ツール・ド・フランス第10ステージ ベン・ヒーリーが黄色いジャージ獲得
ツール・ド・フランス第10ステージで、アイルランド代表のベン・ヒーリー選手が総合首位に立ち、象徴の黄色いリーダージャージをつかみました。山岳初日に生まれた「新ヒーロー」の走りを振り返ります。
アイルランド4人目の「黄色いジャージ」
今年のツール・ド・フランスでベン・ヒーリー選手が黄色いジャージ(総合成績首位の証し)を手にし、アイルランドに新たな自転車ロードレースのヒーローが生まれました。ツールで黄色いジャージを着用したアイルランド出身選手は、シェイ・エリオット(1963年にステージ勝利)、ショーン・ケリー(1983年第9ステージ後にリーダー)、ステファン・ロッシュ(1987年総合優勝)に続いて、ヒーリー選手が4人目です。
ヒーリー選手はイングランドで生まれましたが、父方の祖父母がアイルランド南部のコークとウォーターフォード出身で、そのルーツからアイルランド代表として走っています。「偉大な先人たちの足跡をたどるのは本当にすごいこと。アイルランドを代表して黄色いジャージを着られるのが誇らしい」と語り、その重みをかみしめています。
タフな第10ステージで何が起きたか
黄色いジャージ獲得を決定づけたのは、フランス中南部の山岳地帯マッシフ・サントラルを走る165.3キロの第10ステージでした。今年のツール・ド・フランスで最初の山岳ステージとなったこの日、ヒーリー選手は序盤から有力選手たちが残るメイン集団から抜け出した大きな逃げグループに加わり、レースを先頭でリードします。
レース終盤、ジロ・デ・イタリア優勝経験を持つサイモン・イェーツ選手が最後の上りでアタックし、ステージ優勝をさらいました。ヒーリー選手は残りの上りで粘り続けたものの、ステージ順位は3位。しかしその攻撃的な走りにより、この日だけで総合成績を大きく前進させます。
- ステージ距離:165.3キロ
- コース:マッシフ・サントラル(フランス中南部の高地地帯)
- 山岳ポイント:カテゴリー2の上りが7つ
- 第10ステージ出走前の総合成績:タデイ・ポガチャル選手から3分55秒遅れ
- 第10ステージ終了時の総合成績:ポガチャル選手に対して29秒リード
この日はフランスのナショナルデーでもあり、1日を通して先頭でレースを動かしたヒーリー選手は、その「闘志」が評価され、このステージで最も果敢に攻めた選手に贈られる賞にも選ばれました。
本人も「おとぎ話みたい」と語る快挙
レース後、ヒーリー選手は「まるでおとぎ話のようです」と振り返ります。ツール・ド・フランス開幕前には、自分がステージ優勝を挙げ、さらに黄色いジャージまで手にするなど想像もしていなかったと明かし、「ステージ勝利とリーダージャージを同じ大会で手にできるなんて、信じられないくらいです」と喜びを語りました。
ヒーリー選手は今大会で、木曜日のステージでツール・ド・フランス初勝利も挙げています。その数日後に総合首位にも立ったことで、「一人の選手の攻めの姿勢が、大会全体の流れを変えうる」ことを改めて示したと言えるでしょう。
勝負を動かした攻撃的な走りと駆け引き
第10ステージ出走時点で、ヒーリー選手は総合でポガチャル選手から3分55秒遅れていました。そこで選んだのが、大きな逃げグループに加わり、自ら主導権を握るという戦略です。7つのカテゴリー2の上りで積極的にペースを上げ、総合争いの有力選手たちにプレッシャーをかけ続けました。
終盤になると、UAEチーム・エミレーツのチームメートに支えられたポガチャル選手が追い上げに転じます。しかし、ステージフィニッシュとなったピュイ・ド・サンシー(マッシフ・サントラルの最高峰)では、ステージ優勝のイェーツ選手から4分51秒遅れでフィニッシュ。ヒーリー選手はイェーツ選手からわずか9秒差でゴールし、その差が総合首位逆転につながりました。
ツール・ド・フランスが教えてくれる「攻めること」の価値
数字だけを見ると、3分55秒のビハインドを背負っていた選手が、一つの山岳ステージで29秒リードまでひっくり返したことになります。ここには、単に脚力だけでなく、逃げに乗るタイミングや、どこでどれだけ力を使うかという判断、ライバルの出方を読む駆け引きが凝縮されています。
ツール・ド・フランスのような長丁場のレースでは、総合優勝候補ばかりが注目されがちです。しかし今回のヒーリー選手の走りは、こうした「チャレンジする側」の選手が大会をダイナミックに動かし、見る人に強い印象を残すことを改めて示しました。
私たちの日常に引き寄せれば、「安全な選択」を続けるだけではなく、ときにリスクをとって攻めてみることで、思わぬチャンスが生まれることもある――そんなことを考えさせられるステージでもありました。
Reference(s):
cgtn.com








