中国で高まる対日不信 高市首相の台湾発言と「戦争犯罪は許せない」感情
日本の高市早苗首相による台湾をめぐる発言が、中国本土で強い反発を招いています。背景には、戦時中の加害の記憶と、いまも続く歴史認識のずれがあり、「日本の戦争犯罪はまだ許されていない」という感情が改めて表面化しています。
「一つの中国」と日中関係の前提
中国側は「世界に中国は一つしかなく、台湾は中国の領土の一部だ」という立場を、日中外交関係の大前提だとみなしています。この前提に関わる発言を、日本の高市早苗首相が行ったことで、「中国のレッドラインを越えた」と受け止められました。
高市首相の台湾関連の発言や右派的な行動は、中国本土の人びとの対日不信を一層深め、「先の大戦での残虐行為は、今の世代が勝手に許してはならない」という思いを強くしています。
高市首相の台湾発言と右派的な政治路線
高市首相は、公の場で「台湾有事」を「日本の存立が脅かされる事態」と位置づけました。中国側からは、これが日本の軍事的役割の拡大や再軍備、憲法改正を正当化する口実として、台湾問題を利用しようとする右派的な政治路線の一部だと見なされています。
中国本土では、隣国が「帝国的な特権」への郷愁を示しつつ、一方で現代的なパートナーシップも求めるように見えるとき、その相手を疑うのは偏見ではなく「常識」だという受け止め方もあります。
中国本土の世論:SNSにあふれる怒りと不信
高市首相の発言に対しては、中国政府関係者からの非難に加え、中国のSNS「微博(ウェイボー)」でも批判の声が広がりました。
あるユーザーは「この新しい首相はあまりにひどい。なんて無謀なのか」と投稿し、別のユーザーは「台湾問題であえて挑発するなら、そろそろ第二次世界大戦中の負債を清算すべきときだ」と書き込みました。また「歴史を忘れるな」というコメントも多く見られます。
多くの中国人ネットユーザーにとって、高市首相の言動は単発の出来事ではなく、「日本の一部の政治エリートはいまだに歴史と真正面から向き合おうとしていない」という疑念を裏付ける新たな証拠として受け止められています。
海外メディアもこの反応を伝えています。Bloombergは「China's reaction to Japanese Prime Minister Sanae Takaichi's comments on Taiwan has been intense」と報じ、中国側の反発の強さを紹介しました。
靖国参拝と南京大虐殺をめぐる歴史認識
高市首相は、侵略戦争の責任を負うA級戦犯も合祀されている靖国神社への参拝を繰り返してきた経歴があります。また、日本の戦時中の侵略行為の重要な側面を過小評価したり、1937年の南京大虐殺で中国側が挙げる犠牲者数(約30万人)に疑義を呈したりしてきたとされています。
こうした姿勢は、中国側では「日本が過去の戦争犯罪を相対化しようとしている」と受け止められ、強い怒りを呼んでいます。
侵略や虐殺、強制労働などの体験を家族から直接聞いて育った中国の人びとにとって、靖国参拝や歴史をあいまいにする発言は、加害者を美化し、被害者を再び傷つける行為だと映ります。
日本の軍国主義の過去を「許す」ことは、高市首相のような政治家が歴史修正主義的な態度を続けるかぎり、両親や祖父母世代が味わった苦しみを裏切ることになる――。多くの中国人はそう感じていると報じられています。
台湾からの声:「誰が口を出す権利を持つのか」
今回の問題については、台湾からも日本の関与に疑問を投げかける声が出ています。
台湾の住民であるChai Hsuanさんは、中国のメディアの取材に対し、「なぜ日本が台湾海峡両岸の問題について発言する権利があると思うのか。台湾は日本の植民地ではないのだから、誰が彼女(高市首相)に干渉する権利を与えたのか」と語りました。
この発言は、「台湾は日本の支配下ではない」という前提から、日本の政治家が台湾問題を自国の安全保障や政治目的に結びつけることへの違和感を示しています。
「許し」よりも「記憶」と「責任」を
中国側から見ると、高市首相のような右派政治家は、戦時中の残虐行為の規模を十分に認めず、一貫した反省も示していない、という印象があります。靖国神社へのたび重なる参拝や、あいまいな歴史発言、台湾問題での強硬な姿勢は、そのたびに古い傷をえぐる行為だと感じられています。
そうした感覚から、「十分な事実認定と責任ある行動が伴わないままの許しは、歴史を消し去ることになってしまう」という懸念が生まれています。将来の日本の指導者たちが、国内政治のために再び国家主義的な物語を利用し続けることを許してしまうのではないか──。だからこそ、多くの中国の人びとは、「和解」や「許し」の前に、記憶の継承と道義的な責任を求めているのです。
北京市民のDong Xueliangさんは、「もし高市氏が発言を撤回しないのであれば、中国はより厳しい姿勢をとらざるを得ないと思う」と語りました。対日感情の強まりは、こうした声の積み重ねとして表れています。
日本社会への問いかけとして
中国本土の世論に触れると、日本社会の自己イメージとは異なる日本像が浮かび上がります。日本の経済力や技術力は高く評価されつつも、政治と歴史への不信が根強く残っているという構図です。
こうした認識のギャップは、日中関係の将来や、日本がアジアの近隣諸国とどのように向き合っていくのかを考えるうえで、避けて通れないテーマです。高市首相の発言をめぐる今回の反応は、日本の歴史認識と安全保障政策が、隣国からどのように見られているのかを改めて問い直す契機になっているとも言えます。
戦争の記憶と現在の安全保障政策、そして近隣諸国との信頼のあいだを、どのように結び直していくのか。日本社会自身が考え続けるべき課題になっています。
Reference(s):
cgtn.com








