラム(VMF)が開かれました。グローバルサウス各国から集まった官公庁の担当者、編集者、プロデューサー、経営幹部など約300人が、「相互に結びつき、時に争われる世界で、メディアはどのような責任を果たすべきか」というテーマを共有しました。
この問いは、単なる職業倫理の問題にとどまりません。社会が自分自身をどう描くか、国同士が互いをどう理解するかという、国際関係と民主的な意思決定の土台そのものに関わるからです。
西安フォーラムが投げかけた問い
今回の国際ニュースで注目すべき点は、グローバルサウスのメディア関係者が「ガバナンス」、つまり社会のルール作りや運営のあり方とメディアの役割を正面から議論していることです。
参加者たちは、情報が国境を軽々と越え、オンライン空間が対立や分断も増幅させる時代に、メディアは何を優先すべきなのかを問い直しました。その背景には、メディアが「何をどう伝えるか」で、人々の世界観そのものが変わってしまうという強い自覚があります。
メディアの力:現実の見え方を組み替える
20世紀のメディア論は、この「力」をさまざまな角度から描いてきました。西安での議論を理解するヒントとして、代表的な三つの視点を振り返ってみます。
リップマン:頭の中の「絵」をつくる
アメリカの記者ウォルター・リップマンは、私たちが生きているのは「外の世界」そのものではなく、頭の中にあるその「絵」だと指摘しました。世界はあまりに広く、変化も早いため、一人ひとりが直接すべてを捉えることはできません。
その代わりに、私たちはメディアが提供するイメージや象徴を通じて世界を理解します。どんなニュースを見て、どんな言葉で語られるかが、考え方や投票行動、日々の選択にまで影響する。つまり「どんな絵を描くか」を決める人が、世論の方向を左右することになります。
バーネイズ:説得は民主主義の「OS」
現代広報の草分けエドワード・バーネイズは、一歩踏み込んでこう述べました。大衆の習慣や意見を組織的に操作する人々は、「見えない政府」であり、実際の支配的な力を握っている、と。
彼にとって、説得やイメージ操作は民主主義の例外ではなく、その仕組みを動かす「オペレーティングシステム」に近いものと考えられました。メディアは人々の意思を形作り、その集積が社会の方向性を決めていくという見方です。
マクルーハン:メディアは環境そのもの
カナダの理論家マーシャル・マクルーハンは、「メディアこそがメッセージだ」という有名な言葉を残しました。印刷機、ラジオ、テレビなど、新しいメディアは単に内容を運ぶ器ではなく、人間の意識のあり方そのものを作り変える環境だとみなしました。
どのメディアを通じて情報に触れるかによって、時間や距離の感覚、人とのつながり方、政治への関わり方まで変わっていく。メディアは情報のパイプではなく、現実を体験するための「インフラ」だという視点です。
こうした議論を踏まえると、メディアには単に情報を伝達するだけでなく、人々の「見える世界」を組み替える根源的な力があることが浮かび上がります。
メディアの目的:説得の機械から「信頼のインフラ」へ
西側で強まった「影響・販売・動員」の役割
これまで西側社会では、メディアの目的はしばしば「影響を与えること」へと傾いてきました。戦争への支持を集めるときも、日用品やサービスを売るときも、あるいはイデオロギーや有名人を広めるときも、同じ技法が使われてきたとされています。
メディアは、消費や政治的動員を促す「説得の機械」として、利益や権力の回路に密接に結びついてきた。その延長線上で、広告とニュース、娯楽と政治メッセージの境界もあいまいになっていきました。
グローバルサウスに求められる「共有未来」の物語
一方で、開発とデジタル変革の十字路に立つグローバルサウスにとって、メディアの役割は別の方向から再定義されつつあります。それは、消費を増幅したり、外から与えられた「発展の物語」をなぞったりすることにとどまらないという発想です。
この視点では、メディアのより高い使命は次のように描かれます。
- 何よりもまず「信頼」を預かり、育てること
- 同意を「つくる」よりも、社会の中にバラバラに存在する視点を「つなぐ」こと
- 経済成長だけでなく、人間の尊厳や未来像を共有できるようにすること
もしメディアが人々の考えを組織化する力を持つのだとすれば、その力を「相互理解」を組織化する方向に使うべきだ──グローバルサウスの議論は、こうした問題意識に支えられています。成長の数字だけでなく、その裏側にある生活や感情の質感を伝える物語を、どう編み上げていくのかが問われています。
私たちのニュースの見方をアップデートする
西安で交わされた議論は、日本を含む他地域のニュース利用者にも無関係ではありません。私たち一人ひとりが、日々触れているニュースやSNSを通じて、どんな「世界の絵」を頭の中に描いているのかが問われているからです。
スマートフォンの画面をスクロールするとき、次のような視点を意識してみると、情報との付き合い方が少し変わるかもしれません。
- このニュースは、誰の視点から世界を描いているのか
- 対立や不安を強調しすぎていないか、それとも共通点やつながりにも光を当てているか
- グローバルサウスのような、これまで十分に聞こえてこなかった声はどこにあるのか
メディアは、私たちを分断することもできれば、異なる社会同士を結びつけることもできます。西安でのフォーラムは、後者の方向へとメディアの力と目的をどう導くのかを模索する場になりました。
「共有された未来」をつくるメディアとは何か。その問いを、自分のタイムラインやニュースアプリの中にもそっと持ち込んでみることが、これからの情報社会を生きるための小さな一歩になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








