IOC次期会長選に7人が立候補 ギリシャで来年3月投票へ
国際オリンピック委員会(IOC)の次期会長を決める選挙に7人が立候補し、来年3月にギリシャ・コスタナヴァリノで投票が行われる予定です。五輪の「顔」が変わるタイミングは、スポーツの未来を考えるうえで重要なニュースです。
IOC次期会長選、舞台はギリシャ・コスタナヴァリノ
今回のIOC会長選は、ギリシャ南西部のリゾート地コスタナヴァリノで、来年3月18〜21日にかけて行われます。選出された新会長は、6月23日に予定される引き継ぎを経て、現職のトーマス・バッハ氏から職務を引き継ぐ見通しです。
IOC会長は、オリンピックやパラリンピックの方向性だけでなく、スポーツと社会の関わり方に大きな影響力を持ちます。今回は大陸やバックグラウンドの異なる7人が争う構図で、それぞれのビジョンの違いが注目されています。
7人の候補とそのビジョン
プリンス・フェイサル・ビン・フセイン氏(ヨルダン)――「ギャップを埋める」架け橋役
ヨルダン・オリンピック委員会の会長を務めるプリンス・フェイサル氏は、オリンピック・ムーブメントの中で生じているさまざまな「溝」を埋める存在になりたいと語っています。国家オリンピック委員会、国際競技連盟、選手、開催都市など、多様な立場の関係者を結びつける「対話型リーダー」を前面に押し出していると言えます。
ダヴィド・ラパルティアン氏(フランス)――キャッチフレーズは Sport in our Hearts
自転車競技を統括する国際自転車競技連合(UCI)の会長であるラパルティアン氏は、Sport in our Hearts(スポーツを心に)というスローガンを掲げています。スポーツの価値や情熱を中心に据え、IOCをより人々に近い組織にしていく姿勢を打ち出している形です。
ヨハン・エリアシュ氏(スウェーデン生まれの英国人)――「世界を鼓舞し、財政的にも持続可能な五輪」
国際スキー・スノーボード連盟(FIS)の会長であるエリアシュ氏は、オリンピックは世界を鼓舞し続けなければならないが、絶えず変化する環境の中で財政的にも持続可能である必要があると強調しています。華やかなショーとしての側面だけでなく、放映権料やスポンサーシップなどの収入と支出のバランスをどう保つかという、現実的な課題に正面から向き合う視点が特徴です。
フアン・アントニオ・サマランチ・ジュニア氏(スペイン)――「スポーツに奉仕し、スポーツを主役に」
元IOC会長フアン・アントニオ・サマランチ氏を父に持ち、自身も現在IOC副会長を務めるサマランチ・ジュニア氏は、私たちはスポーツに奉仕し、スポーツを利用してはならない、スポーツから生まれた資金はスポーツに還元されるべきであり、スポーツは自らの運命を自らの手に保ち続けなければならないと訴えています。政治やビジネスの思惑に振り回されない、スポーツ中心のガバナンス(統治)を打ち出していると言えます。
カースティ・コヴェントリー氏(ジンバブエ)――「スポーツの変革力を解き放つ」
ジンバブエの青年・スポーツ・芸術・レクリエーション大臣であり、かつての五輪競泳女王でもあるコヴェントリー氏は、Unleashing the Transformative Power of Sport(スポーツの変革力を解き放つ)というスローガンを掲げています。アスリート経験と行政の両方を知る立場から、スポーツを通じた教育、ジェンダー平等、社会包摂など、社会変革のツールとしての五輪を前面に押し出すアプローチが特徴です。
セバスチャン・コー氏(英国)――世界陸連トップ、「IOCの抜本改革」を公約
元五輪中長距離走のスター選手であり、現在は世界陸上競技連盟(ワールドアスレティックス)の会長を務めるコー氏は、2023年に会長3期目(最終任期)に再選され、任期は2027年までとなっています。そのうえでIOC会長に選ばれれば組織を抜本的に変革すると約束しており、どのような改革案が示されるかが大きな焦点となりそうです。
渡邊守成氏(日本)――五輪を「5大陸同時開催」という大胆構想
国際体操連盟(FIG)会長の渡邊守成氏は、オリンピック・ムーブメントに対して大胆な変革案を提案しています。その象徴的なアイデアが、五輪を5大陸すべてで同時に開催するという構想です。競技を世界各地に分散させることで、開催負担の軽減や新たな観戦スタイルの可能性を探る一方で、移動や時差、運営コストなど多くの課題も想定されます。日本からの候補という点でも、国内の関心を集めそうです。
IOC会長が変わると何が変わる?
IOC会長の交代は、単にトップの顔ぶれが入れ替わるだけではありません。大会の開催方式、収入の分配、アスリートの声の反映のさせ方、環境・人権に対する向き合い方など、五輪全体の優先順位が変わる可能性があります。
今回の7人をキーワードで並べてみると、次のような軸が見えてきます。
- 架け橋・対話(プリンス・フェイサル氏)
- スポーツの情熱と身近さ(ラパルティアン氏)
- 財政の持続可能性(エリアシュ氏)
- スポーツ中心の統治(サマランチ・ジュニア氏)
- 社会を変える力(コヴェントリー氏)
- 組織の抜本改革(コー氏)
- 分散・同時開催という新しい形(渡邊氏)
日本とアジアの視点から
日本にとっては、東京大会後のオリンピックとの向き合い方や、将来の国際大会招致、アジアのスポーツ発展にどのような方針が示されるかが関心事になります。日本出身の渡邊氏が候補に入っていることもあり、IOCの意思決定の場でアジアの声をどう位置づけるかという点にも注目が集まります。
同時に、どの候補が選ばれても、気候危機への対応や大会のコンパクト化、デジタル配信の拡大など、世界の変化に合わせた五輪のアップデートは避けられません。今回の選挙は、その方向性を形づくるスタートラインとも言えます。
来年3月の投票までに考えたいこと
来年3月のコスタナヴァリノでの投票と、その後の6月23日の引き継ぎに向けて、IOC会長選をめぐる議論は今後も続いていきます。ニュースを追いながら、次のような問いを自分なりに考えてみるのも一つの視点です。
- 自分はどんな五輪の価値を最も重視したいのか(平和、経済、環境、地域振興など)
- 五輪は今後、どの程度まで規模を縮小・分散すべきなのか
- アスリートの声や市民の意見を、IOCはどう取り入れるべきなのか
IOC会長選は、世界のスポーツのあり方を映す鏡でもあります。7人の候補が示すビジョンを手がかりに、五輪とスポーツの未来について、身近な人と話し合ってみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
Seven candidates competing for IOC Presidency in upcoming election
cgtn.com








