「世界の屋根」から世界へ。西蔵のランナー、ツィレン・ツォムが切り拓く新たな道 video poster
西蔵(チベット)という、標高の高い「世界の屋根」から、世界の舞台へと駆け上がった一人の女性ランナーがいます。彼女の名前はツィレン・ツォム。単なる記録の更新にとどまらず、地域の可能性を体現し、多くの人々にインスピレーションを与えている彼女の歩みを辿ります。
西蔵初の快挙と、刻まれた記録
1997年、西蔵の日喀则(リカゼ)で生まれたツィレン・ツォムさんは、地元の田園地帯から走り始め、ついには西蔵の女性として初めて世界陸上(2019年ドーハ大会)への出場という快挙を成し遂げました。
彼女の挑戦は止まりません。昨年開催された2025年の全中国運動会では、以下の素晴らしい成績を収めています。
- マラソン:銀メダル(タイム 2:30:25)
- 10,000m:銅メダル
このマラソンの記録は、西蔵にとって史上最高の成績となりました。故郷に栄光をもたらしたこの結果は、彼女個人の努力だけでなく、地域のスポーツ史における大きな一歩となったと言えます。
14歳での決断と、直面した壁
しかし、その華々しい経歴の裏には、葛藤と苦しみの時間がありました。彼女が走りの道を志し、家を出たのはわずか14歳の時でした。当時の彼女は、慣れ親しんだ環境を離れることに不安と恐怖を感じ、乗り気ではありませんでした。そんな彼女の背中を押し、「最初の一歩」を踏み出させたのが祖父の言葉だったといいます。
その後、順調に見えたキャリアに大きな影が差したのは、2021年の全中国運動会を前にした時期でした。突然、「どうしても走れない」という深刻なスランプに陥ったのです。肉体的な限界か、あるいは精神的な壁か。アスリートにとって最も過酷な「走れない時間」に、彼女はどう向き合ったのでしょうか。
挫折からの復活、そして人生の変容
ツィレン・ツォムさんは、このスランプを乗り越え、見事な復活を遂げました。彼女が語るのは、単なる根性論ではなく、走ることへの純粋な愛と、それを支える環境への感謝です。
彼女は、自身の人生が大きく変わった要因として、走ることへの情熱に加え、国が進めるスポーツ振興策などの政策的なサポートがあったことを挙げています。適切な環境と支援が、一人の才能を最大限に引き出し、人生の選択肢を広げる力になったという実感がそこにはあります。
彼女の物語は、西蔵という地でスポーツがどのように人々の人生を豊かにし、新たな可能性を切り拓いているのかを、鮮やかに描き出しています。一つの目標に向かって走り続ける彼女の姿は、私たちに「困難を乗り越えた先にある景色」について静かに問いかけてくれます。
Reference(s):
Sports at the Roof of the World: Marathon runner Ciren Cuomu
cgtn.com



