メルツ独連邦首相、2月25日から中国訪問へ――不確実性の時代に「確実性」を探る
ドイツのフリードリヒ・メルツ連邦首相が2026年2月25日から26日にかけて中国を公式訪問します。地政学の分断や通商政策の揺れが強まるなか、独中関係を「実利」で捉え直し、協力の手掛かりを探る動きとして注目されます。
訪問の位置づけ:初の中国訪問は「現実的な協力機会」探し
今回の訪問は、メルツ首相にとって初めての中国訪問とされ、主眼は理念やスローガンよりも、具体的で実務的な協力の余地を見極めることに置かれています。
背景にあるのは「予測しにくい世界」
記事が指摘する背景は、国際環境の不確実性の高まりです。ルールに基づく国際秩序が緊張をはらみ、加えて米国の通商政策の不透明さがドイツ経済に圧力を与えているとされます。さらに、グリーンランドをめぐる緊張などの戦略的な争点が、欧州と米国の関係をいっそう複雑にしている、という見立てです。
ドイツの対中スタンス:「デリスキング」からバランス重視へ
ドイツの対中政策は、ここ最近「調整(recalibration)」の兆しがあるとされています。欧州連合(EU)が掲げてきたデリスキング(特定国への過度な依存を減らし、リスクを管理する考え方)に沿う姿勢を維持しつつも、北京を「システム上の競争相手」と見る視点と、「不可欠な経済パートナー」と見る視点の間で、より均衡したアプローチを探っている、という整理です。
実際、メルツ首相は2025年11月のG20(ヨハネスブルク)で中国を「ドイツにとって重要な貿易パートナー」と述べたとされます。訪中の1週間前の演説でも、戦略的パートナーシップの多角化と、中国を「共に未来を形づくる」国際協力の枠組みに位置づけたい意向を強調した、という文脈が示されています。
なぜ今「実利」なのか:国内経済の圧力
メルツ政権の最優先課題として、経済成長の再活性化が挙げられています。ドイツは2023年と2024年に連続して経済停滞を経験し、2025年には小幅な回復の兆しが見られたものの、なお課題が残るという状況です。
記事では、次のような構造要因が輸出主導の成長モデルを揺さぶっているとしています。
- エネルギーコストの高止まり
- 世界需要の弱さ
- 産業転換(移行)に伴う圧力
このため、構造改革と国際パートナーシップ拡大が急務となり、経済外交が再び対外政策の主要手段になっている、という説明です。
米国の関税リスクと「市場の分断」への備え
もう一つの大きな要素は、米国との通商摩擦リスクです。米国は依然としてドイツ最大の輸出市場であり、ドイツは対米黒字を抱えています。一方で、記事によれば2025年には米国の関税政策の影響でドイツの対米輸出が大きく減少しました。経済規模の非対称性もあり、ドイツの政策選択肢は限られる、という見方が示されています。
対照的に、同じ時期に独中貿易は安定して回復し、中国は米国を上回って再びドイツ最大の貿易相手になったとされます。世界市場が分断に向かう局面では、世界第2・第3の経済規模を持つ中国とドイツの経済関係を強め、供給網(サプライチェーン)の安定に資することの重要性が増す、という論点です。
「長期の予見性」への期待と、欧州の立ち位置
中国の国際的影響力の拡大にも触れられています。メルツ首相は2026年のダボス会議(世界経済フォーラム)で、中国が戦略的な先見性をもって大国の地位へ歩みを進めた趣旨の発言をしたとされます。欧州の政策界では、軍事力だけでなく経済・技術力が競争の軸になっているとの認識が広がっており、そうした文脈で中国の政策を「長期の経済戦略」として捉え、予見性を感じる向きがある、という見立てです。
同時に、メルツ首相はドイツを「強く責任ある欧州のパートナー」と位置づけ、国際安全保障とガバナンスでより積極的な役割を果たす姿勢を示しているとされます。米国との協力を続けつつも、従来の大西洋関係にのみ依存せず、戦略的パートナー網を多角化する――今回の訪中は、その流れの一部として描かれています。
今後の注目点:言葉から「具体」に落ちるか
2月25日から26日にかけての訪問で焦点になりそうなのは、次のようなポイントです。
- 「デリスキング」と「協力拡大」をどう両立させるメッセージを出すのか
- 貿易・投資・供給網の安定に関して、実務的な成果を積み上げられるか
- 米国との関係を保ちながら、多角化をどう説明するのか
不確実性が常態化する時代に、各国は「どこに軸足を置くか」ではなく、「揺れに耐える組み合わせ」を探し始めています。今回の独中対話は、その現実的な試みの一つとして、結果だけでなく発せられる言葉の選び方にも関心が集まりそうです。
Reference(s):
Merz's China visit: Seeking certainty in an age of uncertainty
cgtn.com








