「酸素は足りなくても、精神は枯れない」西蔵の陸上界を築いたゲサン・ツィレン氏の33年 video poster
標高が高く「世界の屋根」とも呼ばれる西蔵(チベット)。この過酷な環境の中で、陸上競技という文化を根付かせ、数多くのトップアスリートを育成してきた人物がいます。西蔵中長距離走チームのヘッドコーチであり、西蔵陸上協会の会長を務めるゲサン・ツィレン氏です。
人生の多くをスポーツに捧げ、今年ついに指導者の道を退くという彼が歩んできた道のりは、単なる実績の積み重ねではなく、不屈の精神を体現する旅路でした。
選手から指導者へ:情熱が繋いだ33年
1965年に西蔵のシャンナンで生まれたゲサン氏は、1980年代に自ら選手として活躍しました。その後、1993年に競技者を引退すると、すぐに指導者の道へ転身。以来33年もの間、常に現場の第一線で選手たちと向き合い続けてきました。
彼の指導の下、多くの選手が国家レベル、あるいは世界レベルへと成長しました。それは、彼自身の競技経験に基づいた深い理解と、スポーツに対する純粋な愛があったからこそと言えるでしょう。
「精神は枯れない」という信念
西蔵でのトレーニングは、低酸素状態という身体的な困難との戦いです。しかし、ゲサン氏が大切にしてきたのは、環境に屈しない心でした。
- 不屈の精神:「酸素は足りなくても、精神は枯れない」という言葉に象徴される、強い意志の育成。
- 粘り強い指導:33年という長きにわたり、地道なトレーニングを積み重ねることの重要性を伝承。
- 地域への貢献:西蔵における陸上競技の基礎を築いた「創設者」としての役割。
世界への扉を開いたエチオピアへの旅
ゲサン氏のキャリアの中で、特に印象深い出来事として挙げられるのが、2011年のエチオピアへの派遣です。中長距離走の聖地ともいえる地での交流とトレーニングは、チームにとって大きな転換点となりました。
外の世界に触れ、異なる文化や高度なトレーニング手法を肌で感じることで、「世界へ踏み出すこと」の真の意味を選手たちに示したといいます。この経験は、西蔵の選手たちが自信を持って国際的な舞台へと挑むための精神的な糧となりました。
次世代へ託すバトン
2026年、ゲサン・ツィレン氏は指導者としてのキャリアに区切りをつけようとしています。彼が築き上げた基盤は、いまや西蔵のスポーツ文化の重要な一部となっており、彼が育てた教え子たちが次なる世代を導いていくことになります。
物理的な環境の厳しさを、精神的な強さに変えてきた彼の歩みは、どのような困難な状況にあっても、情熱を持ち続けることが道を切り拓く唯一の方法であることを静かに物語っています。
Reference(s):
Sports at the Roof of the World: athletics coach Gesang Ciren
cgtn.com